第7話 行けなかった日——恵子が代わりに言った
《役員会・第二回——欠席した日 / 決断の記録》
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今日、役員会があった。
私は行かなかった。
連絡もしなかった。
なぜ行かなかったのか——今も正確には言えない。
行けなかったのか、行かなかったのか。
どちらの言い方も、半分ずつ正しい気がする。
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〔役員会の結果(恵子からの連絡・個人控え)/ 宗一〕
| 項目 | 記録 |
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| 恵子の提案 | 「サードパス計画の一時凍結を提案する。根本的な設計見直しが必要だ」 |
| 役員の反論 | 「競争領域だ。凍結は後退だ。エレーナ・ミラーの動きを知っているか」 |
| 恵子の主張 | 「競合が先に開発しても、間違った方向なら同じ事故が起きる。正しい方向を先に見つけることに意味がある」 |
| 結果 | 凍結は否決。設計見直しの時間として調整期間3週間が認められた。 |
| 私の不在 | プロジェクトリーダーとして、私は欠席した。委任書もなかった。恵子が一人で受け取った。 |
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恵子から電話があった。
結果を、短く教えてくれた。
「3週間、もらった」と言った。
それだけだった。
「もらった」——恵子がそう言った。
恵子が、一人で行って、一人で言って、一人で受け取った。
プロジェクトリーダーは私だ。
私がいるべき場所に、私はいなかった。
なぜ行けなかったのか——言い訳は、いくつも出てくる。
どれも本当のことではない気がする。
本当のことを言うなら——
あの場所で「計画を止めるべきだ」と言う力が、もう私には残っていなかった。
それを言うために行くことが、できなかった。
* * *
恵子が言った言葉を、私は使っていた。
「競合が先に開発しても、間違った方向なら同じ事故が起きる」——
それは私が思っていたことだ。
でも今日、それを言ったのは恵子だった。
私ではなかった。
3週間は、凍結ではない。
でも——恵子が計画に「待て」を言った。
私ではなく、恵子が。
電話を切った後、少しの間動けなかった。
「そうか」しか言えなかった。
「ありがとう」を言うべきだったかもしれない。
言えなかった——言い方が、分からなかった。
* * *
私は家族を守るためにここに来た。
「成果を出せば守れる」という考え方が、間違っていた。
守ることと、閉じ込めることは——
恵子がいつかそう言いかけていた。続きは聞けなかった。
でも今日、恵子が動いた。
私が動けなかった場所で、恵子が動いた。
守ることは、そこにいることだ。
成果を出すことでも、計画を完成させることでもなく——
ただ、そこにいることだ。
今日、そこにいたのは恵子だった。




