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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【16万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第一部 絆の糸編

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25話 息抜きデートなのに、最初は鍛冶屋?

「ううん、私もさっき来たところ」


白いワンピースに茶系の帽子。

目には最近流行っていると噂されている日避け用の眼鏡をかけ、白いサンダルを身につけている。

普段は結ばれていた金色の髪が真っ直ぐに下され、いつもとはまるで装いが違った。


思わず見惚れてしまい、レルゲンは一瞬言葉に詰まってしまったが、すぐにかけなければいけない言葉がある。


「とても似合っている、綺麗だよ」


「そう? 時間をかけた甲斐があったわ。でもあなた、それいつもと同じ旅の格好はどうにかならなかったの?」


「すまない……街にふさわしい服を持っていなくてな。さすがに騎士服を着るわけにはいかず……」


レルゲンは本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

こうなるなら、セレスティアに相談しに行けば良かったかも知れない。


「まぁ、いいわ。それならあなたの服装を私が見繕ってあげましょう!」


「本当か……? それはありがたい」


「で、その大荷物はまた何?」


突っ込み所が多すぎて頭が痛いと言わんばかりに、マリーは額を抑えた。

レルゲンはここで挽回しなければと思い、鞄の中から念動魔術で驚かすための品を出す。


「それって……」


「そうだ、アシュラ・ハガマの尻尾にある増幅器代わりになっていた鉱石と、ユニコーンの角と魔石だ」


「なるほどね、それらを持ち込んで唯一無二の

装備を作ろうって訳か」


「そうだ。アシュラ・ハガマは武器として、ユニコーンは魔石を使って武器の核にしようと思う。残るはユニコーンの角と魔石一つだが、これはマリー。――君の防具か武器、もしくは装飾品を作って貰う予定だ」


