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有料サブスク制の機能制限

「——システム」

聞き慣れた機械的な声を期待しながら呟いてみたけれど、何も起こらない。

「システム……」

もう一度繰り返してみる。

返ってきたのは、やっぱり沈黙だけ。

昨日までは、一度でちゃんと応答してくれていたのに。

……何かしら、不機嫌にでもなったの?

でも、ロボットが不機嫌になるわけないじゃない。私の頭の中にいるただのBotなんだから。

そこでハッと気づいた。

……あ、マルチプレイのチュートリアル期間が終わったんだわ!

なんだ、怒ってたわけじゃないのね。

ただ脳内アナウンスの体験版(お試し期間)が終了しただけ。

あのクソ女神のことだもの、きっと有料サブスク制でも導入したのよ。

声を取り戻したければ金を払え、ってね。

冗談じゃないわ。声のナビなんてなくても、一人で十分やっていけるわよ。

メニュー画面を開くことくらい、禁止されてないでしょう?

誰にも見られないよう、あらかじめ角を曲がってから呟く。

「——メニュー」

よし、動いた!

目の前に見慣れたウィンドウが立ち上がる。

ただし、基本プロフィールの下にいくつか新しいボタンが追加されていた。

今まではアシスタント経由でツリーを開いていたけれど、これなら一人でも操作できそうね。地味に嬉しいわ。

追加されたボタン以外は、特に変わった様子はない。

名前も、ステータスも、レベルもそのままで、『神の軽蔑』という注記もしっかり残っている。

私は迷わず『ツリーシステム』のボタンを押した。

すると、これまで透明感のあるシアンブルーだった画面が一気に巨大化し、漆黒に染まりながら実体を持った立体感のあるフォームへと変貌した。

その武骨な画面には、見慣れた、けれどテキストとアイコンが一新された3つのタブが並んでいた。

一番上のボタンには『知性系統』と書かれており、隣にはミニマルな脳のイラストが添えられている。テキストもアイコン類も青みがかったシアン色だ。

そのすぐ下、画面の中央には血のように赤い『筋力系統』の文字。脳の代わりに、インディーズゲームのアイコンみたいな拳のイラストが描かれている。

一番下にあったのは、杖のイラストが描かれた『スキル系統』。青と赤を混ぜ合わせたような鮮やかな紫色のカラーリングだ。

新しいUIの鑑賞を終え、私は『知性系統』の脳アイコンをタップした。

数秒のラグの後、目の前に一本の「木」が現れる。

……デザイン変更へのこだわり、凄くないかしら?

画面には、視界の外へとどこまでも枝を伸ばす大樹が描かれていた。

もっとも、今見えているのはその根本のほんの一部だけれど。

切り株と根の部分には『言語』のスキルが位置している。

そこから樹木は二股に分かれていた。

右側の枝には、他より少し明るく輝くメッセンジャーアプリのようなアイコン。

地球には存在しないデザインだから、この世界のオリジナルかしら。

……現地人がメッセンジャーなんて言葉を知っているとは思えないから、システムかあのクソ女神リリアンナが作ったものね。

アイコンの下には『繋』という漢字が一つだけ刻まれている。

私が習得を進めていたスキルだから、一番強く光っているみたい。

もう一方の枝には、もう一つのスキルが配置されていた。

モノクロの本が描かれたポップなイラスト。

ノワール風のデザインなのか、単に私が未習得だからモノクロに見えるだけなのかは分からない。

その下には『読み書き』という4つの文字が並んでいた。

最初の項目をダブルタップすると、見慣れた詳細ウィンドウがポップアップした。

システム刷新の割には、フォントが少し変わった程度で大きな変更点はない。

【カテゴリー:知性】

Ⅰ. 現在の段階:『言語』——現地の人間と会話する能力(ランク:D)

Ⅱ. 次の段階:『連絡』——UIに女神直通のメッセージ、手紙、通話機能を追加(ランク:D)

Ⅲ. 習得コスト:20知性ポイント(IP)

Ⅳ. 解放まで:残り20知性ポイント(IP)

Ⅴ. 蓄積ポイント:0知性ポイント(IP)

あの自称女神へ直通の連絡手段を解放するには、まだ20ポイントも必要だった。

以前の「10ポイント」に比べれば倍の数値だけれど、実際のところハードルはかなり低い。

見た目以上にずっと簡単なはずよ。

一番下の項目の左隅には『クエスト』のボタンがあった。

そして右隅には、このミッションの難易度に対する見方を根本から覆す数字が躍っていた。

不定期に明滅を繰り返す、孤独な『19』という数字。

この19個のクエストのうち、18個は100%の確率で1時間ごとに発生する時給制のもののはず。クリアすればそれぞれ1ポイントが手に入る。

残りの1個はデイリークエスト。

報酬は大きいはずだけれど、2ポイントの加算というのは少なすぎる気がしてならなかった。

だって、2ポイントなんて1時間ごとのクエストを2個クリアすれば、たった2時間で稼げてしまうのだから。

丸一日と120分が同じ価値だなんて、このシステムの公平性とロジックには疑問を抱かざるを得ないわね。

「……まあ、リリアンナの仕業でしょうけれどね」

溜まった二酸化炭素を吐き出し、重苦しい空気を紛らわせるために、私はひとりごちた。

要するに、この19個のクエストをすべてこなせば、元凶であるあの女神に直接文句の手紙を送りつけるという妄想が、「現実」へと変わるのだ。

あまりにも魅力的なオファーじゃない?

……さて、始めましょうか。

正直言って、この画面を開くのには少し勇気が必要だった。

膨大な時間がかかる『集中』や『パイオニア』みたいな面倒なタスクを突きつけられるかもしれないし、数分で終わる『構造解析』みたいな楽なタスクかもしれない。

けれど、膨大な選択肢を目の前に突きつけられるという事実そのものが、私を武者震いさせると同時に、酷いパラノイアへと引きずり込んでいくのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます!

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それでは、また次回の更新でお会いしましょう♪

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