61話 先にお風呂へ入っていて下さい
マリーは張り切っている様子で、セレスティアが苦笑いをしていた。
旅館まで案内されて、外観を確認すると入り口から中庭まで砂利が敷かれており、綺麗に均され、平らな石が等間隔に敷かれている。
ここを通れということだろう。
左右を見ると中庭のようなものがあり、趣のある池には色鮮やかな魚が悠々と泳いでいた。
「風情がありますね」
「あぁ、とても綺麗な宿だな」
建物の中に入ると、一人の女性が出迎えてくれる。
「本日は遠路はるばるお越しいただきまして、ありがとうございます。さぁ、お荷物を預からせていただきます。お部屋はこちらです」
通された部屋は大きく、マリーやセレスティアの自室に近い規模だ。
これなら二人ともゆっくりくつろげるだろう。
通された部屋の床は、薄い緑色をした植物の繊維を編み込んで作られていた。
初めて見た物が多い三人は、色々と部屋を見て回りながら、新しい発見と共に気分が高揚していた。
食事の前に風呂に入ることを勧められたが、マリーの空腹も限界だったようで、先に食事を頂くことに。
出された食事は色鮮やかな海産物の切り身や、山菜を油で揚げたもの。よくわからない茶色い飲み物は温かく、芳醇な香りが鼻を抜けていく。
さすがにこれほどの旅館だけあって、おもてなしはどれも極上のものだった。
食べ終わってから風呂に入るわけだが、マリーとセレスティアは後から入るというので、部屋に備え付けられていた大浴場にレルゲンが先に入る。
やはり風呂はいい。
何度入っても飽きることがないのは不思議だと、ぼやける意識の中でレルゲンが考えていたら、大浴場の扉を開ける音がする。
一瞬驚いたが、マリーとセレスティアが布を巻いて大浴場に入ってくる。
先に入れというのは、そういうことか……! と面食らう。しかし、既に妻とはいえ、まだまだ見慣れていないのも事実だ。水着のときですら限界に近かったのだ。初日からこれではレルゲンの理性はもうもたないだろう。
いや、寧ろそれをマリーとセレスティアは狙っているのかもしれない。
いい加減、夫として慣れなければならない――とわかってはいるが、二人の不意打ちのような行動に、恥ずかしさがどうしても勝ってしまう。
だが、呆気に取られて見つめていると、マリーが少し恥ずかしそうに頬を染めた。
「レルゲン……その、あんまり見ないでもらえると助かるわ……」
「悪い……!」
「私は構いませんよ? せっかくの夫婦水入らずなのです。いいではありませんか」
「それはそうだけど……」
見かねたセレスティアが二人に指をさして宣言した。
「二人はお互いに抵抗があり過ぎます。これからは慣れてもらうために、毎日一緒にお風呂に入りましょうか」
「「えっ……」」
二人とも思わず固まる。
マリーも今日だけだと思っていたのだろう。
「とりあえずお互いの身体を洗い合いましょう」
「勘弁してくれ……」
ぎこちなく互いの身体を洗い合い、必要以上に目のやり場に困る。
その後、三人は揃って湯船に浸かり、火照った身体を落ち着かせてから眠りについた。
レルゲンは眠るときも一緒のベッドで! と言われるのかと身構えたが、そこまでは勘弁してくれるようだ。
――次の朝。
陽が昇ると共に目を覚ます。
しかし、レルゲンの身体が重い。まるで念動魔術で身体を固められたようだ。両手両足とも動かない。
「やっぱりこうなったか……」
それもそのはず、別のベッドで眠っていたマリーとセレスティアが、レルゲンを抱き枕にして規則正しい寝息を立てている。
レルゲンは諦めて二人が起きるまで、もう一眠りすることに。
結局二人が目を覚ましたのは陽が昇ってからしばらくしてからだった。
「おはよう、二人とも」
「んっ、おはようレルゲン」
「おはようございます」
起きてからも中々手を離してくれない二人の頭を撫でて身体を起こす。
「ダンジョン、今日から行くか?」
「いくわ!」
「行きましょう」
二人とも本当にダンジョン攻略が楽しみのようだ。それは今の二人の表情を見れば伝わってくる。
朝食を済ませて出発の準備を整え、いざ、ダンジョンがある中央通りへと、レルゲンたちは胸を躍らせながら歩を進めた。
読んで下さってありがとうございます!
もし続きが気になりましたら、ブックマーク、評価をお願いします!
ぜひ皆さんで作品を盛り上げて下さいね!
よろしくお願いしますー!




