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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【16万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第二部 高難易度ダンジョン編

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74/100

74話 進む関係、セレスティアの千載一遇

 少人数でのボス攻略を成し遂げたレルゲンたちの功績は、攻略本部の冒険者たちを沸かせていた。


「四人でボスを討伐したのか!」


「一体どこのどいつが!?」


 レルゲンたちのパーティは、できるだけ悪目立ちしないようにボスを攻略したことは伏せていたが、どこからか聞きつけたのか、情報が漏れていたようだ。


 レインが小声でレルゲンたちを祝福する。


「おめでとうございます。いつか成し遂げると思っておりましたが、こんなにも早く単独パーティでボスを討伐するなんて! さすがはレルゲンさんです」


「ありがとう。特に今回は全員が魔術戦をできるから何とかなったが、五段階目とはいえ難しい相手だった」


「なるほど……これから十一層のボス攻略を考えている冒険者に、この情報はお伝えしても良いでしょうか?」


「ああ、問題ない」


「いえいえ、いつも貴重な情報をありがとうございます」


 レインが深々とお礼をして受付の奥へと消えてゆく。ボス攻略を見事成し遂げると、ボスの魔石換金とは別に攻略ボーナスというものが支給されるらしい。

 いつものようにレインに支払いを任せて、レルゲンたちは足早に攻略本部を後にする。


 そして、レルゲンがミリィに今までの報酬分をまとめて渡した。


「これは今までミリィが頑張った分だ」


 ミリィが袋を受け取ると、大きさの割に袋がかなり重かった。


「こんなに金貨が……! いいんですか?」


「ああ、それに今回のボスの報奨金は別でまだあるぞ。十二層の攻略が終わったらまたミリィに渡すよ」


「はわわわ……! これだけあれば、しばらく家族がお医者様に診てもらえるようになります。本当に、こんなに貰っていいんでしょうか?」


 レルゲンが力強く頷くと、金貨が入った袋を大事そうに抱えたミリィは、また片目から涙を一雫だけ流した。


「本当にありがとうございます……! それではみなさん、今日はこれで失礼します! お疲れ様でした!」


「お疲れ様」


「またこちらに来てくだされば、美味しいものを用意しておきますね」


「念動魔術、知りたくなったらまた来てもいいのよ」


「はい! それでは……!」


 ミリィが駆け足で宿に帰ってゆく。

 残る攻略期限はまだ余裕がある。

 気にすべきは期限よりも、マリーとセレスティアの安全についてだ。


 十層までは、ボス部屋前にあのようなトラップは存在しなかったらしい。いよいよダンジョンも本格的に攻略に来た冒険者を拒み始めていた。


 ボス攻略の時も感じたが、気を引き締めないとな……と考え、難しい顔をしているレルゲンをマリーが見て、少し大袈裟に笑ってみせた。


「今日は戻ったらパーっとやりましょう! お酒も今日くらいは飲んでもいいわよね? セレス姉様?」


 セレスティアも口元に手を当てて笑う。


「そうですね、今日くらいは少し羽目を外しても良いでしょう。もちろんレルゲンも付き合ってくれますね?」


「そうだな、今日くらいは俺もいいと思う」


「やった! じゃあ女将さんに言って、普段より豪勢にしましょう!」


「普段から豪勢だろ」


 レルゲンが思わず軽口を入れるが、三人の帰路につく足取りはどこか軽いものだった。


 浴衣に着替えた三人はお酒も交えつつお互いを労う。出された料理はいつもより量が多いが、度重なる魔術行使による疲労から、すぐに食べ終わってしまった。


 お酒も進み、マリーが顔を赤くしながらレルゲンにお酒を注いでもらうべく、杯を差し出す。


「ん……!」


「少し飲み過ぎじゃないか?」


「いいのよ……! 今日くらいは!!」


 お酒による汗が鬱陶しかったのか、マリーは長い髪を後頭部に纏めている。


 普段隠れていた首筋が露わになり、レルゲンは視線を逸らした。


 ――いかん、俺も少し飲み過ぎだな。

 マリーが眠くなったのか、座っているレルゲンの膝に横になって寝てしまう。


 王国に帰ってしまえば、こんな無防備な姿を見ることもないだろうと思い、マリーの綺麗な金髪を優しくそっと撫でる。


「マリーばかり狡いです」


 セレスティアもだいぶ頬が朱に染まっている。

 同じように髪を纏めており、首筋からうなじにかけて露わになっていて、心臓が跳ねるのをレルゲンは感じていた。

 しかし、寸前で表情には出さない。


 しかし、セレスティアはその僅かな違いに酔っていながらも気づいていた。


「触れたいですか?」


「い、いや……」


「マリーも寝ていますし私は構いませんよ?」


 部屋を包む雰囲気が変わる。お互いの吐息が届くほどまで距離が縮まるが、ここで扉を叩く音がする。


「配膳を片付けに参りました」


 セレスティアとレルゲンがさっと顔を離して、女将さんを中へと通す。


「どうぞ」


 しかし、二人の雰囲気を察してか、時間をかけずに片付けを済ませ、足早に部屋を出て行った。


「寝ましょうか」


「そうだな」


 一度途切れた雰囲気は、もう元には戻らなかったが、マリーはベッドに寝かせ、セレスティアは何も言わずにレルゲンの布団へと潜り込み、共に一夜を過ごした。

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