不気味なボードゲーム
テーブル、部屋、フロア、建物——ううん、周辺の建造物全てが、人類史上最大クラスの大地震でも始まったかのように激しく揺れ動いた。この世界だけでなく、私がいた元の世界の歴史を含めてもだ。震度階級で言えば間違いなく「15」クラス。振幅の大きさだって、あのヴァルディビア地震の比じゃない。日本人の私以上に、地震の恐怖に詳しい人間なんて他にいるかしら? ……まあ、もちろん反語だけど。
冗談はさておき、現実の私はといえば、遠慮というものを知らないクソガキどもに文字通り雪崩のごとくのしかかられていた。静観している者なんて、片手の指で数えられるほどしかいない。まあ、私自身を含めて目撃者がたったの9人しかいない現場で、そんな慣用句を使う意味があるのかは謎だけど。
外側から高見の見物を決め込んでいるのは、たったの3人。モニカは相変わらず床を見つめていた。……ううん、正確には床という名の完全な「虚無」を凝視していた。ゲームの展開を根底からひっくり返すほどの重大なルールの抜け穴が存在していたという事実に打ちのめされ、今にも泣き出しそうな顔をしている。彼女の膝の上には小さなステファニーが座っていたけれど、こちらも今にも泣き出しそうだった。私の敗北を望んでいたからではないけれど、決して嬉し涙などではない。その涙の本当の理由については、実の姉であるモニカすら理解できていないようで、ただ幼い妹を優しく抱きしめ、パニックを防ごうと必死だった。
それ以外では、ジャスパーが壁際に立っていた。彼もまた相当なショックを受けていたようだが、感情を隠す術に長けていただけだ。もっとも、ピッチャーから直接ガブガブと豪快に水を煽るその姿が、彼の動揺の深さを雄弁に物語っていたけれど。彼は私の前に、自分自身でミハエルに敗北していた。彼らの対局がどんな展開だったのかは知らないけれど、間違いなく私よりは長く持ったはずだ。だって、私とミハエルの試合なんて、たったの5分ちょっとで決着がついたのだから。
そういえば、タイマーのことだ。それは朝の電子目覚まし時計のように、けたたましいアラーム音を頑なに鳴らし続けていた。音量はMAXまで絞り出されており、開発者がユーザーの耳の保護なんて微塵も考慮していなかったことがよく分かる。
激しい情緒不安定と感情の乱高下を経て、私の理性はようやく一定の落ち着きを取り戻しつつあった。そして、周囲で起きている現実について冷静に考えを巡らせる余裕が生まれた。光の速さで過ぎ去ったような対局を終えた今の私の頭の中には、木くずと霧しか残っていない。このゲームでは、たしか特殊な画面が立ち上がっていたはずだ。そしてゲームの表記は全て「日本語」だった。マップ自体は現地の子供たちが不格好な漢字を落書きしたものとして無理やり納得できても、私の脳内で起きた現象だけは、どう考えても論理的な説明がつかなかった。
一見するとただのボードゲームに過ぎない代物が、なぜこれほど精密に作り込まれているのだろう? 自分が元の世界ではない異世界にいることも、ここに魔法が存在することも理解していた。誰よりもその現実を噛み締めていたはずだ。けれど、どうしても腑に落ちない。描かれたマス目とチープな駒がついたただの木の板が、どうして私の精神にここまで直接的に干渉できるの? そして頭上に浮かんでいたあの時計……あれだって、触れることのできる実体ではなかったはずだ。
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