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泥濘の迷宮と二人の獣

三十分間もこの路地裏を彷徨い続けたが、文明の兆候すら見つけられなかった。

五十回以上も角を曲がったあたりで、私は自分が同じ場所をぐるぐると回っているのではないかと疑い始めた。そうでもなければ、ゴミと家畜の糞尿の臭いが一向に変わらない理由が説明できない。

しかし、周囲を囲む板切れの湿り気や腐敗の度合いが常に変化しているのを見るに、この悪臭は特定の場所のものではなく、このエリア全体の「共有財産」なのだろう。つまり、このスラム街はそれほどまでに恐ろしく広大だということか。なんてことだ……。

その間にも、周囲はどんどん暗くなっていった。私は日が沈む前に宿を見つけられると踏んでいたのだが、この泥と木切れの迷路を彷徨っている間に、月は太陽を容赦なく追い出し、私を牛の糞の山の陰で野宿させようとしていた。

さらに五分ほど歩き回ったところで、私は完全に時間の感覚を失った。本当に五分が経過したのかさえ確信が持てない。もしかしたら、たったの一分だったかもしれない。あるいは十分だったかも。だとしたら、私はこれまでの時間を正しくカウントできていたと、どうして言い切れるだろう?

月が私への嫌がらせでスピードを上げたのではなく、私の体内時計が狂いすぎて、三時間が三十分に感じられただけかもしれない。

「ああああああああ……!」

私は無力感から、誰かが助けに来てくれることなど期待もせず、狼のように悲痛な悲鳴(遠吠え)を上げた。

しかし、私は間違っていた。私の「遠吠え」に応えて、本当に誰かがやってきたのだ。もっとも、それを「ありがた迷惑」と呼ぶことすら生ぬるい最悪の状況だったが。

「おやおやぁ……こんなところに誰がいるかと思えば?」

角から姿を現したのは、一人の貧相な中年男だった。

いや、もしかしたらまだ二十代前半だったかもしれない。判別は困難だった。酒とタバコで焼けただれた声、強烈な悪臭、抜け落ちた前歯、不潔な衣服、後頭部のハゲ……。

それらの要素のせいで、目の前にいるのが五十五歳の酔っ払いのクズなのか、二十五歳の酔っ払いのクズなのかがさっぱり分からなかった。だから私は、元の世界でもタバコも酒も絶対にやらなかったのだ。そんな不摂生なライフスタイルを送っていたら、二十三歳の自分がどうなっていたか分かったものじゃない。

その時、角から彼と一緒にもう一人の似たような男が現れた。もっとも、極度のストレスのせいで私の目が霞んで二重に見えているだけなのかと最初は疑ったほどだ。

誤解しないでほしいが、二人の間には一応の違いがあった。二人目の仲間はどうやら片目が潰れているようだったが、その代わり、歯の数は一人目の男よりも二本半ほど多かった。よし、これで「間違い探しゲーム」は終了だ。

彼らの衣服についてはコメントする気にもなれない。あの狂ったマダムが最高レベルの美貌を兼ね備えたおとぎ話のような衣装を着ていたのに対し、この大酒飲みたちは……ただの薄汚れたTシャツにハーフパンツ。あるいは自家製の密造酒のボトル。それだけだ。ついでに、その知性の欠片もない表情も外見の一部にカウントしていいだろうか?

「おい見ろよジャグ、えらいお高くとまったお嬢様がいやがるぜ! 靴にシャツにズボンにイヤリング……おいおい、ずいぶんと上等な格好をしてやがるなぁ! ハハハハハハ!」

二人目の『猿人類の代表』が下卑た笑い声を上げ、ボトルに残っていたツバのような残りを一気に飲み干した。ということは、一人目の名前はジャグか? この世界にも随分と安直な名前があるものだ。

「おいおい、よく見ろよグジャ。こいつ、髪に妙なもんを塗りたくってやがるぞ! 人間にこんな鮮やかな栗色の髪があるわけねえだろ!」

一人目の男が余計な口を挟んだ。ということは、二人目の名前はグジャ……いや、待て。ジャグだかグジャだかガジュだか、正直どうでもいい。どちらがどちらかなんて、ゴミ溜めの肥溜めから湧き出たウジ虫を個体識別するくらい不毛でどうでもいい作業だった。名前すら覚える価値がない。

「これ、染めてるんじゃなくて地毛よ」

私の口から生意気な言葉が飛び出した。黙って殴られるのを待つ趣味はなかったので、私は立ち上がり、泥を払うこともせず、彼らの目を真っ直ぐに見据えた。

――最悪だ、こいつら、二人とも激しい斜視じゃないか! しかも二人揃って!

「あんだと、こら!?」

どちらの『ジャグだかグジャだか』分からない方の男が、私に直接詰め寄ってきた。

彼は、かつて「神々のネクタル」が入っていたであろう安物のボトルを、右側にある腐った木に叩きつけた。一発では割れず、四、五回ぶつけてようやく割ると、彼は手に残ったギザギザのガラスの破片(割れたボトル)を私に向けた。

「おい、てめえ、ここで何様のつもりで口を開いてやがる!? 答えろ、ここで何をしてやがるんだ? てめえのような金持ちのネエちゃんには知る由もねえだろうが、このエリアは俺たち『兄弟』の支配下にあるんだよ! てめえのような奴の来る場所じゃねえ。さっさとポケットの中身を全部ぶちまけて、首が繋がってるうちにずらかりやがれ!」

なんて凄まじい悪相をしてやがる……。まるで私ではなく、自分自身が死の脅威に晒されているかのような必死の形相だ。

彼らの組織の名前なんてどうでもよかったが、お世辞にもセンスがあるとは言えなかった。もっとも、この場所においてはそれが一番無害な要素だったろう。

当然、私は彼らを恐れてはいなかった。女の子の身体とはいえ、男の手を的確に蹴り上げれば、ガラスの破片なんて簡単に落とせるはずだ。しかし、それでも二対一の喧嘩に飛び込むリスクは冒したくなかった Lights。彼らは酔っ払っている。しかも相当に。

しかし、そここそが彼らの強みだった。正気でない人間の行動を予測するのは、素面の人間を相手にするよりも遥かに難しいからだ。

もう一人の「名前を覚える価値のない相棒」は、ただ熊のようなニヤケ顔を浮かげて、うんうんと頷いているだけだった。あるいは、極限の馬鹿面とでも呼ぶべきか。まあ、お分かりいただけるだろう。

「おい、もう一度言ってみろ……ここが誰の縄張りだって?」

突どうとして、私の背後から新しい、低く冷徹な声が響いた。

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