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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【16万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第一部 絆の糸編

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24話 植物に囲まれた薬学研究所

「なるほど。それでセレス様は私に案内を申し出て下さったのですね」


「それもあります」


 もしマリーが案内役になっていたら、フィットの支援対象となるカノンと修羅場になる可能性があったのだ。


「他にもあるのですか?」


 ニコッと笑い、片目を閉じながら一言おどけて見せる。


「内緒です」


 マリーの命がかかっている以上、隠しごとは避けて欲しいのだが、屈託のない笑顔を見せられて、マリーには関係ないところにあると理解する。きっと個人的な事情だろう。


 それから少し歩くと、植物園のような全面ガラス張りのドーム状の建物が姿を見せる。


「驚きましたか?」


「ええ、ガラスのみの建物でここまで大きなものは初めて見ました」


 セレスティアが悪戯に成功したときの子供のような笑いを見せる。


「いい反応ですね」


 意外と柔らかいところもあるんだな――とレルゲンは思った。


「では、中に入りましょう」


「はい」


 中へ入ると栗色の髪に、目の下に深いクマを浮かべた女性が出迎えた。


「ようこそ、我が研究室へー」


 ここの受付か? と思いながらも、植物園の天窓を眺める。


「久しぶりですね、カノン。ちゃんと寝ていますか?」


 この方が第二王女……なのか?


「今日で四徹目だよ。セレス姉。朝寝ようとしたら『毒物だから至急成分を分析しろ』とか言ってきた影のせいでね」


 恐らくはもっと丁寧に頼み込んでいたのだろうが、四日も睡眠を取っていなければ、そう聞こえていても仕方ないだろう。


 申し訳なさそうにセレスティアが苦笑いをする。


「それは悪いことをしましたね」


「で、そこの彼は……おぉ、マリーのところの」


 レルゲンが素早く騎士礼を行い、自己紹介する。


「失礼致しました。私、新しくマリー殿下の専属騎士となりました。レルゲン・シュトーゲンでございます」


「うんうん、噂は聞いているよ。いやぁよく来たねぇ。植物くらいしか癒せるものはないが、ゆっくりしていってくれたまえ。それが終わったらぜひ私の研究を手伝ってくれるとありがたい」


 ここに来る前にセレスティアから聞いた内容から、カノンへの警戒心を高くしていた。

 だが、レルゲンは覇気のないこの少女を見ていると毒気が抜かれてしまった。


 少しの沈黙を見かねたセレスティアが、助け舟を出してくれた。


「それでカノン。分析結果はわかりましたか?」


「分かったよー、ばっちり。毒だと言われていたからね。その線で調べたらすぐだったよ。結果は黒――シアンの木の葉を乾燥させて粉状にしたものだったよ。主に速攻性の毒で、急性の中毒症状を起こして死に至る。控えめに言ってヤバい毒。どの国でも栽培を禁止しているのに、どこかで隠れてやっているんだろうね」


「やはりそうでしたか。それだけ聞ければ十分です。ご苦労様でした。ゆっくり休んで下さい」


「レルゲン君、また来ておくれよ」


 カノンに一礼し、セレスティアと共に研究所を後にする。

 研究室を出てから、セレスティアがレルゲンに問う。


「レルゲンから見て、カノンはどう見えましたか?」


「その気になればカノン王女は毒を精製できますし、植物園もある。疑う部分は多いですが、私にはカノン王女が黒幕と通じているとは思えませんでした」


「そうですか、あなたを連れてきて良かった」


 上機嫌そうに微笑むセレスティア。

 彼女の狙いは、カノンの潔白を示したかったのではないかと、レルゲンが理解するのはもう少し後のことだった。


 マリーに研究所での一件を説明したが、やたらセレスティアとの会話について掘り下げられた。


 しばらくはマリーの食事にはレルゲンが毒抜きの念動魔術をかけることになり、部屋の付近にも魔力糸を這わせることに同意を貰う。

 魔力糸について、マリーは最初は嫌がってはいたが、最終的には納得してくれた。


 次に警戒するべきは、毒殺ではなく直接の暗殺だ。真の黒幕がマリーの毒殺を失敗したと知れたとき、また次の一手を打ってくるだろう。


 しかし、常に気を張っていては身体ではなく心が疲弊する。

 そこで兼ねてより約束していた鍛冶屋、もとい街のぶらり旅をレルゲンが提案したのだった。


「いいわね! 私も振り回されてちょっと気分転換が必要だと思っていたのよ。今からだと陽がすぐ落ちちゃうだろうし、明日行きましょう!」


「あ、あぁ……わかった」


 マリーが予想していたよりかなり乗り気な反応をする。

 余程ストレスが溜まっていたのだろう。


 次の日、レルゲンは軽く朝食を済ませて、出かける準備をする。もしもの時のために剣を一本だけ背負い込み、待ち合わせに指定された噴水のある広場に足を運ぶ。


 マリーを驚かせる品物を鞄に詰め込むことも忘れなかった。


 約束の時間までまだ余裕があったはずだが、

 感知し慣れた魔力反応が待ち構えていた。


「お待たせ、マリー」

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