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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【16万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第二部 高難易度ダンジョン編

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85話 王国への帰国

 それからレルゲンのマインドダウンが回復するまでの七日間――ミリィの意識は戻らない。

 ミリィの家族には、事情を説明する手紙を攻略本部から出してもらった。


 王国に戻る出発の朝までに、ギルドのカガリに挨拶を済ませ、フィルメルクを後にする。

 今回はマリーとセレスティアの他にミリィとレインもいる。


 魔力が戻ったとは言え、レルゲンの負担を考えて初日よりも日数がかかったが、王国付近の地脈が流れている地点に差し掛かるまで、魔物とも遭遇することなく国境を越えていく。


 王国領に入ってからというもの、マリーとセレスティア、レインの会話がよく弾んでいるようだった。国に入ったことによる安心感とレインの内面がようやく理解できたということだろう。


「レルゲンさんは、三人目の奥さんについてどう思われますか?」


「……なんだ、急に」


 レルゲンは危うく飲んでいたコーヒーを吹きそうになる。


「いえ、お二人から聞いた話によれば、王国にはカノン様がまだいらっしゃるようではないですか」


「いや、カノンには申し訳ないが、そういう目で見たことはないな。あれは小さな俺の姉みたいな人だ」


「なるほど。それで、新しい奥さんを迎えるならどんな方が良いですか?」


「そもそも、新しく結婚するつもりは俺にはないよ」


「そうですか……それは残念です」


 レインが名残惜しそうに話を打ち切るが、マリーとセレスティアは少し安心した表情を見せていた。


「そろそろ地脈からの魔力供給量が増える。あと一回飛んで、休憩するときは注意を頼む」


「わかったわ。まぁ大方、三段階目くらいでしょうけどね」


 もうレルゲンがいなくても大抵の敵は何とかなるはずだ。できるだけマリーとセレスティアに任せて、レルゲンは魔力を全快に戻すことに集中する。


 レインも空を飛ぶことに慣れたのか、気持ちよさそうに風を切っていた。

 いざ王国が遠目から見えてくると、地脈から溢れ出てくる魔力量がマリーとの里帰りのときより多くなっている気がしていた。


 そのため、マインドダウン状態から脱却しつつあったレルゲンの魔力はたちまち回復していき、全快まであと少しというところまで来ていた。


「このまま屋上庭園に降りようと思う。ミリィとレインは初めての王国だろうから、拘束されないようにセレスの方から女王に事情を説明してもらいたい」


「わかりました。お二人の安全は私が保証します」


 速度が落とされて行き、優しく屋上庭園に降り立つ。すると影部隊の一人が、屋上の影から現れてレルゲンたちを迎え入れた。


「セレスティア様、マリー様、そしてレルゲン様。長旅お疲れ様でございました。お連れの方々も遠路遥々お越し頂き、主にかわり御礼申し上げます」


「ご丁寧にどうもありがとうございます」


 レインがお辞儀をして影との挨拶を済ませ、まずは報告の為に女王の私室に案内される。


 セレスティアが扉を軽く叩くと、中から女王が「どうぞ」と短く入室を認める。


「只今戻りました。お母様……!」


 セレスティアとマリーを確認するや否や、公務中だったであろうペンをすぐに置いて二人に歩み寄り、強く抱きしめた。


「よくご無事で帰ってきました。二人とも」


「お母様、苦しいです」


 マリーが女王の腕を優しく掴む。

 すぐに女王は周りに人がいることを思い出し、すぐに愛娘を解放するが、二人の肩に手を置いてレルゲンにお礼の言葉をかけた。


「騎士レルゲン。二人を無事に連れ帰る任務。大義でした」


「はっ、それが私の使命ですので」


 騎士礼を取り、女王に向かって挨拶を返す。


「そしてそちらのお二人は?」


「私からご説明させて頂きます。こちらは……」


 セレスティアが二人の素性について説明する。またダンジョンの最終ボスを討伐し、乱入者が現れて攻略が途中で打ち切りになったことを伝えると、女王は一つの手紙をセレスティアに渡した。


「恐らくそのテクトと名乗る人物からだと思いますが、国にこんな書状が届きました」


 セレスティアが中身を確認し、読み上げる。


「王国民諸君、私はダンジョンの創設者である。

 そちらにいるレルゲン・シュトーゲン殿。そしてその一行の皆様。私はこれより、そう近くない未来に、王国へ魔物の軍勢と共に攻め入ることを正式に宣言する。私が欲しいのは王国に流れる地脈だ。血を流すことは、お互いに望まない未来だろう? 即時に国を明け渡すのであれば、進軍は止めてあげよう。いい返事を待っている。創設者Tより」


 この宣戦布告にマリーは怒りを抑えきれなかった。


「戦いたいっていうなら、やってやろうじゃない」


「私もこの宣戦布告文は看過できません。すぐに対策本部を設立することを進言いたします」


 愛する娘たちの力を、また借りなければ王国の未来が脅かされてしまう現状に、女王は無力感に苛まれていた。


「魔物の数は予想ができますか? 騎士レルゲン」


「はっきりとは申し上げられませんが、敵は高難易度ダンジョンの魔物を操って攻めてくるものだと思われます。数にすれば1万は下らないかと……」


「四段階目の魔物が一万以上ですか……これより早急に対策本部を設立。王国の騎士団に事態の説明をし、民の避難を最優先します。伝達には影部隊を向かわせ、すぐに開戦の準備を始めてください」


「御意に」


 影部隊が女王の命令を受けた瞬間、影へと消え、文字通りの総力戦となるのは間違いないだろう。


 急遽ハクロウ騎士団長が王国の騎士に召集をかけ、情報の共有をする。


「敵は四段階目以上の魔物が一万以上。これはここにいる副団長のレルゲンによる見立てだが、さらに数が多い可能性もあることを心に留めておいてくれ」

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