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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【16万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第二部 高難易度ダンジョン編

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84話 リセットするための観光

 カイニルを退けたレルゲンたちは、一度攻略本部に戻り、事の顛末を説明した。


 他の冒険者から、ダンジョンに魔物が出現しなくなったという連絡が既に来ていたようで、どうやらダンジョンとしての機能が停止しているようだった。


 関係があるとすればテクトと名乗った人物が、ダンジョンとしての役割を終わらせたに違いない。ここでカイニルの言葉を思い出す。


『二十層ボス攻略おめでとう。勇者諸君』


 つまりカイニルの言葉が正しければ、レルゲン達が十三層のボスだと思っていたベヒモスは、セレスティアの説明通り最終ボスとして用意されていた魔物で、それを倒したからダンジョンとしての機能を停止させたということになる。


 マインドダウン状態のレルゲンは、目の下に深いクマができており、セレスティアに肩を貸してもらいながら攻略本部まで戻り、気を失っているミリィはマリーが背負っている。


 レインに会った時は心配されたが、マインドダウンだと説明して少し安心したような表情をしていた。


「お疲れ様ですレルゲンさん、皆さん――大変な事になりましたね」


 セレスティアはミリィの身を案じて、レインにどこか休めるところがないか尋ねる。


「ミリィ様が重症です。回復魔術はかけましたが、未だに意識が戻りません。どこか寝かせてあげられる場所はありませんか?」


「攻略本部に医務室がございます。どうぞこちらへ」


 ミリィを医務室に寝かせてきた三人がレルゲンの下へと戻ってくる。


「レルゲン、大丈夫?」


 マリーが肩を貸しながらレルゲンに問う。


「ああ、マインドダウン特有の気分の悪さなだけだ。国に戻ればすぐに元に戻るさ」


「なら早めに戻りましょう。カイニルとかいう奴は必ずまた現れるわ。レルゲン――あなたは本当に変人に気に入られることが多くて大変ね」


「まったくだ」


 その場にいた全員が苦笑いを溢す。


「というわけでレインさん。本当に短い間だが世話になった。難しいだろうが、今後はしばらくダンジョンには近づかない方がいいかもな」


「仰っていたテクトという人物と関係があるのですか?」


 レルゲンが頷き、「これは予想だが」と始めに断りを入れて話し始める。


「奴はダンジョンのことを人工生命体だと言っていた。その創設者だとも。つまり、魔物を人為的に作り、"操作できる"可能性がある。そうなれば最初に被害を受けるのは」


「攻略本部……なるほど。内容は理解しました。ですがその間の生活もありますので……」


 レインが断ろうとしたとき、マリーが待ったをかける。


「なら、うちの国にくればいいじゃない。ギルドの仕事で良ければいくらでも仕事はあるわよ」


「うちの国……?」


 レインがマリーを見て不思議そうな顔をすると、マリーとセレスティアが小さな声で自己紹介する。


「私は第三王女、マリー・トレスティアよ」


「同じく第一王女のセレスティア・ウノリティアと申します」


「えぇぇぇえええ!!!!」


「静かに! 周りに聞こえる!」


「し、失礼しました。訳ありだとは思っておりましたが、まさか国の超重要人物だったとは。数ある非礼、謝罪いたします」


「そんなことはいいのよ。で、うちで働く気はある?」


「……ぜひお願いします!」


 マリーとレインが話している時に、レルゲンがセレスティアへ魔力糸を繋いで念話で話しかける。


『セレス、聞こえるか?』


『はい。マインドダウン中ですのに無茶しますね』


『これくらいなら平気さ。それよりもミリィのことだが、気になる点がある』


『カイニルがミリィを庇おうとしていたことですか?』


 レルゲンは、よく見ているなと言いたげに、僅かに目を見開いた。


『そうだ。戦闘中の奴に唯一の隙が出来た瞬間だ。ミリィには俺たちの知らない何かがある』


 半ば確信めいた表情をするレルゲンに、セレスティアも納得しているようだ。


『私もこのままミリィを置いて国には帰れません。連れて行きたいのですよね?』


 レルゲンが頷き、秘密の会話はここで終了した。後はセレスティアが上手く理由を作って、ミリィも王国へ連れて帰ることができるだろう。


 レインとは一旦別れ、ミリィが目を覚ましたときに、人がいるようにお願いをしておく。


 一度旅館へ戻って休むべく、三人は帰路に着いた。三人の会話は普段より多くはなかったが、寝るときは自然と三人一緒に、同じベッドの上ですぐに眠りについた。


 マインドダウン状態のレルゲンは旅館に帰ってから二人に魔力をある程度流し込んでもらったおかげで、一晩で器の回復がだいぶ進んでいた。


 ダンジョンへ挑み始めてから、まだ三十日と少し。

 すぐにでも王国へ帰る選択肢もあったが、行きはレルゲンの念動魔術で飛んで早く着いた。

 帰りもレルゲンの念動魔術に頼ることになるため、回復するまではフィルメルクでゆっくりすることになった。


 今までずっとダンジョンに潜り続けたことで、この街に着いてからというもの、旅館とダンジョンとの往復だけで観光は全くできていなかった。


「というわけで、敵の動向は気になるけど、今日からしばらくレルゲンが回復するまで観光を楽しみましょう!」


 マリーは王国でレルゲンと一緒に出かけたときに買った服装に身を包んでいる。

 セレスティアは足のラインがよくわかる紺色の生地のパンツを履き、上半身は白のトップスを纏っているが、お腹まわりの肌が少し露出しており、レルゲンは目のやり場に多少困った。


 二人の服装は旅館の外に出るまでは内緒で! ということだったので、レルゲンは早めに着替えを済ませ、入り口付近で待っていた。


「お待たせ!」


「お待たせ致しました」


「二人とも、よく似合っているよ。セレスの出かけ着は初めて見たけど、ちょっと驚いた」


「もっと肌を出さないと思っていましたか?」


「正直に言えばな」


「私も普段はこのような格好はできませんから、今日は少し挑戦してみました」


「本当によく似合っているよ。さぁ、初めてのフィルメルク観光、存分に楽しもう」


 フィルメルク特有の洋服店や出店での買い食い、露天の足湯などで三人は癒されてゆき、会話も弾んだ。


 気づけば陽も落ち始めており、その帰りにミリィの容体も確認しに行ったが、まだ意識は戻っていないようだった。

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