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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【16万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第二部 高難易度ダンジョン編

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63話 魔物に追われる者と、不穏な追跡者

 どうやら魔物に追われているようで、このままだとレルゲンたちが魔物と戦わなくてはならなくなる。


 魔力感知ではおよそ三・四段階目の魔力を持った魔物が五体。少女を追いかけているようだ。


「どうする?」


 マリーがレルゲンに尋ねるが、できれば助けてあげたいといった気持ちが伝わってくる。


「わかった。セレス、支援魔術を頼む」


「ふふ、わかりました」


「マリー、俺の剣で魔物の勢いを殺す。その後に斬り込んでくれ」


「任せて!!」


「――行くぞ」


 追いかけられていた少女とすれ違った瞬間、レルゲンが鉄の剣を五本、浮遊剣にして上空へ射出し、魔物たちの目前の地面へ突き刺す。


 追いかけられていた少女はセレスティアが抱きしめて優しく声をかけた。


「もう大丈夫ですよ」


「でも……! ごめんなさい!! あなたの仲間が!」


「よく見ていて下さい。あとは任せておけば大丈夫です」


 突き刺した剣によって驚いた魔物の勢いが収まり、マリーが神剣に魔力を込めて斬りかかる。たった一撃を与えただけで、魔物が魔石へと還った。


 マリー本人も神剣の異常な性能に驚いた表情をするが、すぐに不敵な笑みを浮かべて次の魔物へ斬りかかる。


 レルゲンは念動魔術による移動で魔物の背後に素早く回り込み、黒龍の剣に魔力を少し込めて斬撃を飛ばす。


 深手ふかでを負った魔物が怯むと、マリーが一気に間合いを詰めて止めの一撃を入れる。


 マリーが残りの魔物たちの突進をいなし、レルゲンの方へと向きを変えさせる。


 脚や腕などを軽く斬りつけ、マリーは巻き添えを喰らわないように離脱していく。


 マリーが魔物の注意を引いている間にも、レルゲンが黒龍の剣に魔力を込めると、刀身が赤く染まり、そこから光が伸びていく。


「レルゲン! 後は任せた!」


「こっちも準備できた。セレス! 防御壁の展開を頼む!」


 防御壁が展開され、マリーがセレスティアの後ろに滑り込む。


 それを確認したレルゲンが赤い光線を解放し、三体の魔物を一瞬で魔石へと還し、その余波で地面に深い谷が刻まれた。


 その光線攻撃を見た少女は、驚きと共に安堵の表情を見せてお礼の言葉を口にする。


「……はっ! た、助けて頂き、ありがとうございました!!」


 何度も頭を下げているが、見たところ一人だけのようだ。

 奥地から逃げて来て、他に仲間がいないのだろうか。


「君は一人か?」


「いえ、三人で攻略をしていたのですが、魔物から逃げるときに一人になってしまいまして」


「散り散りになったのか」


「いえ、その……」


 この反応は、不幸にも魔物に殺されてしまったようだ……高難易度ダンジョンには残念ながらよくある話。しかし、この少女は運良くレルゲンたちのもとへ逃げ込めた。

 助けなければ、間違いなく命を落としていただろう。


「よくここまで逃げられたな。もうすぐダンジョンの入り口がある。そこまでは送っていくから、後は受付に事情を説明してくれ」


「はい……ありがとうございます……」


 ダンジョンに入ったばかりのレルゲンたちは、すぐに入り口まで戻り、追いかけられていた少女をレインに送り届けた。


 別れ際に少女がレルゲンたちにもう一度お礼を言い、自身の素性を明かす。


「私、Aランク冒険者のミリィって言います。助けていただき、本当にありがとうございました!」


「俺はレルゲンだ。これからが大変だろうけど頑張ってくれ」


 ミリィが握手を交わすために右手を出すと、レルゲンもそれに応じる。


「では、またお会いできることを楽しみにしています。レルゲンさん!」


「あぁ、元気でな」


 最後に何度も頭を下げながら、ミリィは消えていった。


「ミリィ様、大丈夫でしょうか?」


 セレスティアが心配そうに呟くが、レルゲンが優しく答えた。


「一人でダンジョンに入らなければ大丈夫だと思う。あの子には気の毒だが、攻略は中止になるだろうし、心配いらないさ」


 気を取り直して一層の攻略を再開する。

 平原から森へ歩いて行くと、ユニコーンが澄んだ川辺で休憩している。


 ユニコーンは刺激しなければ襲ってくることはない。川の反対側にいることからそのまま通り過ぎる。


 一枚の絵画を見ているような景色に、セレスティアは目を輝かせていた。それとは対照的に、ユニコーンを一度怒らせてしまった経験のあるマリーは、足音を立てないように気をつけて歩いていた。


 森と川沿いの地帯を抜けると、石で出来た建造物の入り口が見えてくる。恐らくはボスに通じる建物だろう。


 三人は顔を見合わせながら、少し緊張した様子で建物へと足を運んでいく。


 建物へ入ると、内部は迷路のような構造になっていた。通路は広く、直角に曲がる道があれば、蛇行するような道もある。


 細い通路には魔物の反応はなく、少し開けた部屋に入ろうとすると魔物が出現するようだ。


 まるで冒険者を検知する仕組みがあり、魔力を効率的に循環させているような、生きた魔術師のような印象をレルゲンは感じ取っていた。


 何度か魔物との戦闘を経て迷宮を探索し、順調に攻略を進めていた。

 魔物の部屋を後にしてから、念動魔術で端に寄せられた不要なドロップ品が、ダンジョンの床に吸収されるように沈んでいく。


 この異質な現象に、レルゲンたちは気づいていなかった。

 だがその一方で、後方から隠蔽魔術を使い、発生する足音を周囲に溶け込ませながら追跡してくるパーティがいることにレルゲンは勘づいていた。

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