思いの外喜ぶという感じではなく、マリーは冷静に分析を始める。


「武器はお母様から頂いた魔剣があるから間に合ってる。防具と装飾品だけど、ユニコーンの角だと装飾品がいいかしらね」


「そうだな。とりあえずこの大荷物を下ろしたいんだが、一番先に鍛冶屋に行ってもいいか?」


「しょうがないわね、じゃあまずは鍛冶屋。発注したらあなたの服を選びに行きましょう」


「俺の都合ばっかりですまない」


「本当よ。これじゃどっちが主なのか分からないわ」


呆れたように笑うマリー。

最初のやり取りをしくじったとレルゲンは思ったが、先を歩いて行くマリーの足取りは軽いように見えた。

何だか踊りの足捌きのような歩き方をしている。


思っていたほど機嫌は悪くない……のか? と、レルゲンは少し疑問に感じるが、これはあまり詮索しない方がいいと考えるのをやめる。


しばらく歩くと、鍛冶職人が集まる通りに着く。道の両端に店が並んでいるからか、気温が他と比べてとても高い。

一言で言うと暑い。

その熱気に顔をしかめたマリーが口を尖らせる。


「だからここは最後が良かったのよね」


と独り言を言っていたのを聞いてしまう。

レルゲンの身体から汗がじわじわと出てくる。これは暑いからだ。これは断じて冷や汗ではない。

暑い道を歩いていると、マリーが歩みを止める。くるっと振り返り、レルゲンへ微笑む。


「ここが私たちのお抱え鍛冶職人がいるお店よ」


「ここが……ここが?」


見たところ熱い窯も、剣を打つための槌なんかも置いていない。

あるのは剣と防具、それに装飾品のみが並んでいる。


「そうよ、中に入ってみれば分かるわ」


二人がおもむろに足を店へと伸ばす。

なるほど……地上階は商品の陳列だけで、工房は地下にあるというわけか。


マリーがお店の奥へと消える。


「ドライドおじさーん、マリーです。いますか?」


「おう! 思ったよりかなり早いじゃねーか! 久しぶりだなマリー嬢ちゃん! 元気そうで何よりだぜ」


「元気よ! おかげさまでね!」


まるで親戚の叔父に久しぶりに会ったような

様子でマリーが話し始める。職人もマリーをよく知っているようだ。


「それで、この兄ちゃんがマリー嬢ちゃんの言っていた依頼主かい?」


「そう、名前は……」


事前に出していた便りには、レルゲンの名前は書いていなかったようだ。

どうしようかとマリーが少し迷っていたが、レルゲンは自ら前に立ち、正直に自己紹介する。


「レルゲン・シュトーゲンだ。よろしく頼む」


右手を前に出す。


「ほぉ、『シュトーゲン』ねぇ……? まぁいいさ、こちらこそよろしく。俺はドライドだ」


ドライドも右手を出し、確かめるように握手をしてくる。


「……いい手だ」


一言レルゲンの手を褒めて、工房がある奥へと消える。

マリーと顔を見合わせるが、奥からすぐに声が聞こえてきた。


「何してんだ? 武具の発注に来たんだろう? さっさと来な」


あらかじめマリーから、ドライドについては聞かされていた。


「王国お抱えの職人はね、相手を見て仕事をするか決めているの。一見さんは基本お断り。だから私から便りを出しておいたわ。あなたなら大丈夫だとは思うけど、断られたら他のいいお店を紹介するわね」


――どうやらレルゲンは合格らしい。

すぐに工房の中へと足を運ぶ。

すると地下にしなければいけない理由がわかった。

とにかく窯が大きい。

職人の数も他の店とは段違いだ。


職人達の額には汗が滲み、煤けた皮膚が印象的で、その身体は上半身が発達した筋肉で覆われていた。

戦士特有の筋肉のつき方ではなく、重い物を日々持ち上げ続けた者特有の筋肉だった。


身体から流れる魔力はどの職人も同程度で、特段変わった様子はない。


すると、レルゲンの魔力感知に引っかかる剣が何本かあった。

その中でも一際強い魔力を感じるのは、職人専用の窯の奥にある箱に収められている剣だ。


これは後で聞いてみるとして、とりあえず案内された長机で用意した素材を職人に見せる。

拡大鏡のような物を片目につけて、鑑定をしているようだ。


「これは五段階目のアシュラ・ハガマ。こっちの角も五段階目のユニコーン亜種、そんでこっちがその魔石。面白い物を持ってきたな。これは全部レルゲンが倒したのか?」


「ユニコーンは単独だが、アシュラ・ハガマはマリーとハクロウもいた。こっちは単独とは言えないな」


「いいえ、このアシュラ・ハガマの尻尾を切断したのはレルゲンの剣よ。この素材に限って言えば、彼の単独と言っても申し分ないかと」


「マリー」


「いいのよ。手柄を横取りする気はないわ」


「そうか。大したもんだぜ、まだ若いってのに。

五段階目なんて滅多にお目にかかることも無い魔物だ。アシュラ・ハガマの尻尾なんて、その中でも中央ギルドのS級冒険者が持ち帰れるかどうかだ。それを鍛えられるとは、職人冥利に尽きるってもんよ」


鼻息が荒くなり、興奮気味のドライドに希望する武器の性能を伝える。


「希望通りの武器は作れる。だが、素材が素材だ……時間がかかる。こいつは終わったら嬢ちゃんに便りを出すとして、あとは装飾品だったな。どんな物がお望みだい? 耳、首、手首と色々あるが……」


ここでマリーがどんな物がいいか聞いてくる。


「俺のお勧めは首か手首だな、効果を複数付けやすいはずだ」


「――そういうことじゃない。私に似合う物を選んで欲しいのよ」


キッと目が怒っているのが眼鏡越しでも分かる。レルゲンは少し考えて、答えを出す。


「やっぱり首だな」


「何で」


まだ少し口調が荒いマリーを見て、レルゲンが言葉をかける。


「耳飾りも似合うだろうし、普段使いできる。

でも、耳に穴は開けてないんだろ? だったらそれは今後も大事にして欲しいな。腕はそれこそ戦闘中に外れる可能性もあるし、マリーにはあまり似合わないかも知れない――というよりイメージが湧かない。となると後は……」


「首飾りってことね」


ドライドの方にマリーが向き直る。


「首飾りにするわ」


「お、おうそうかいわかった。首飾りなら大体三日くらいで出来るぜ。マリー嬢ちゃんが取りに来るかい?」


「使いを送るからその時に」


「あいよ。時にレルゲン。マリー嬢ちゃんに随分と物を言えるんだな。流石は専属騎士だ――マリー嬢ちゃんも少し変わったかい? 前に見た時に似合わないなんて言われたら怒っていただろ」


「……? 確かにそうかも」


不思議そうにするマリー。

自分でも無意識だったようだ。

レルゲンが周りを見渡しながら、ドライドに話しかける。


「もう少しここを見ても良いか?」


「いいぜ、俺が案内してやるよ」


工房内を見て回り、気になっていた箱の近くの窯まで移動し、レルゲンが尋ねる。


「なぁドライド。あの箱の中身は何だ?」

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