入学式前、寮に入って、話しかけられる ①
パパとママと楽しく過ごす冬はあっという間に過ぎた。色んな準備とか、勉強とか、ニコラドさんから話を聞いたりとか――そういうことをしていたらすぐに春になった。
ドキドキしながらわたしは学園都市へと向かった。新しい学生服を身に着けていると、なんだかワクワクしていた。
この制服、可愛いよね。可愛いわたしにぴったり! わたしは嬉しくなってにこにこしている。
ちなみにだけどまだ入学式までは時間があるよ。わたしは寮へと入るから、少し前に学園にやってきたんだ。
ちゃんと書類を渡して、学生寮に入る手続きをしたよ。
学園や寮の職員さんとも挨拶をしたんだ。これから長い付き合いになりそうだから、にっこりと笑いかけたの。そしたらね、向こうも笑ってくれてよかったなって思った。
中にはあんまり笑みを浮かべない人もいたけれど、にこにこと笑いかけたら色々教えてもらえたよ。
友達、どれくらいできるかなー?
わたしは寮室を一人部屋で用意してもらっているから、ルームメイトという枠での友達は作れない。
だからお友達を作るとしたら入学式が終わってからになるかなとは思っている。
ちなみに制服を着ているのはね、色々片付けた後に学園内を探索しようって思ったから。
入学前ではあるけれどこれから学園に通う生徒ではあるので、ぶらぶらするのは問題ないって聞いているよ。
楽しみだなぁ。
寮室はね、これまでわたしが過ごしていた屋敷の部屋よりは狭いよ。でも一人で生活するにしては広いものかな? わたしは魔道具を持っているから何の問題もないけれども、他の生徒達は持ってくるものを厳選しないといけなかったり大変なんだろうなとも思った。
こういう道具を持ち合わせていることはあまり人に知られない方がいいとも聞いているから、気をつけないとね。
貴族などに目をつけられるとややこしいとも聞いているし。
ニコラドさんや学園長はわたしに何かあったら、パパとママが飛んでくるといっていた。
それはそうだろうなとは思う。
だからわたしはパパとママが駆けつけなければならない状況はなるべく回避していかないと!
使い魔についてもきちんと申請をした。
学園長が同席した上で、ちゃんと伝えたんだ。教師の人はね、わたしが学園長と知り合いなことは驚いていた。でもわたしが学園長の知り合いの子供というのを知って、納得はしていたけれど。
わたしが精霊獣と精霊の二人と契約をしていることを教師の人は驚いていた。
でもわたしが入学試験でも魔法の成績が良かったから使い魔を二人も持っていてもおかしくないかと思ってはくれていたみたい。
学園長が教師に、言いふらさないようにって口留めしてくれていたよ。
学園長はパパとママのことを恐れているからか、わたしのことを凄く気に掛けている。そんなについてこようとしたら周りから不審に思われるから、やめてって言ったらやめてくれたけれど。
パパとママって確かにわたしのことを凄く可愛がってくれていて、過保護だよ。だけれどもわたしのことを信じてくれていないわけではない。わたしならば上手くやれて、友達も沢山出来るってそう思ってくれている。
うん、だからこそわたし何も心配していないの!
入学式前だから、まだ寮にも人が沢山いるわけじゃない。何人かとは挨拶をしたよ。先輩とかにもね。この学園、中等部と高等部があるから、同じ寮に高等部の生徒もいるんだ。
わたしがにこにこ笑って挨拶をしたら、嬉しそうに返事をしてくれた。
寮で発言力も強い人みたい。やっぱりこれだけ人が集まる場所だと、力関係ってあるみたいだった。
わたしがにっこりと笑いかけてもムスッとしている人もいたよ。
わたしみたいな性格の人のことを苦手だったりするのかも。あまりしゃべるのが得意じゃないタイプだったり、初対面の人と話したくないなって人もいるもんね。
そう言う生徒達とも仲良くなれたら嬉しいのだけど、なれるかな?
頑張ってみよう! 本気で嫌がられている場合はもちろんやらないようにする。だって仲良くなりたいってあくまでわたしが思っているだけだもの。
ベルラ・クイシュインやその周りにいる人たちの噂も沢山聞いた。彼らが入学することって、学園にとっての一大事らしい。
まぁ、そうだよね。
王太子とその婚約者と、親しい者達が一気に入学することになるんだから。
あの子がどういう暮らしをしているかは知らないけれど、周りには沢山慕われているみたい。ただなんか使い魔のことで問題にはなっているっては聞いた。
あの子は使い魔と契約して戦わせるという方法を推奨しているらしい。
それはどうなんだろう? 使い魔の子って戦うことを望んでいるのかな? とは少し思ったけれど貴族なら自分で戦うよりその方がいいのかもしれないとは思ったので口には出さなかった。
それからわたしは寮室を整えてから、学園内の散歩をはじめる。地図は仲良くなった上級生の人がくれた。学園は広いから迷う人も多いらしく、生徒用の地図もあるらしい。
寮を出ると、建物方面への道が続く。その左右には綺麗な花々が咲いていて、それだけでも嬉しくなった。
今日は天気が良い。
太陽の光に照らされる中、わたしは楽しい気持ちでいっぱいだ。
庭もいくつもあるらしくて、寮から一番近い庭へと向かった。
誰も居ないことを確認してから、小さく鼻歌を口ずさむ。
そうしていたら、がさっと音がした。視線を向けてわたしは驚いた。
だって、そこには見知った顔があったから。
アルバーノだ。
わたしがベルラ・クイシュインだった頃に交流のあった男の子。そういえば前に、わたしを見て目を見開いていたっけ。
どうしようか? 挨拶してみる? でも向こうは貴族だしなと思っていたら、
「す、少しいいだろうか」
向こうから声をかけてきた。
「もちろん。あなたは先輩ですよね? わたしは今年度から入学するベルレナです」
わたしはアルバーノの名を知っているけれど、向こうは知らないしなと思いながら挨拶する。
アルバーノは、何だか変な表情をしている。どうしたんだろう?
「……俺はアルバーノ・オーカスだ」
そういってから、アルバーノ先輩はじっとわたしを見る。
「どうしたんですか? アルバーノ先輩?」
なんだかアルバーノって、昔の印象でもあまり表情を変えないイメージだった。今も改めて話してみてそんな感じはする。でもわたしの言葉を聞いて、なぜか動揺しているみたいだった。
「……おかしなことを聞くが、分からなかったら無視してくれ」
「ん? いいですよ?」
何を言っているか分からないままアルバーノをじっと見る。綺麗な顔をしているなぁ。わたし、アルバーノみたいな整った顔の人は見ているの好きなんだよね。
なんて思っていたらアルバーノは驚くべきことを口にした。
「……ベルラ様、俺のことを覚えてますか?」
――それは明確に、わたしがベルラ・クイシュインであったことを確信しているような言葉だった。




