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5-2 ケインは詐欺被害にあうタイプだよね

宿は三部屋借りていた。

ハスエルとソフィーで一部屋、ケイン、ガット、エダフで一部屋、のこりは二人の同行者だ。

トニエは別の宿を取っているので別行動。


ベッドの上で仰向けに寝ているソフィーがハスエルに訪ねる、

「まだアイツの言ったこと気にしてるの?」


ベッドに腰掛け下を向いて考え込んでいるハスエルが、

「ええ、ガットが言ったの間違えてないもの……、私はケインやエダフさんのこと気にもとめていなかった。何でだろう、私って何がしたいんだろう」


「悩むぐらいならやっちゃいなさいよ。あなたたち人間なんてエルフからしたら一瞬で生まれて消える存在なのよ? そんな少ない時間で悩むのはバカバカしいわ」


「あなたが羨ましいわ……」


「なにを勘違いしてるの? 羨ましいのはこっちだわ。永遠に生きるってね感動なんかの感情が薄くなるのよ! 人間は濃いじゃない、短い時間で一生懸命生きて輝いて! 私たちを置いてすぐ去ってしまうのよ……」


「私たち人間が濃い? 私も?」


「そうよ、他人のためにそんなに悩んで……。あなたの好きに生きたらいいじゃない。あんな男ども巻き込んで、こき使ってやればいいのよ。アイツらも嫌ならついてこないわ、あなたが大切だから一緒にいるんでしょ! もうっ!」


「大切って……」


「あなたが食人木ヤテベオに捕まってた時、私アイツに殺されそうになったのよ、あなたを助けるためにね! いま思い出しても腹が立つわ!」


「そんなことが……」


「もう寝るわ、いつまでも考えてたらいいじゃない」、ハスエルに背を向け寝てしまう。


ハスエルはじっと動かずに悩んでいた。


―・―・―・―・―・―・―・―・―・―


男三人の部屋。


ハスエルと同じく、ベッドに腰掛け下を向き考え込むケイン。

「エダフさん、俺はどうすればいいんでしょう」


「何をですか?」


「何ってハスエルのことですよー」


「聞きたいのは『どうすれば』の方ですよ。何を悩む必要があるのかと思いましてね。――では確認のために質問しましょう、あなたはハスエルが行きたいと言えばどうしますか」


「どうって……そりゃ止めますよ、当然じゃないですか」


「なぜ止めるのですか彼女は行きたいのですよ?」


「それは危険だからです。見たこともない魔物と戦うんですよ、もしかしたら死ぬかもしれない」


「なるほどハスエルを失うのが嫌なのですね。それはハスエルの身を案じてですか、それとも自分の欲望のためですか?」


「え? ――それって同じことじゃ? あれ違うのか?」、首をかしげるケイン。


「トラスダン村の皆さんは私たちをここへ送り出しました。身を案じてない人がいたと思いますか」


「それは無いです」、真剣な顔だ。


「そう、村の皆さんは私たちに自分の行く末を託し送り出したのです、身を案じながらね。きっと今も心配しているでしょう。ケインはハスエルを送り出すことはできませんか?」


「それは……」、また下を向いてしまう。


「ガットの指摘したとおり彼女は世界を救う気なのでしょう。本人もまだ気づいていないかもしれませんがね。彼女の中にある唯一の願望、困っている人を助けたいという思い。あなたはその思いを止めますか助けますか?」


「…………」


「一晩ゆっくり考えてください」


―・―・―・―・―・―・―・―・―・―


昨夜と同じメンバーが酒場で朝食を済ませ、そこにルーベルガが加わり今後の話をすることになった。


「それでは皆さん、昨夜の返事を聞かせて下さい」、エダフが話を切り出した。


「返事? 何のことだ?」

事情を知らないルーベルガが質問をしたのでエダフが昨夜の経緯を説明する。

「なるほどな……、お嬢ちゃんありがとう。来てくれると心強い!」


「さてハスエル、どうしますか?」


「昨夜ガットが言ったとおり他の人を巻き込むのは間違いだと思うの……、なので私は一人で行きます」


「そうですか……。ガットはどうですか?」


「俺はハスエルに同行する」


「ガット! 昨夜はハスエルを止めるために釘をさしてくれたんじゃないのか?」、

当てが外れたケインが慌てる。きっとガットが止めてくれると期待していたのだ。


「いや俺は彼女がどのくらい本気なのか知りたかった。屍を踏み越えてでも信念を貫き通したいのかどうか。一人で行くと言うなら、まだ俺らを犠牲にしてでも成し遂げる覚悟がないんだろう。そんな甘い考えだと早死にする、だから守るさ」


