入学式前、寮に入って、話しかけられる ④
ネネちゃんもわたしと同じって、どういうことだろうか?
まじまじとわたしがネネちゃんを見つめると、彼女は説明をしてくれる。
「あのね、私も短い間だったけれども身体を他の人に使われてしまった時があったの」
「え、だ、大丈夫だったの?」
大丈夫だからこそ、今ネネちゃんが目の前にいるんだろうとは思うけれどついそんな声を上げてしまった。
わたしも身体を追い出されて、使われて……そのままあの子がベルラ・クイシュインになった。
ネネちゃんは――わたしと同じように身体が使われて、すぐに戻れたってことかな。パパが神の悪戯は魂が馴染むまで一年ほどの時間がかかると言っていたからその間に比較的早く戻れたのかな。
「うん。私は大丈夫だったの。数日間は、身体を使われてしまったけれど――アル兄様が気づいてくれた」
「そっかぁ。良かったね。ネネちゃん」
わたしは心から、良かったなと思う。
わたしは消えかけのところを、パパが見つけてくれた。そうじゃなかったら誰にも知られずにわたしはそのままこの世界から消えてしまっただろう。
わたしはパパとママと一緒に、ベルレナとして幸せを感じて生きている。だけどそれって結局……結果論でしかないんだ。
ネネちゃんはもしアル君に気づかれなかったら――パパのような人に見つけてもらう確率は限りなく低いだろう。わたしがパパと出会えたのは奇跡に近いことだったのだもの。
それって想像しただけで、凄く悲しい。
まだね、誰かにちゃんと認識されて、亡くなる方がいいなとは思う。だって神の悪戯にあって、追い出された魂が消えて行ったら誰も気づけないんだもん。
大切だった人に一切気づかれることなく、そのまま消滅したなんてことがこの世界では時折起きているんだろうか。
だってパパの言っていた百年に一度起こっているだろうというのは、あくまで推測でしかないだろうから。それにきっと、誰にも知られずに消えた魂は世の中にはあるのかもとも思うから。
「私はアル兄様が居てくれてよかった。でもベルちゃんは……大変だったと思うの。私もアル兄様ももうベルちゃんに会えないかもって思っていた。でもアル兄様がベルちゃんのことを見かけて、気づいたの」
「え、確かに前にアルバーノに見つめられているなとは思ったけれど……」
もしかしてその時から、わたしのことを探していてくれていた? 随分、昔のことなのに……ずっと探していてくれていたなんてびっくりだ。
「そう! アル兄様はその時にベルちゃんがベルラ様なんだって気づいてたんだよ。それなのに綺麗な魂を見て見惚れて何も確認出来なかったって言っていたのよ」
「え、そうなの?」
わたしはそう言ってアル君の方を見る。アル君はわたしと目があって、恥ずかしそうに耳を赤くした。
ちょっと可愛いかもしれない。
「……ベルの魂って、凄く綺麗なんだよ。以前の、ベルラ様として生きていた頃とはまた違うけれど、綺麗だなって追えなかった」
「ふふっ、そうなんだー」
アル君の言葉ににこにこしてしまう。わたしが笑っていたら、アル君も小さく笑った。優しい笑みだった。
「魂の色って、結構変わるんだ。変化していったりもする。実際に好ましくない変化をしている人なんて幾らでも見てきた。でも……ベルの魂は今も綺麗で良かった」
「そうなの? パパはわたしのことを燃えるような炎のような魔力に見えたって言ってたけど、そんな感じ?」
パパはそれだけしか言っていなかった。というか、パパとアル君って見え方違いそうだよね。パパは感情云々とかが見えてなさそうだったしなぁ。
そういう違いって面白いね。
「パパっていうのは一緒に居た男性?」
「うん。そうだよ。えっと……どうしようかな」
わたしはパパのことまでちゃんと説明するか悩んだ。アル君とネネちゃんに話しても問題はなさそうに思えるけれど、パパたちにちゃんと許可もらったわけじゃないしなぁ。
「えっとね、これから話すことも周りには言わないでほしいのだけど、いい?」
わたしがそう言ったらアル君とネネちゃんは頷いてくれる。
「あとはパパのこととかは、全部は言えないけれどちょっとぼかしていうね? パパたちがいってもいいよっていったらいうから」
一旦そう言う風に言っておく。だって神の悪戯とか、わたしがベルラ・クイシュインだったことはわたし自身のことだから言うか言わないか決めるのは問題ないけれど他の人のことは勝手に言うのは問題だし。
「もちろん、それで大丈夫! それにしてもベルちゃんのお父様もアル兄様と同じで何か見えるのね」
「うん。わたしはベルラ・クイシュインだった身体から放り出されて、それからしばらく魂の状態で漂っていたの。そこをね、パパが見つけてくれたんだ」
なんだかこうやって誰かにパパと出会った時のことを話すと、思い出して嬉しくなっちゃうね。
パパと出会えたからこそ、わたしの今があるから大事な思い出だなって改めて思う。




