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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【19万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第二部 高難易度ダンジョン編

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91話 本気の掃討戦

 魔物の先頭まで追いつき、下を見ると小型の魔物でも四段階目、それよりも大きい魔物は五段階目以上だろう。


 レルゲンは持参してきた王国の剣を五本回転させ、円刃形態にして魔法を全ての剣に付与する。


「ウィンドカット」


 五本全ての剣にウィンドカットを付与して、高速回転すると一種の砂嵐に近いレベルで砂埃が舞い上がった。


 強力に魔法が剣に固定され、切断力が大幅に強化された必殺の剣が、地面のすぐ上に固定されて、追加の命令を待っている。


 対大勢の立ち回りは十一層のトラップにかかったときに一度レルゲンが披露したが、その時の五倍の手数で敵を蹂躙しようと準備する。

 セレスティアは、レルゲンの容赦の無さに頼もしさを感じていた。


「まずはこの剣で四段階目の魔物を一掃する。五段階目と六段階目は、この攻撃でも足止め程度にしかならない。セレスの魔術で止めをさしてくれ」


「わかりました。ときにレルゲン」


「なんだ?」


「野暮なので聞きませんでしたが、他に念動魔術の使い手がいなかったダンジョンで、この戦い方はできなかったのですか?」


「本当に野暮だな……。正直言って俺もダンジョンを楽しみたかったからな。それはセレスも同じ気持ちだっただろ? あまり出しゃばりすぎて水を差したくなかったのもある」


「そうですか。それを聞いて納得しました」


 優しく笑うセレスティアも、本気の討伐戦を始めるべく、マルチ・フロストジャベリンを空中に四十本近く展開する。


 ダンジョンでは一度に十本の生成しか見ていなかったレルゲンも、悪い笑顔をする。


「楽しみたかったのはお互い様か」


「考えていたことは同じようでしたね」


 二人の様子を見ていたディシアは、セレスティアを見て思う。


 ――本当に変わったわね……というより、昔に戻ったのかしら。それを叶えているのは間違いなくレルゲンに影響されているから。本当に羨ましく感じますね。


「さぁ、ここからが本気の討伐戦だ」


 レルゲンが手を前にかざすと、風魔法を纏った回転刃が前へと進んでいき、まるで掃除をかけるメイドのように綺麗な線になって魔物の列が魔石へと還ってゆく。


 その規則正しい線を見て、セレスティアとディシアは戦闘中にも関わらず、何かの芸術作品の作成風景を見ているような気分になった。


 レルゲンが一度に百体ほど魔石へ還したところで、五段階目のゴブリン・ジェネラルが足を斬られて膝をつく。


 全て魔石に還った中に一つだけ残った五段階目の魔物は、セレスティアが待機させていたマルチ・フロストジャベリンの一斉射出によって串刺しにされ、こちらも巨大な魔石へと還っていった。


 実戦経験は年齢を問わず手に入るが、最大魔力量に関しては、幼い頃からおよそ二十歳近くまで際限なく上昇する。

 それだけ若い時期は、器の消耗に対する自己修復能力が高い。


 セレスティアは十九歳。マリーは十七歳。

 レルゲンは十八歳のため、この時期が実力的にも一番上昇が見込める機会だ。


 狙ったわけではないが、どれも成熟まであと一歩という段階で一番効率のいい修羅場を潜っていることになる。


 しかし、才能が大きな割合を占める魔術界においては、十代という若い年齢で六段階目の魔物を複数討伐する実績は過去の記録を遡ってもほぼない。


 それこそ何百年も昔に現れた『魔王』を撃ち倒した勇者でも無い限りは、到底不可能な道筋を辿っていると言っていいだろう。


 次々と魔物が魔石に還っていく様を見て、ディシアは今後の研究に活かすべく、特にレルゲンの戦い方を目に焼き付けていた。


 ――念動魔術、開祖であるナイト・ブルームスタットが最も得意としていた操作魔術。元々は使用人の手伝いの為に作られたとは聞いていましたが、戦闘にこんな活かし方があるとは!


 後にディシアが、念動魔術の戦闘転用に関する論文を発表するほどには、興味深く観察していた。


 およそ地平線の先にまで続いていく魔物の軍勢を、一割ほど押し返したところで、魔物が左右に散り始める。


 この様子を必ずどこかで観察しているテクトが早速動いてきた。


「実に素晴らしい掃討能力だ。だが、四方八方に魔物が散った場合はどうする? さぁ見せてくれ、レルゲン・シュトーゲン」


 別室でこの快進撃を目の当たりにしていたテクトも、ディシアと同様に興奮していた。


「やはりどこからか、俺たちが魔物を討伐している風景を観察しているな」


 レルゲンはあらかじめ大規模な魔力糸を展開して、綴雷電を常時発動させていた。即席の電気柵が効力を発揮し始める。


 左右に散っていった魔物たちが電気を浴びて感電し、糸がレルゲンの方向に進むに連れて徐々に狭くなってくる。


 水中の魚を捕まえる漁のような仕掛けに、テクトは興奮を抑えきれなくなり、もう少し後に展開するはずだった一手を打たざるを得なくなる。


「少し早いが、次のショーといこうか」


 テクトがいる観察室には外の様子を映した画面が映し出されており、沢山のボタンが並んだ制御盤を叩く。


 すると、ヨルダルクのダンジョン上部が開き、中から無数のヒュージ・スワンが空へと解き放たれた。しばらくして、セレスティアがレルゲンに伝える。


「レルゲン! あなたの言っていた通り飛行型の魔物がやってきます! 恐らく五段階目のヒュージ・スワンかと!」


「やはり来たか」


 いよいよレルゲンが黒龍の剣を背中の鞘から抜き、迎撃体勢に入った。

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