あの日
伝統とプライドの街、ニューヨーク。
ヤンキースのピンストライプに身を包んだシンプソンは、飢えた狼のように勝ち続けた。圧倒的な成績でサイ・ヤング賞を獲得し、その妥協を許さない姿勢から、チームの最高名誉である「第16代キャプテン」に任命される。
ある日の練習後、シンプソンのもとに、一人の若い投手が目を輝かせて歩み寄ってきた。弟子のコールだった。
「シンプソンさん! さっきのカーブの握り、教えてください! あなたのようになりたいんです!」
かつての自分を見ているようだった。シンプソンは少し戸惑いながらも、コールの熱意に押され、丁寧に技術を教え始めた。
コールはシンプソンを心から慕った。シンプソンが打たれた日は誰よりも悔しがり、勝った日は自分のことのように喜んだ。シンプソンが孤立しないよう、いつも隣で笑顔を見せていた。
【失って気づいた、あの日の温もり】
シーズン終盤。コールがマウンドでピンチを迎え、マウンドに駆け寄ったキャプテンのシンプソンは、必死に声をかけた。
「コール、お前なら大丈夫だ。バックを信じて、思い切り投げろ」
コールは嬉しそうに頷き、見事にピンチを切り抜けた。ベンチへ戻るコールの笑顔を見た瞬間、シンプソンの脳裏に、強烈なフラッシュバックが起こる。
「顔を上げろ、シンプソン。来年こそ、二人で絶対に世界一のリングを掴むぞ」
「おい、シンプソン。キャッチボールしようぜ」
あの時、カブレラが自分に注いでくれていた無償の愛。自分がどれほど頑固で、狂っていて、彼を傷つけていたか。コールを導く「キャプテン」という立場になって初めて、シンプソンはカブレラの本当の気持ちを理解したのだ。
(俺は、なんて馬鹿なことをしたんだ……)
その夜、ニューヨークの自宅の書斎で、シンプソンは一人、机に向かった。万年筆を持つ手が震えている。彼は、カブスのユニフォームを着て戦うかつての兄貴分へ向けて、初めての手紙を書き始めた。




