歪んだ過去と血の絆
「だって、あなたはまだ十三歳でしょ。一般常識的な定義として、まだ大人にはなれないはずよ」
私がそう言葉を補うと、ルカは心底呆れたように鼻で笑った。
「なれないって、お前正気か? この国の成人年齢が十四歳だってこと、お前は本当に何も知らないんだな」
……あ、そっか! ここは元の世界(地球)じゃないんだ! 異世界なら成人年齢が引き下げられていても何の不思議もない。私の常識を至急アップデートする必要があるわね。
「ええと、私が言いたいのは……お父さんとお母さんはどこにいるのかなってこと」
私は少し後頭部を掻きながら、再び窓の外に視線を向けた。当然、大人の影などどこにもない。
「親父? 親父なら魔王軍との戦争に行ったよ。この国の政府も馬鹿じゃないからな、タダで人が死にに行くわけがないって理解してる。だから、最前線に行くだけで、このエリアの基準からすれば莫大な大金を支払うことにしたんだ。親父は自ら志願してそこへ行き、その金は俺たちが受け取った。お前、俺たちがどうして周囲の連中に比べてこんなに異彩を放っているのか不思議じゃなかったか? 単に、俺たちの家だけが、親父がそれなりに軍役に適した体をしていたからだよ。他の家の大人は、大昔からずっと酒に溺れて使い物にならない連中ばかりだからな」
ルカは淡々と、どこか自嘲気味に言った。だが、私は彼がどうしてそんな過酷な現実をこれほど平然と語れるのか、心底理解できなかった。
「じゃあ……お母さんは?」
私の口から、疑問がぽろりとこぼれ落ちた。
「母親、ねぇ……」
その質問に対し、ルカは一瞬だけ言葉を詰まらせた。
しまった! 口は災いのもと、なんて不躾なことを聞いてしまったんだろう!
「あ、ごめんなさい! 今のは軽率だったわ――」
私がまともに謝罪し終えるより早く、ルカの足が私の頭を綺麗に捉えた。
……神に感謝すべきかしら。今回は腹ではなく頭(もちろん手加減はされている)だったけれど、それにしてもこのクソガキ、なんて柔軟性と跳躍力をしてやがるのよ!
「何が『ごめんなさい』だ、水臭い真似しやがって。生きてるよ、ピンピンしてな……クソ忌々しいことに。あのクソババアは俺よりも長生きするさ、心配するな」
ルカが心の中で何度も十字を切っているのは一目瞭然だった。
「じゃあ、どうしてそんな言い方を?」
あまりにも複雑怪奇な彼の態度に、私は困惑を隠せなかった。
「上品に表現するなら、俺の母親は『夜の街の女』だよ。お前もきっと、街で遭遇したはずだ。あの狂った女さ。エリートの婦人みたいなフリをしてるけどな。それもそのはず、親父の報奨金の半分は、あの女の派手なドレスに消えたんだから。要するに、あの女は俺たちを捨てて自分の娼館を開き、俺たちが一ヶ月暮らせるほどの額を一日で稼ぎ出しているのさ。そして時々戻ってきては、俺に新しい弟か妹を産み落とし、また夜の街へと消えていく。……大嫌いだ」
ルカは唇をきつく噛み締めた。この話題が彼の心にどれほど深い傷を残しているかは明白だった。
しかし、私は最後に一つの違和感を確認したかった。
確かに考えてみれば、ルカとモニカはほぼ同じ紫の髪色と目の色をしていた。しかし、他の子供たちはまるで赤の他人のようだった。シズエは完全な黒髪に黄金の瞳。ジャスパーにいたっては純粋な金髪に青い目。他の子供たちも似たり寄ったりで、最初の二人の年長者を除けば、全員が同じ家に集められた「異分子」のように見えた。要するに――父親が全員違うのだ。
「じゃあ……どうしてあなたが彼らを育てているの? 血が繋がっていないも同然なのに」
その言葉を口にした瞬間、私は激しく後悔した。
これまでの人生で、十代の少年からはもちろん、いかなる人間からも受けたことのないような、冷徹で鋭い視線が私を射抜いたからだ。
「馬鹿なことを言うな、マリカ。あいつらは俺の弟と妹だ」
ルカの静かな声が、室内の空気を凍らせる。
「もし明日、あのクソ女がまた大きなお腹をしてドアを叩いたとしても、俺はその子を引き取り、自分で名前をつけ、自分の血を分けた血族として育てる。家族の絆ほど重要なものはない。たとえその身に、人生で最も忌むべき人間の血が流れていたとしてもな。俺はそれを、愛する弟たちや妹たちにも伝えようとしているんだ。……話がそれだけなら、俺は行くぞ。シズエをベッドに寝かしつけなきゃならないからな」
ルカは足早に私から離れていった。呼び止めようとしたが、喉が引きつって声が出なかった。
私は彼の気持ちが分かった。いや、痛いほど理解できてしまった。
遠ざかっていくルカの小さな背中を見つめながら、私はまるで、かつての自分自身の姿を三人称視点で見つめているかのような強烈な既視感に陥っていた。
(ごめんなさい、マリカ・キキ。……いや、違うな。ごめんなさい、ルカ)




