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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【19万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第一部 絆の糸編

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4話 必殺の回転刃、ユニコーンの首を断ち切る

 ユニコーンが出現した地面に、何やら魔法陣が敷かれている。召喚するための陣だろう。

 レルゲンは目標を見つけて表情を少し緩めたが、すぐに引き締める。


 衛兵たちは一体目のユニコーンと睨み合いが続いているが、二体目が乱入したら間違いなくパニックを引き起こすだろう。


 このまま放置すれば本当に死人が出る。


 今ここで魔法や魔術を行使すれば、更に大気中の魔力濃度が上がるかもしれない。


 レルゲンが取れる手段は一つ。

 剣でユニコーンを断頭し、確実に仕留めなければならない。

 レルゲンは鞘から剣を引き抜き、空中に浮かしながら追加で命令を出す。


「回れ」


 剣は徐々に回転数を上げていき、すぐに剣の形が分からないほどの回転を始める。


 これ以上回転数を上げて『音』を出せば、下にいるユニコーンや衛兵たちに気づかれてしまう。


 二体目のユニコーンの注意を逸らすために、魔力糸を手元の石ころに繋げる。

 ユニコーンの付近にある岩へ突進させる。


 岩に激突し、音が響く。

 ユニコーンが驚いていななき、音の発生源に注意が向いた。


 首が後ろを向いたところで、必殺の回転刃がユニコーンの首を断ち切り、魔石の姿へ還っていった。


 三体目が出現する前に魔法陣を破壊するべく、レルゲンは付近へ降り立つ。

 魔力糸を魔法陣に接続すると、レルゲンの魔力が凄まじい速度で吸収されていく。


 魔法陣に描かれた文字を読み解くと

『周囲の魔力の吸収』『魔力を閉じ込める結界の維持』『吸い上げた魔力を魔物へ変換する』


 この三つの効果が、一つの陣に組み込まれている。


 円形に構成されている魔法陣は、内側から難易度別に大きさを変えている。

 内と外の命令式との間に、術式同士が相互干渉しないように、象形文字に近い模様がいくつも連結されている。


 魔法陣を描いている材料は、魔石を液体化させた塗料のようなもの。高価だが、大きめの魔術学校に行けば目にできる代物だ。

 入手自体は、そこまで難しくない。


 魔法陣を作成した者は相当魔術に精通している。壊すのは簡単だが、もう少し見ていたくなるような気持ちになる。


 レルゲンは好奇心を抑えつつ、美しく組まれた魔法陣を塗料ごと空中に引き剥がす。

 命令式を連結している象形文字を、念動魔術で強引に書き換える。


 絶妙なバランスで効果を発揮していた魔法陣は、自壊して崩れ、跡形もなく空中へ消えていく。


 ユニコーンの角と魔石を素早く回収してから、

 最初に発見したユニコーンの元へ静かに戻る。


「お待たせ。結界は破壊した」


「わっ! 急に話しかけないでよ! びっくりしたじゃない!」


「わ、わかった、悪かった。だから静かに」


「大体あなたはさっきも急に……!」


 ここで金髪の彼女が大きな声でまくし立てていたことに気づく。

 すると、ユニコーンがこちらを睨みつけながら、甲高いうめき声をあげて突進して来た。


「恨むぜ嬢ちゃん!」


「ごめんなさい!」


 馬車よりも素早い速度で突進してくるユニコーンを、辛うじて躱す。

 追撃をしようと頭に生えている角に、全身から魔力を集中しスパークを始める。


 魔力を電撃に変換する効率は、他の魔法や魔術と比べて低い。

 帯電を終えるには時間がかかるはずだが、さすがは四段階目なだけあり、すぐに臨界点を迎えた。


 大した距離が離れていない間合いでは、電撃なら一瞬でレルゲンたちに到達するだろう。


 ユニコーンが電撃を放つ寸前、空から鉄の剣が無数に落下して地面に突き刺さった。

 放たれた電撃がレルゲンたちに襲い掛かる。


 しかし、ユニコーンが放った電撃は、途中で鉄の剣に軌道を変えた。


 直撃すると身構えていたレルゲン以外の衛兵たちは、電撃が自分たちに直撃しなかったことに、驚きの表情を浮かべた。


「電撃が曲がった!?」


 ユニコーンは、軌道を変えた電撃に動揺を隠しきれず、少しの間だけ停止していた。

 知能の高い魔物は脅威だが、予測できない事態が起きると、少しの間固まる。


 先ほどのように回転刃を使えば、断頭する好機だったが、レルゲンは念動魔術を見られることを嫌う。


 レルゲンは右足を地面に突き刺し、剣を中段へと構える。

 今度は魔力で全身を包み込み、ユニコーンへ突進した。瞬間的に速度を上げられた体が、強烈な慣性で軋みを上げる。しかし、鍛え上げられた肉体が潰れることはなかった。


 ユニコーン以上の速度で、一瞬の隙に剣の間合いへ入る。


 ――横へ一閃。


 ユニコーンはレルゲンの突進から逃れようと距離を取ろうとするが、もう遅い。

 ユニコーンは斬られたことに気づくよりも速く、中段から振り抜かれた剣は音速を超えていた。


 振り切った剣が停止した衝撃が周囲に走り、爆発にも似た余波が広がっていく。

 一瞬の出来事に周囲からの歓声はなく、あるのは恐怖と驚きだけだった。


 そんな中、目を輝かせてレルゲンに走り寄ってくる影が一つ。

 金髪の彼女だ。


「今の一撃は何!? 音が遅れて聞こえたわ! 空から降ってきた剣もあなたの作戦よね!? 電撃が軌道を変えると知ってたってことよね!?」


 早口でまくし立てる金髪の彼女に、周りも個人差はあれど賞賛の言葉を送った。


「やるな兄ちゃん!」


 金髪の彼女が子供のように声を上げていたことを意識してか、恥ずかしがって頬を少し染めて顔を逸らす。


「まずはありがとう。礼を言うわ。私の名前は――」


 金髪の彼女が自己紹介を始めようとすると、待ったをかける人物が現れた。


「おっと嬢ちゃん、それ以上はいけねぇ」


「えっ、先生!? どうしてここに」


 質問に答えることはなく、大柄だが白髪交じりの無精ひげを生やした老人が、レルゲンの意識をすり抜けるように現れた。


 腰には細い剣を二本。

 今まで会ったどの剣士よりも、静かな気配を持つ老剣士。


「俺からも礼を言わせてくれ。ボウズが嬢ちゃんを助けてくれなきゃ、俺が出ることになっていた。それに」


 彼の耳元に寄って小さく囁く。


「─────────」


 緩みかけた空気が一瞬で緊張感に包まれる。

 上がっていた歓声は止み、レルゲンの近くにいた金髪の彼女も冷や汗を滲ませる。


 少しの沈黙を破ったのは、やはり白髪の剣士だった。


「怖いねぇ。まぁ、このことは老い先短い墓までもっていくからよ。──────────」


 とまたも耳元でレルゲンを煽り、金髪の彼女を連れて街へそそくさと引き返していった。

あとがき

ここまで読んで下さりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
クールなレルゲンが今後どのように活躍していくのかが気になりすぎすぎて、ブクマさせてもらいました! そして、巧みな言い回しにどうやったらこんなに綺麗な文章が書けるようになるのかと参考になるばかりです。…
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