入学の準備を少しずつ進めよう ③
学園生活でそこまで悩んでしまうような事態にならないとは思っている。けれど、分からないもん。基本的にわたしはだれかと揉め事になったりはしないように気を付けるつもり。
ごたごたした問題が起こって、ニコラドさんや学園長達に迷惑をかけたいわけでもない。だからちゃんと気を付けるの。
とはいっても周りに合わせ続けたりはわたしはしないだろうけれど。なんというか、周りに同調し続けた結果、自分を押し殺すのも違うと思うの。
「パパとママに学園生活の楽しいこと、沢山伝えたいな。伝えなきゃならないことを忘れないように、日記でも書こうかな?」
わたしは楽しいことを沢山、パパとママに伝えたいなと思っている。パパとママに話したかったことを伝えることが出来なかったら、わたし、後から落ち込むもん。
でもあれなのかな、全部パパとママに伝えようと思っても難しいかも。時間って限られているしね。
学園に入学して、わたしは少しずつ今より大人になって自立していく予定。だからどうなんだろうね。大人になるってどういう感じなんだろう? わたしはまだ未成年で、大人とはいえない年齢だからよく分からない。
わたしの知っている大人の人達は、皆余裕があって、かっこいい人達が多い。でもきっとそういう大人の人達も、悩みを抱えていたり、かっこ悪い一面もきっと持ち合わせてはいるんだろうなとは思う。
わたしはどういう大人になるだろうか? 自分でもわからないな。
「日記か。それもいいと思うぞ」
「パパは日記とか書かないの?」
「俺は興味がない」
「そっか。ねぇ、パパ。何かやりたいこととかあったら挑戦してね? それで日記以外のことでも何か始めたら教えて!」
わたしはパパと過ごす日々が当たり前になっていて、パパのことは沢山知っているつもり。きっとパパだってそう。わたしの事を沢山知ってくれている。だけどこれから先、わたしとパパの道って確かに別れていくんだよなぁ。そしてそうなったら、わたしもパパも互いに喋らなくなったりするのかな。
それは寂しいし嫌だな。
人によっては親離れしていないことを非難してきたりもするかもしれない。だけど、わたしはパパとママとはずっと仲良しな方が嬉しいなっても思っている。
「……そうだな。ベルレナが学園に向かったら何か始めてみてもいいかもしれない」
「ふふっ、その話、聞くの楽しみかも。だってパパってあまり生活を変えたりしないもんね」
わたしはそう言って微笑む。
パパもわたしが居なくなることを寂しく思ってくれているのかな。わたしが居るのが当たり前だと思ってくれているからこそ、気晴らしのためにも新しいことをはじめようって気になっているのかも。
「ねぇ、パパ。わたしがね、学園に通えるのも全てパパのおかげだからね。わたしはパパが居なかったら何も出来なかったもん。だからね、パパはわたしが自立して離れていくこととか、わたしが大人になっていくこととか考えているかもだけど、わたしはきっとずっとパパのことが大好きだよ?」
世の中には反抗期があるらしいけれど、わたしはパパにそう言う態度をするなんて考えられない。大人になってから、親と疎遠になるなんて話もよくあるらしいけれど、それもわたしは考えられないな。
それだけわたしにとってパパって大切な人だから。
パパは父親として色んな事を考えているのかもしれない。前にニコラドさんからそのことを言われただけで凄くショック受けていたし。
わたしは親になったことはないけれど、想像してみるとずっと一緒に居た子供が居なくなったらそれだけで大切なものを失ったような感覚にはなるのかも。子供かぁ……。もしわたしが子供を持つことになったら、パパとママがわたしのことを愛してくれるようにせいいっぱい愛するだろうな。
パパもママもわたしが初めての子供だから、接する際に色んなことを考えては居るんだと思う。
わたしとパパと、ママって血の繋がった家族ってわけでもないし。わたしの身体はパパの一部から作られたホムンクルスだから、そのつながりはあるけれどそのぐらい。
きっと普通の親子よりもパパもママも色んな葛藤を抱えながらわたしのことを可愛がってくれているんだから。
うん、わたしはパパとママに、ずっと大好きだよ、育ててくれて大切にしてくれてありがとうって伝えていくようにしよう。
学園で色んな人と出会うだろうし、学園の生徒達の中には親のことを良く言わない人もいるかもしれないなぁ。
「ああ。ベルレナ、帰ってくるのに遠慮はいらない。何かあればどんな時だって駆けつけるから、俺を呼べ。知らない間にベルレナが大変な目に遭って、取り返しがつかなくなったら、俺は耐えられないだろう」
パパが真剣な目をしていった。
……パパってわたしのことを大好きだよね。だから、わたしに何かあったらパパって暴走しちゃうのかな。それこそわたしを傷つけた原因にとんでもない報復をするぐらいには。
「うん」
だから絶対にわたしは例えば恥ずかしいことだったとしても、困ったことがあったらパパに報告をする。
パパがね、わたしのために行動したことで周りに悪く言われるのなんて絶対に嫌だから。
わたしは改めてそう決意した。
それから学園に入学するまでの間、わたしはパパとママにべったりだった。だって、わたしも寂しいしね。




