これは海を目指す戦い(その二)
早押し勝負に負けたと知って、グンマ県知事は悔しがる。
たぶん空耳だろうが、東の方角から大歓声が聞こえた気がした。あの方角には栃木県がある。
すぐさまパソコン画面上に、別の馬が飛び出してきた。
栃木を抜き去る。長野県だ。『2ポンディー』。
それを今度は、山梨県が抜き去った。
そのまま、『4ポンディー』、『5ポンディー』、『6ポンディー』と、一気に加速していく。『フロンティア・オークション』では、入札ボタンを連打することで、金額を積み上げるのだ。
どうする? グンマ県知事は迷った。
現在の順位は、山梨県、長野県、栃木県だ。いずれも『海なし県』。
この三県で、激しい競り合いをしている。あ、長野県が一位に躍り出た。
すでに三県は、『20ポンディー』を超えている。
片や、グンマは未だに『1ポンディー』だ。スタート地点を出たところで、足を止めている。
しかし、このまま終わるつもりはない。
グンマ県知事は画面を凝視する。
まだだ。仕掛けるタイミングを静かに待った。
ここで先頭集団の順位が入れ替わる。栃木県、長野県、山梨県の順になった。
このあと三県がほぼ同時に、『50ポンディー』に到達する。
パソコン画面に、『第一段階解禁』という赤文字が表示された。
(今だ!)
グンマ県知事はボタンを連打する。ここからは、『10ポンディー』ずつの入札が可能になるのだ。
先頭集団の後方から、一頭の馬が突き進んでくる。
もちろんグンマだ。グンマが来た!
グンマ県知事は連打の指を緩めない。さらなる加速を見せて、栃木、長野、山梨を一気に追い抜いた。
近隣のあちらこちらから大歓声が聞こえてくる。これは空耳ではない。
ついにグンマの時代が来た! ここでグンマが首位に立つ! 現在『161ポンディー』!
直後に、小さな爆発音が聞こえてくる。これも空耳ではない。
あとで知ったことだが、この時、グンマ県民からの応援FAXが殺到。それでFAXの機械が限界を超えて、爆発してしまったのだとか。
首位に立った数秒後、グンマ県知事は連打の指を止めた。
とりあえずは、これでいい。まずはグンマの存在をアピールできた。
本当の勝負は、まだまだ先だ。
グンマが止まったことで、長野県が抜き返す。さらには、栃木県、山梨県にも先行を許した。
だが、グンマ県知事は慌てない。
事前調査の結果、あの三県の予算は把握している。隠し予算でもない限り、グンマのライバルではない。
それよりも気になるのは・・・・・・。
(まだ動かないのか)
今回のオークションにおいて、グンマ最大のライバルになるであろう存在。
未だに姿を見せていない。だが、参戦してこないのは考えにくい。
おそらく、序盤は様子見をしている。
そして、内心で笑っているのだ。最後に勝つのは、自分の県だと。
長野県を先頭とする集団が、『500ポンディー』に到達する。
パソコン画面に、『第二段階解禁』という赤文字が表示された。ここからは、『100ポンディー』ずつの入札が可能になる。
次の瞬間、衝撃が駆け抜けた。
グンマ県知事は目を疑う。
未知の二頭が突然、一番前に出現したのだ。
茨城県と鹿児島県である。




