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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【15万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第一部 絆の糸編

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4話 死人が出る前に

 衛士長と思わしき男性が、集まった皆に号令をかける。


「これから魔物調査に向かう! 魔物は数も種類も不明だが、魔力反応から二段階目までの強さは覚悟しておけ! ここからそう遠くない場所だ。気を引き締めるように!」


 街の大門が歯車の仕掛けで音を立てて開いてゆく。いざ行軍を開始するという時、レルゲンの背後から声がかけられた。


「あなたも調査に参加するの?」


「闘技大会がなくなると困るからな」


「そう、私もそんなところ」


 短い会話を遮るように、衛士長の号令がかかる。


「調査開始!」


 衛士長の号令と共に、一行は進軍を開始した。

 レルゲンは隊の後方、金髪の彼女はやや前方に配置されていた。


 報告にあった場所は、確かに街から目と鼻の先にあった。魔力濃度が異常に高いのは、誰の目にも明らかなほどだった。


 魔物とは、周囲の魔力が形を成した存在であり、強さは六段階で分類される。

 出発前に衛士長が説明していた二段階目までの魔物は、集まった人数だけでも対処が可能だ。


 レルゲンは様子を確認するのみで、二段階目の魔物が出てくるようであれば、動くつもりはなかった。


 一、二段階目の魔物なら、前にいる金髪の彼女だけでも十分に倒せるはず。

 しかし、レルゲンの思惑は大きく外れることになる。


 出現したのは四段階目のユニコーン。

 力はさほど高くはないが、知能と俊敏性、魔法も使用してくるという報告例もある。


 大型パーティなら倒せると思われがちだが、ユニコーンの大きさを考えると苦戦は避けられない。五段階目と互角に戦える手練れが、少人数で討伐する魔物なのだ。


 人間ほどの背丈しかなく、細くしなやかな身体つき。主な生息地は、魔力溢れる人間が近づかない緑豊かな “深域”。

 そして、ダンジョン奥地のトラップに引っかかったときに出現するような魔物だ。


 こんな魔力濃度が本来薄いはずの岩山地帯に自然に出現するのは、本来ならばありえない。

 岩陰に隠れてユニコーンの様子を伺う。


 暴れまわるタイプではないが、こちらが刺激を与えればその限りではない。

 副官と思わしき人物が、衛士長に耳打ちする。


「相手はユニコーンです。我々だけでは対処ができません」


「うむ。それはわかっている。だが、ここで撤退して街の住人や行商人に被害が出てからでは遅い……」


 衛士長はユニコーンに気づかれないように考えているようだが、金髪の彼女は具体的な作戦が出てこないだろうと思った。

 一度持ち場を離れることを隊長に告げ、後方に足を運ぶ。


「というわけで、手伝ってほしいの」


 レルゲンは、二つ返事で協力を承諾する。


「わかった、協力しよう」


 金髪の彼女が何度も瞬きをしながら、驚きの表情を浮かべた。


「え? 協力してくれるの?」


「君が申し出たんだろ」


「絶対断られると思った。なら、早速作戦を立てましょう」


「少し声の大きさを落とせ。ユニコーンは耳もいい」


 ちらっと金髪の彼女が目線を送ったが、幸い敵はまだこちらには気づいていない。

 ハンドサインを送り、二人だけの場所へ移動する。

 レルゲンが再び口を開く。


「あのユニコーン、ちょっとおかしいと思わないか?」


「何が?」


「ユニコーンが発見されてから、周囲の魔力が全く減ってない」


「言われてみれば……。こんな魔力が薄い環境で、周囲に散っていかないのはおかしいわ」


 無言でレルゲンが頷く。


「俺はこの場所に、魔力を固定する魔術がかけられていると考えている」


「……なんのために?」


「それは俺にもわからないが、ユニコーンが出現したにも関わらず、魔力濃度は未だ濃いままだ。可能性は薄いが、もう一体現れても不思議はない」


 金髪の彼女の表情に緊張が走り、一滴の汗が流れ落ちた。


「もう一体出たら、間違いなく死人が出るわ」


「そうだ。いくら俺や君が強かったとしても、この人数を守りながらの戦闘は無理だ。もう一体が出てくる前に、この空間自体を破壊する必要がある」


「簡単に言うけど、方法はあるの?」


「――ある」


 自信に満ちた表情のレルゲンを見て、金髪の彼女は半ば押し切られた。


「そう、なら信じる。結界については任せるわ。私は隊長にユニコーンを刺激しないように言ってくる」


「頼んだ」


「そういえば、この結界を……」


 結界を作った魔術師はどうするのかと、金髪の彼女が聞こうと振り返った時には、レルゲンの姿はもうなかった。


 ――どこ行った!?


 周囲を見渡すがレルゲンの姿はどこにもない。

 今は探しても仕方がない。

 気持ちを切り替えて、金髪の彼女は衛士長の元へと駆け足で向かい、作戦を伝えるべく動き出した。


 その時、レルゲンは空中にいた。

 下にいる衛兵たちが砂粒に見えるくらいの高さから、全体を俯瞰して観察していた。


 作戦を話し合った彼女に、まだ伝えてないことがある。そもそもユニコーンが自然に出現すること自体、ありえない確率なのだ。


 もう一体のユニコーンが出現する可能性について、金髪の彼女は疑問を持たなかったが、ユニコーンが“人為的に呼び出されている”可能性も考える必要がある。


 レルゲンが最悪の可能性を考えていると、やはりというべきか新しく大きな魔力を感じた。

 ここから更に岩山の向こう側に、二体目のユニコーンが出現していた。


「まだ衛兵たちとは距離がある。ついてるな」

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