第6話 夕奈の夢——家族に落ちた影
《七海家データ照合後 / 家族の記録》
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七海家の血脈データが、Δs値と同期している。
恵子がそのデータを私に見せた時、私は「有用なデータだ」と思った。
一秒後に、自分が何を思ったかに気づいた。
「有用なデータ」——それは、人の体の変化を、計画の材料として見た、ということだ。
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その夜、夕奈が夢の話をした。
「向こうから声が来る夢を見た」と、ぽつりと言った。
誰に言ったのかも、私に気づいていたのかも、分からなかった。
朝食の席で、晴斗の方を見ながら言っていた。
「向こうから声が来る」——
七海家のデータの「揺らぎへの同期」と、同じことではないか。
私はその考えが頭に浮かんだ瞬間、また「データ」として処理しようとした。
夕奈の夢を。
この家族の、夢を。
——処理しようとして、躊躇った。
「同期する」というのは、夕奈の性質だ。
境界が揺れると、向こうからの何かを感じ取る——それは設計の通りだ。
夕奈が「向こうから声が来る」と言うとき、
それは夢ではなく、反応だ。
私は、その反応を誘発する仕事を、続けていた。
「データ」として処理しようとした。
できなかった——今夜は、できなかった。
* * *
晴斗が、夕奈の隣に座った。
何も言わなかった。ただ、隣に座った。
私には、それができなかった。
どこに座ればいいか、分からなかった。
プロジェクトリーダーとして家族の食卓に座っていた。
父として座る場所を、失いかけていた。
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—— 記録
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> 深夜の走り書き(文字が少し乱れている)
岳人さんに「娘は大丈夫ですか」と聞かれた。
恵子が答えられなかった。
私も、答えられなかった。
答えられないということが、答えだった。
私は家族を守るためにここに来た。
だが——私の仕事が、家族を揺らしている。
その事実から、もう目を逸らせない。:::




