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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【16万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第二部 高難易度ダンジョン編

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76話 スケリトル・ファラル

「何があったんだ?」


 セレスティアが傷だらけの男性冒険者に回復魔術をかけ、落ち着いたのか語り始める。


「ここからそう遠くない上層階にいる魔物が強過ぎたんだ……俺達は撤退しようとしたんだが、相手が速くて全然逃げられなかった……今も仲間たちが奴の相手をしていると思う。頼む……礼はする! 助けてくれないか?」


「……わかった。もう少しその魔物の外見や攻撃方法について詳しく説明してくれ」


「ありがとう! ありがとう……!! ボスの見た目は……」


 移動しながら掻い摘んで説明を受けるが、一つ分からないことがあった。


「大体は分かったが、弱点である魔石が見えているなら、どうしてその弱点を突かないんだ?」


「頭の回転が早いんだ。俺たちが魔石を狙えるタイミングは、決まって奴が誘い込もうとしている時だった……」


「それで返り討ちにあったわけか」


 予想するに、知能が高いやつでそこまでの性能を持っているなら、間違いなく六段階目だ。小走りで向かった先には、確かに魔物が冒険者を追い詰めていた。


 件の魔物は聞いていた通りで、骨と肉が顕になっており、胸部には光輝く魔石が見える。


 龍種のようだが、死んでいるのに動いているのか、または本当に生きているのかわからない外見をしている。

 だが、罠を張ったり誘い込んだりする知性はあるため、純粋に言葉を話すのを面倒くさがっているだけの可能性もあった。


「ガァァァァァアアアア!!!」


 レルゲンたちの接近に気づいた龍種は、人質を取るように助けを求めて来た男性のパーティメンバーとの間に入り、レルゲンを睨み付けた。


「そこを動くな」とでも言いたげな眼光で睨みつけてくる。だが、レルゲンは動かずに人質を念動魔術で円を描くように引き寄せて、龍種から引き離した。


 レルゲンの救出に怒りを露わにした龍種は、ブレスを放とうと口元に魔力を集中する。


「みんな俺の後ろへ!」


 レルゲンが声をかけたが、放たれたのは光線でも、強酸でもなく、サンライトのような光の球だった。あまりに強い閃光がレルゲンたちを襲い、思わず目を閉じる。

 だが、魔物は待ってくれない。


 視界が利かないなら、魔力で追うしかない――

 と、一瞬考えたが、ナイトとの戦いから魔力のみの追跡は危険と学んでいたレルゲンは、耳を澄ませるために集中する。


 規則的な風の音が、鼓膜を強く叩いた。


 ――上空からの突撃か……!

 瞬時に黒龍の剣に魔力を込めて音の先へと一撃を放つと


「グアアァァ……!」


 と怯んだような声を上げ、地面へと勢いよく降りてくる。


 地響きと共に降りた龍種は、次の一撃を放つために全身へ魔力を展開し始めた。

 人質は全て回収したが、怪我人も多い。セレスティアの回復魔術で一度落ち着く必要がある。


 ようやく視力が戻ったレルゲンは、ここで一度撤退を決意する。


「一旦撤退する! 退路の安全が確保されたら下階へ向かって走れ!」


 刀身が漆黒に輝きながら伸びてゆき、高出力の一撃が龍種を飲み込んでゆく。


 ――手ごたえはあるが、討伐はできていないだろうな、とレルゲンはすぐに思考を切り替えた。


 漆黒の光が龍種を包み込み、光が晴れてから周囲を龍種が見回したが、目の前にはもう、レルゲンたちはいない。


「グアアァァァアアアアア!!!!!」


 撤退していたレルゲンたちは、はっきりとその咆哮を聞いていた。


 完全に龍種を撒いてから一息つき、セレスティアがエクストラ・ヒールで癒す。

 意識を失っていたメンバーたちも、命に別状がない程度には回復が済んだ。


「……ありがとう。助かった」


「攻略本部までは帰れるか?」


「ああ、戻る分には問題ない。あんたたちは相当強いようだが、奴と戦うのか?」


「そのつもりだ」


「そ、そうか……気をつけてくれ。詳しくはわからないが、間違いなく"ボスクラス"の魔物だ」


「わかっている。俺たちも危険と判断したら帰還するから安心してくれ」


「無理すんなよ」


 セレスティアの魔術である程度は回復しているが、それでも足を引きずる仲間に、男が肩を貸しながら戻って行った。


 マリーは、さきほど戦った龍種を知っているようだった。


「あの龍、間違いないわ……スケリトル・ファラル。王国に伝わる話の原典になっている龍――最後は勇者に倒されるけど、沢山の人の命を奪った魔物よ。六段階目で、レルゲンの見立て通りね。私も最初見たときはわからなかったわ」


 今まで遭遇した六段階目の魔物は、十層のボスであるアシュラ・ビーストだったが、スケリトル・ファラルの戦い方はまるで正反対だった。


 スケリトル・ファラルを倒しても、十二層のボスが別にいるはずだ。ここで足踏みはしていられない。


「その御伽噺に、何か倒し方のヒントは書かれていないか?」


「勇者の"聖なる光"で倒されたとは書いてあるけど、聖属性の魔術なんて聞いたことないわ」


「俺も最後の一撃はかなり魔力を込めたが、あまり効いている手応えはなかったな。別の方法が必要だと思う」


「聖なる力かどうか分かりませんが、私やマリーの持っている武器ならどうでしょうか? 『神聖な』という語句もありますし」


 セレスティアが神杖を撫でながらマリーの神剣を見る。


「そうだな。確証がなくてもやってみよう。俺とミリィで足止めする。その隙に二人は全力を叩き込んでくれ」


 二人が頷くが、ミリィが「私もですか!?」と半泣きになる。だが、ミリィの肩に優しくレルゲンが手を置いて力強い言葉をかけた。


「君こそが奴の動きを抑える適任者だよ」


「……や、やれるだけやってみます!」


 と、緊張した様子で生唾を飲み込んだ。


 周囲を警戒しながら探索を続け、スケリトル・ファラルを探して上の階まで登る。

 ボスの部屋前まで来たが遭遇することはなかった。


 そして、今回の異変と呼ぶべき現象に納得がいく光景が広がっていた。


 ボス部屋が――既に開いている。

 中にはボスの姿はなく、すぐに全員が気づいた。


 ――何者かがダンジョンのボスを解放した!

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