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網膜の地獄

それは、まるで右目の眼窩に直接ガソリンを一リットル流し込まれて火をつけられた直後、自らの熱でドロドロに溶け落ちる寸前の超高温の針を百本同時に突き刺されたかのような、凄絶な激痛だった。

「いやああああっ! 痛い! 痛い痛い痛い!!!」

私は悲鳴を上げながら激しく転倒し、両手で右目を固く覆い隠した。この局所的な地獄に、これ以上何者かが介入してくるのを本能的に恐れたのだ。私は叫び続けた。処理が終了した後も、痛みの余韻に引き裂かれながら、狂ったようにのたうち回った。

すべては一瞬の出来事だったはずなのに、私の意識の中では、右目が永遠に燃え盛っているかのように感じられた。

どれほどの時間、私が青々とした草の上で、汗まみれになって胎児のように丸まり、苦痛に身を悶えさせていたのかは分からない。激しい呼吸のせいで、汗で張り付いたパーカーが私の細いウエストのラインと、大きく波打つ胸の輪郭を露骨に浮き彫りにしていた。だが、今の私にそんな羞恥心を気にする余裕など微塵もなかった。少なくとも十分以上は、その地獄のような痛みの残滓に耐え続けていたはずだ。

ようやく痛みが引き、恐る恐る右目を開けたとき、一瞬、本当に失明してしまったのかと思った。

何度も涙を拭い、瞬きを繰り返す。すると、視界がまるで別の次元へと変貌を遂げていることに気づいた。

視界の左上には、目的地までの残り距離を示すメーターが表示されていた。私が目指すべきは、まさにその「五・一キロメートル」先だ。

視界の左下には、私の頭が北に対して現在何度傾いているかを示す、正確なデジタルコンパスが表示されている。

そして視界の右上には、何か「ボタン」のようなアイコンが浮かんでいた。だが、そこに書かれている文字は、私の知らない未知の言語だった。おそらくこれが、今後解放することになる現地の言語なのだろう。

「……ハァ、ハァ……。で、この機能の代償として、私のポイントはいくら引かれたわけ?」

私は激しい息を整えながら、未だに現実感を失ったままの声を絞り出した。

【消費ポイントはゼロです。通常のプロセスであれば、当処理には十五の『技術ポイント(TP)』が必要となります。しかし、管理者リリアンナ・デ・シルヴィエッタの慈悲により、『肉体的苦痛を三十倍に引き上げる』ことと引き換えに、コストがゼロに減免されました。なお、本来この手続きは完全に無痛で行われるものです。システムより、謹んでお詫び申し上げます】

その報告が脳内に流れた瞬間、私の中で、何かが完全にブチ切れる音がした。

「……あの、クソ白髪アマ……ッ!!!」

私の顔に、怒りと憎悪に満ちた、恐ろしくも美しい歪んだ笑みが浮かぶ。

次にあの女の顔を見たら、絶対にただじゃおかない。まずはあの見事な白髪を一本残らず毟り取ってハゲ頭にしてやる。いや、ハゲ頭にするだけじゃ生ぬるい。私の右目に起きたことと全く同じように、彼女の両目にガソリンを注ぎ込んで、燃え盛る灼熱の針をこれでもかと突き刺してやるわ! 両目同時にね!!

激痛の名残に身体を震わせながら、私はありとあらゆる呪詛の言葉を吐き散らした。こんな性急で愚かな決定を下し、自分の身体を危険に晒した自分自身への嫌悪も含めて、すべてを呪った。

最初から、契約の裏にあるニュアンスを徹底的に確認しておくべきだったのだ。もし手足を切断されたり、もう片方の目まで奪われていたらどうするつもりだったのか。あまりにも不平等で、理不尽な等価交換だ。

しかし、胸の内で吹き荒れる自己嫌悪の嵐をどうにか鎮めようとするたび、私の思考は結局、ただ一つの冷酷な結論へと収束していった。

あの悪趣味な駄女神は、本気で私の死を望んでいる。それも、できる限り惨めで、苦痛に満ちた死を。

その絶対的な前提を、そのまま素直に受け入れるのは癪だった。だが、感情に任せて極論に逃げるのだけは東大生のプライドが許さない。選択肢は二つだけではないはずだ。もっと多くの、無数のルートがあるはずだ。悪いのは私か彼女か、などという単純な二元論で終わらせてたまるものか。

しかし、どれほど理性を保とうとしても、内なる怒りと恐怖が私の思考を激しく阻害した。何度も、何度も、何度も。

同じ思考が頭の中をぐるぐると駆け巡り、まるで自分の脳組織に、目に見えない細い拒絶の糸を幾重にも巻き付けられていくかのような、底知れない恐怖が私を支配していった。

――だが、この時の私はまだ知る由もなかった。私の網膜に強制インストールされたあの「未知のボタン」が、次の瞬間、この静寂の平原にさらなる混沌を呼び寄せることになるなどとは。

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