62話 いざ! 高難易度ダンジョン攻略開始!
この街に入ってから、ずっと異質な建造物が目に入っていた。間違いなくダンジョンだろう。
――遠くからでもわかる不思議な雰囲気。
周辺の建物とこれほどまでに合っていないと、逆に歴史的な建造物の近くに街を構えているようにも感じられる。
今まで見た建造物の中でも、群を抜いた大きさだった。中央王国の王宮を最初に見たときも、レルゲンは首が痛くなるほど見上げたが、それを遥かに凌ぐ迫力だった。
いざダンジョンの入り口付近まで到着する。
入り口までの間は特に出店の数が多い。攻略後の冒険者の潤った懐を狙っているのだろう。
酒場や喫茶店、さらには宿屋まで並んでおり、ダンジョンの特需がわかりやすい構図になっている。
ダンジョンのすぐ傍には、攻略本部と思しき建物が併設されている。ここでダンジョン内部の情報や踏破率の計算、魔石や素材の換金などを行っているようだ。
ギルドとはまた違った、ダンジョンに特化した案内所といったところだろう。
案内所の看板には『攻略本部』と書かれており、レルゲンたちはここで約五十日の間、行き来することになる。
まだ日が昇ってからそれほど時間は経っていなかったが、思っていたより人が多い。
夜通し攻略をしていたパーティや、朝早くから挑戦する気合の入ったレルゲンたちのような人が集まっていた。
さすがは高難易度ダンジョン――もし攻略できるならすぐにでもお金が貯まっていくだけあり、もし攻略できれば、莫大な報酬が手に入る。成り上がるにはうってつけなのだろう。
昼になればもっと人が増えてくる。
そのため、人目をできるだけ避けたいレルゲンたちは、朝早くに来る必要があったのだ。
忙しそうに冒険者の対応をしている女性に、レルゲンが声をかけた。
「新しくここで攻略をする者なんだが、現在の攻略状況について教えてもらいたい」
「新人さんですね。ギルドカードを拝見してもよろしいでしょうか?」
クーゲルに渡されたギルドカードを渡すと、受付の女性が眉をひそめてレルゲンの顔を確認する。
「確認して参りますので少々お待ち下さい」
奥へ一度下がり、誰かと話し込んでいる。
気になるところでもあったのだろうか? と三人が少し不安になりながら待っていると、先ほど奥に消えた受付が戻ってくる。
「お待たせ致しました。本来このダンジョンは危険なため、Aランク以上の冒険者のみとなっておりましたが、この街のギルド長であるカガリより皆様の特別許可が出ていると連絡が来ておりました。ダンジョンには問題なく挑戦が可能です」
三人は追い返されるのではないかと不安になったが、どうやら杞憂だったようで、マリーとセレスティアは胸を撫で下ろしていた。
「改めまして、皆様の専属受付として――私、レインが担当させて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ああ、よろしく頼む」
「ありがとうございます。簡単にご説明させて頂きますと、本ダンジョンは全二十層で構成されています。各層の最深部にはフロアボスが構えており、現在は十層ボスの手前まで攻略が進んでいます。ただ、十層のボスは特殊攻撃がないものの、六段階目に属するアシュラ・ビーストと呼ばれる魔物だと、攻略者からの情報がございます」
「もしかしてそのアシュラ・ビーストは、五段階目のアシュラ・ハガマと何か関係があるのか?」
「はい。アシュラ・ハガマは魔物の中では珍しい変態を繰り返す魔物で、簡単に言ってしまえば成体前の幼体になります。アシュラ・ハガマが変態をし、成体になったものがアシュラ・ビーストとお考え頂ければよろしいかと」
「ふむ……主な攻撃は熱線や光線攻撃以外にもあるのか? 前に倒したアシュラ・ハガマはその攻撃方法のみだったが」
「アシュラ・ハガマを討伐した経験があるのですね! それなら話が早いです。ただ、アシュラ・ビーストはそれらの攻撃に加え、巨体でありながら素早く移動し、硬い外殻を活かした攻撃をしてくると報告があります」
ここでマリーが目を輝かせながら、深域にいる六段階目の魔物と同等の強さを誇るアシュラ・ビーストの話を聞いて、机に身を乗り出しながら喜んでいる。
レインが苦笑いをしながらも、攻略情報を教えてくれる。
「六段階目の魔物は、報告例が少ない深域での活動が多いですから、正直まだ情報が足りません。他の攻撃手段もあるとお考え頂いた方がよろしいでしょう」
「大体わかった――最新の十層までは一層から順に登っていく他ないだろうか?」
「いえ、ボスが倒された層から次の層までの転移魔法陣がございます。ですので、皆様は初めから十層に挑戦することは可能です」
「じゃあ始めからボスに挑戦できるってことよね?」
「はい、可能です。しかし、ダンジョンに慣れていただくためにも、まずは一層で身体を慣らしてからの挑戦をお勧めします」
「一層の魔物はだいたい三・四段階目辺りだろうか?」
「その通りです。一層のボスは五段階目ですが、通常で出現する魔物は四段階目までしか確認されておりません」
「なら今日は一層で肩慣らしと行こう。セレスもそれでいいか?」
「はい。構いません」
マリーは不満げな表情を見せたが、最終的には納得してくれたようだ。
話がまとまったところでレインが微笑み、案内を続ける。
「では、本日は初めての挑戦と言うことで、攻略本部からの支給品がございます。二回目からの挑戦はご自身での用意が必要となりますので、ご注意下さい」
「へぇ、支給品が出るのか。これはありがたい」
支給品が入った袋がレインからレルゲンに手渡される。
袋の中には、携行食、水、包帯、飲料タイプの回復薬、魔力揮発剤が一つずつ入っている。
これを一回切りとは言え、全ての冒険者に配っているならば、かなりの待遇だ。
攻略本部の本気度が伺える袋だと感じる。
「では、案内できる内容は以上になります。他に気になることはございますか?」
「いや、十分だ。またわからないことが出てきたら頼らせてもらうよ」
「承知致しました。皆さんのご武運をお祈り致します。頑張ってください!」
レインがダンジョンの入り口まで見送りに来て、手を振って見送ってくれた。
「「行ってきます」」
「お気をつけて!」
入り口を抜けて中に入る。すると、建物の内部のはずなのに、第一層は広大な平原が広がっていた。
人工的な照明がついていることで中は明るい。転移魔法陣で移動したように錯覚するほど、外とはまるで異なる地形が広がっていた。
入り口付近にはすぐに帰還できるよう、魔物を引き付けて戦っている五人組のパーティが攻略していた。
――まるで異界だ。
獲物を奪わないように脇道に逸れながら、奥を目指す。すると、高い木々が連なっている地帯へ出た。
木の実がなり、魔物ではない小動物のつがいが優雅に歩いている。
ここが建物の中という感覚が、三人とも薄まりつつある光景を見て、探索を続ける。
しばらく歩いていると、セレスティアの魔力感知に魔物の反応がいくつも引っかかり、一人の冒険者が泣きながらこちらに走ってくる。
「助けて下さーい!!」
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