「ガット……」、嬉しいのか悲しいのか、その中間の表情でガットを見るハスエル。


「ソフィーはどうですか?」


「私はどっちでもいいわよ危なくなったら逃げるし。命をかけようとは思ってないけどね。まぁーついて行くわ」


「トニエはどうですか?」


「わ、私は彼について行きます、それに巨鰐タラスクが見たいし」


「なるほど。――ケイン、君はどうしますか?」


「俺は――」


「そんなの行くに決まってるよな! にいちゃんの【先読み】があれば怖い者なしだ! 期待してるぜ、ガッハッハッハ」


「いや、俺は……」


「え? 何? こんな小さな子が行くって言ってるのに、にいちゃん行かないの? 男見せないの? ダメだ、それはダメだよにいちゃん。男が命はるのはこんな時さ、ぱっと散ろうや!」


「散ったらダメでしょ」、半泣きのケイン。


「なら散らないように助けてくれ。青ズボンと長靴の奴もにいちゃんには感謝していた、だろ?」


「感謝、俺が感謝されてる?」


「そうだ! 頼りにしてるし、助けられたことに感謝している。にいちゃんにしかできないことだ」


「俺にだけ……、わかった俺もついていく」


「そうこなきゃな! よろしくにいちゃん」


「エダフさん俺ら二人は村へ帰らせてもらうよ。村長にもこの話を伝えないといけないし」

村から同行してきた二人は帰ることとなる。


「そうですね、連絡お願いします」


「みんな、私のわがままにつきあわせてゴメンね……」


「俺は強い敵と戦いたいだけだ。――ところでエダフさん、巨鰐タラスクの居場所は判明しているのか?」

既に次の話を始めるガットだ。


「帰るつもりでしたので聞いていませんね。私たちも討伐に参加する件を話してきますので、ついでに確認しましょう」

そう言うとエダフは町長の所へ行くのだった。


―・―・―・―・―・―・―・―・―・―


エダフは小一時間程で戻ってきた。

酒場で待っていた一同が彼の話に耳を傾ける。


「町長に話しを通してきました。私たちの参加については喜んでいました。巨鰐タラスクの居場所ですが今のところ誰も知らないそうです」


「当てもなく探して、その隙に豚人オークがこの町へ連れてきたら最悪だな」

腕を組みながら考えるルーベルガ。


「場所は豚人オークが知っているか……。エダフさん俺が行って聞いてきますよ」

ガットが伝令役を立候補する。


「危険じゃ無いですか? それに豚人オークがどこに行ったかも」


「町の人なら豚人オークの住処は知っているだろうし、あれだけの数が移動したんだ道に痕跡が残っているからそれを追うよ」


「わかりました。町長へ聞いてきましょう」


「それと、馬を用意して貰うようお願いできないかな。追いつくためには速度がいる」


「そうですね馬と旅支度一式、揃えて貰いましょう」


エダフが再び町長に話をつけに行く。


「なあにいちゃん、その役目は傭兵団がやってもいいんだが?」


「そうだな……、いや俺が行くよ。町長へ話を付けると豚人オークに約束したのが俺だ、責任がある」


「そうか、わかった。もし人手がいるなら言ってくれ、手配する」


「私も行くわ!」、元気に手を上げる笑顔のソフィー。


「ダメだ、エルフは豚人オークと仲が悪いんだろ火種を連れて行けるか。それとも戦争がしたいのか?」


「そんなわけあるかー。……いいわよもう」、ほっぺを膨らませそっぽを向く。


「私はついて行きますよ」、トニエが落ち着いた声で主張する。


「いったい何だ? ここの女連中は、そんなに危険に飢えているのか?」

あきれた顔でルーベルガが女性たちの顔を一通り見渡す。


「そうなんだよ……、何か言ってくれないか」


「よう、お嬢ちゃん、どうしてついて行きたいんだ?」


「だって、馬に二人乗りですよ! お姫様だっこで乗せてもらって、後ろから抱きついて、草原を二人で笑いながら走るんですよ! 女の子の夢です!」


「……にいちゃん、俺はこのお嬢ちゃんが苦手だ。何も言ってやれんわーすまん」


「ハァー。トニエ、大人しく留守番しててくれないか」


「私を守ってくれ――」


慌てて遮るガット、これ以上話を膨らませるとやぶ蛇だと思い、

「あーわかった、わかりました。連れてけばいいんだろ。どうなっても知らないぞ」、と折れた。


「はい!」、晴れやかな笑顔で返事をするトニエ。

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