提示された『選択』
誰かが私を監視している。……なるほどね。
「出てきなさい。見つけてるわよ」
大声を張り上げると、数秒間だけ静寂の中に鈍いこだまが響いた。……気がしただけかもしれないけれど。
私のあがきに対する自然の比喩的な嘲笑を除けば……返事は何もなかった。
夏の灼熱が、熱せられた地面と私の頭の中で混ざり合い、文字通りキーンと鳴り響いているようだった。
教会の鐘の音、あるいは夜のホタルの明滅と昼のセミの羽音が混ざり合ったような響き。
その中間……けれど「中立」ではないナニカ。
呼びかけた後で、あえて存在を無視するフリなんてできたかしら?
私自身、そんな嘘を信じられたかしら?
もし私が誰かを尾行していて、そんなことが起きたとしたら?
絶対に騙されないわね。一生騙されない。
自分でも聞こえないくらい小さな声で、その滑稽さを嘲笑っていたはずよ。……まあ、実際には笑い声なんて出さないでしょうけれど。
私は立ち上がろうとした。まずは膝をつく。
ズボン越しに小石が皮膚へ突き刺さる。
……おかしいわね。最後に穿いたのはショートパンツだったはずなのに。
それから、誰かにプロポーズでもするかのように片膝を立てた。
けれど、そこから体を起こすことができなかった。
できなかったんじゃないわ。……立ち上がりたくなかったの。
「——メニュー」
投げやりに呟く。
目の前にパネルを呼び出し、手慣れた操作で元の画面へと戻る。
『19』という数字は、まるで自由を求めて暴れているかのように明滅を続けていた。
私だって自由になりたいわ。けれど、私たちが求める「自由」の形は、お互いに似ても似つかないもののはずよ。
今の私の理性が、この数字を恐れることはなかった。
理性が「私自身」なのかどうかは、ただの反語に過ぎないけれど。
感情というものが無機質な仮面の鎖をちぎって暴れ出しそうな感覚に、私の体は震えていた。……理性には指一本触れさせずにね。
もしかして感情というのは、心臓の領分なのかしら?
だとしたら、同じ人間の同じ状況における劇的な思考のブレも説明がつくわ。
開く。一回のタップ。
終わりもなく、これから先も果てることのない無限にも似た一歩。
【デイリークエスト:『ロジスティクス』】
・内容:ルカの家からルカの店舗への食料輸送を、より快適かつ効率的なものに改善せよ。
・制限時間:1日
・報酬:3知性ポイント(IP)+ ランダムな特殊知性スキル
・備考:受注から達成までの時間が短いほど、より優秀な特殊スキルが授与される。
【1時間クエスト:『コンタクト』】
・内容:プレイヤーを含む2つの対象間の正確な距離を測定せよ。許容誤差5%以内。単位は「間」とする(1間 ≒ 1.81m)。
・制限時間:1時間
・報酬:1知性ポイント(IP)
・備考:なし
【1時間クエスト:『言語学』】
・内容:日本語からシュメール語への簡易単語帳(1ページ分)を作成せよ。
・制限時間:1時間
・報酬:1知性ポイント(IP)
・備考:単語帳には「こんにちは」「元気?」「はい」「いいえ」「大丈夫」「じゃあね」などの基本フレーズを含めること。
……他16件のクエストを表示……
画面には最初の3つだけが表示され、残りを展開するかどうかの選択肢が用意されていた。
……選択。
最後までお読みいただきありがとうございます!
もし少しでも「クスッとした」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ページ下部から【★評価】や【ブックマーク登録】をポチッと押していただけると嬉しいです!
皆様の星(★)とブクマが、作者の燃え尽きを防止する最大のエリクサー(生きる糧)になります……!(切実)
それでは、また次回の更新でお会いしましょう♪




