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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【19万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第二部 高難易度ダンジョン編

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98話 誘拐事件

「これで軍備を更に整えることが出来ます。三人とも、よく頑張りましたね」


 女王に礼を返して私室を後にする。

 それから数日間は深域での修行を兼ね、ハクロウも連れて向かったのだが、高難度ダンジョンでの経験もあり、マリーとセレスティアはレルゲンの指示なしで連携が取れるようにまでなっていた。


 ハクロウは二人の成長に笑みを浮かべたが、すぐにやる気に満ちた表情をする。


「少し見ない間に随分と変わったなぁ嬢ちゃんたち。俺も負けていられないね」


 新しい左腕も、マリーと二人で深域修行をしたおかげもあり、ほぼ自分の意思で動かせるようになっていた。


 帰ってからレルゲンは研究者コンビの二人に呼び出され、ぜひ実践して欲しいことがあると半ば強引に引っ張り出される。


 ――魔力糸がどうとか言っていたが、この緊急時に役に立つ道具でもできたのだろうか……?


 わからないながらも、二人の願いに応えるしかなさそうだ。

 しかし、そこで二人が頼んできたのは、魔力糸を手術にまで応用制御できるレルゲンだからこそ可能な一手だった。

 机の上には製図版が置かれ、無数の紙に図形が描かれている。


「なるほど……! 面白いな!」


 レルゲンは七段階目に対抗し得る手段を二人から得る。

 そして、また数日はマリーやセレスティア、ハクロウは深域での実戦修行。

 レルゲンは、研究者二人が提案した作戦に必要な魔力糸制御の練習に当てていると、小さな地震が王国を揺らし始めた。


 普段は全く地震のない王国なだけに、今回の小さな揺れですら民は軽くパニックになり、皆が建物の外に出てくる。


「何事だ……!?」


「お母さん、怖い……」


 老人は新聞を読むのを止め、母親は自分の子供の頭を軽く撫でた。


 地震が感じられるようになってからしばらくして、遠方にモンストルム・ファブリカの姿が確認できるほどまで接近していた。

 この分ならあと三日ほどで到着するであろう距離まで来た段階で、ドライドから武器が届いた。


 新しい白銀の剣は、以前よりも増幅鉱石の色が濃くなっており、ドライドの技術の粋が詰め込まれていることが一目でわかる代物だった。


 この剣を見たレルゲンは

 ――これなら行けるかもしれない……!

 と強く思った。


 だが、ここである事件が発生する。

 昏睡状態で未だ目を醒さないミリィが、何者かに誘拐されてしまう。

 ミリィに関しての警護は、テクトがミリィを使って何かしらの策を用意している可能性を考え、護りを厳重にしていた。

 それでも、護っていた影部隊が全て斬殺され、中にはレルゲンを初めて女王に報告した影の一員も入っていた。


 レルゲンはその凄惨な現場を見た瞬間に、一瞬怒りによる赤い魔力が噴き上がるのを我慢できなかった。

 しかし、唇を噛みながらもすぐに魔力を消し、現場を片付けていた影の一人がレルゲンに一通の手紙を渡してくる。


 手紙の内容に目を通すと、再びの怒りがレルゲンの中で渦巻いた。


「やあ、レルゲンくん。この前はどうも――出し抜かれたままでは面白くないため、君の大事な仲間の一人を預かることにしたよ。実行犯はもうわかっているはずだ。返して欲しくば私を、いや、この七段階目のモンストルム・ファブリカを打ち取ってみたまえ」


 レルゲンは、テクトに人の心が残っていないのか問い詰めたくなる。

 そして、ミリィへの警戒が薄れ始めた頃を狙って実行してきたあたり、ミリィにはやはり『何か』があることは間違いなかった。


 徐々に足音という地震が大きくなり、王国民は恐怖のあまり不安症状が続いていたが、あらかじめ避難の準備が進められたことで、少しの混乱だけで済む。


 屋上庭園からモンストルム・ファブリカが目視でわかる位置まで侵攻される。

 テクトが操作室から高らかに宣言する顔は、歪んだ笑顔で満ちていた。


「さぁ、王国諸君。どちらかが倒れるまで、存分にやり合おうじゃないか」


 空中から見ていたレルゲンは、以前のモンストルム・ファブリカには無かった変化に気づいた。


 赤く大きな石のようなものが中心に嵌め込まれ、石の中心には見知った仲間が取り込まれていた。


「ミリィ……!!」


 黒龍の剣に二段階目の全魔力解放を乗せた一撃を放つが、ほとんど効いている手応えがない。

 ミリィを取り込んでからは、外壁部分には傷すらついていない。


 この事実にはレルゲンも表情に緊張が走る。

 他に何か弱点がないか、戦いながら探していくしか方法はない。

 思考を切り替えて、白銀の剣でどう立ち回るか考えを巡らせる。


 するとテクトが得意げにレルゲンを煽り立てた。


「もうその攻撃は効かんぞ! レルゲン・シュトーゲン! 何度やっても無駄、何をやっても無駄!! 実に素晴らしい!! このまま押し潰してやってもいいが、更なる絶望を与えるとしよう」


 レルゲンの魔力感知が、地脈の流れの変化に気づく。大量に魔力が地脈から吸い上げられ、モンストルム・ファブリカの入り口が開くと、中から大量の魔物がうじのように湧き出した。

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