不思議な話よね
どうやらそういうことらしいわね。
ここに来てからまだ間もないけれど、ルカはこのガキどもを養うために、不眠不休で働き詰めているみたいだった。
普通「スラム」なんて言葉を聞けば、傾いたあばら家や、汚いボロ切れをまとったガリガリの子供たちを想像するじゃない?
でも、このクソガキたちの格好は案外ちゃんとしているし、痩せこけているなんて口が裂けても言えない状態だった。
まあ、ここが特別なケースなだけかもしれないけれど。
このエリアの他の住人はまだ見ていないけれど、この家が周囲から浮いているのは明らかだった。
ルカは、魔王討伐の連合軍に参加した父親のおかげだと言っていたわ。
確かにそれも一部は本当かもしれないけれど、家の修理だって誰かがしなきゃいけないでしょう?
ルカは自分の功績を明らかに控えめに言っているわね。それも、相当に。
「わかったわ……ちょっと外に出てくるけれど、誰も文句はないわよね?」
もちろん反語よ。私がどこへ行こうと、誰も気にしちゃいないのだから。
「二度と戻ってこなくてもいいのよ?」
モニカが意地悪そうに冗談を言った。
顔と声のトーンを見れば、本気じゃないことくらいすぐに分かったわ。
彼女がフレンドリーに私の背中を叩いたその時、ミハエルの視線に気づいたの。
彼はモニカのことを、まるで邪魔者か、あるいはそれ以上に危険な脅威でも見るような目で見つめていた。
その顔の歪みようといったら……これが本当にミハエルの素顔なのか、ハロウィンのマスクなのか見分けがつかないほどだったわ。
……そもそも、この世界にハロウィンなんて概念があるのかしら?
とにかく、彼は凄まじい恐怖を撒き散らしていた。
全身に鳥肌が立ち、体中の激痛が一瞬吹き飛んだほどよ。
それはモニカにとっても同じだったみたい。
彼女は大股で素早く私から距離を置くと、引きつった笑いを浮かべて子供たちのところへ逃げていった。
ミハエルはなおも、視線で彼女を呪い続けている。
……私にリベンジでもしたいのかしら?
でも盤面はとっくに片付けられていたし、彼自身も異議を唱えなかったから、そんなシナリオは一瞬で消え去ったけれど。
私も重苦しい空気から逃げるように、慌ててその場を後にした。
急いで家のドアを閉め、安堵のため息をついて空を見上げる。
雲一つない青空。
玄関のすぐ外では、灼熱の夏が私を待ち受けていた。
「新鮮な空気」を吸うことなんてできず、代わりに肺を満たしたのは、泥と生臭い不潔な匂いだけ。
昨日の夜の涼しさは、どうやら永遠に失われてしまったみたい。
体感温度からして、今は夏の盛り——7月の初めから終わりといったところかしら。
不思議な話よね。
あの単調な女神の神殿に呼び出される前、あっちの世界は春満開の4月1日、水曜日だったのに。
そういえば、曜日の話で思い出したけれど。
モニカは今日が「日曜日」だと言っていたわね。
この世界は季節の巡りが違うのかしら?
それとも、時間の流れそのものが異なっているの?
ファンタジーやSFではよくある設定よね。
あっちの世界の1分や1秒が、こっちの1週間や1世紀に相当するかもしれない。
……まあ、元の世界ではせいぜい1時間から2日程度しか経っていないと信じたいところだけど。
深く息を吸い込み、眩暈を落ち着かせると、残っていた眠気が完全に吹き飛んだ。
自分が何のためにここにいるのか、すっかり忘れかけていたわ。
「勇者」——それは魔王を処刑するために私に与えられた二つ名。
ちなみにその魔王の名前は「フランシスコ・アカム」。
なんだかスペインの裏社会のボスみたいな名前ね。はぁ。
あの自称女神は、一体私をどこへ放り投げたのやら。
「——システム」
使い慣れた機械的な声を期待しながら、私は呟いた。
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