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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【16万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第一部 絆の糸編

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22話 毒殺の行方

皿の上に現れた毒を見て、魔力が大きく揺らいだ人物が一人。

足早に立ち去ろうとするメイドの一人を念動魔術で拘束する。


間に合ってよかったと安堵すると同時に、泣きながら許しを請う女に聞く。


「さて、事情があるなら話を聞こう」


「……私はフィット様に命じられてこの料理を運んできただけなのです! どうか……どうか信じてください……」


魔力糸をマリーに繋げ、糸電話の要領で思念を飛ばす。


『この子の言っていることは本当なの?』


『わからないが、魔力の揺らぎから嘘はついていないと思う。セレス様みたいに魔術の達人でもないだろうし』


『そう、ならいいわ。それよりも、セレス様ってどういうことよ。あなたたち、いつの間にそんな仲良くなったわけ?』


ここでレルゲンが魔力糸をマリーから離し、会話を切り上げる。

これ以上はマリーの機嫌を損ねるだけだ。

不機嫌そうにマリーが釘を刺す。


「後でしっかり説明してもらうから」


「御意に。そういえば、毒が入ってた料理は下げるよな。すまないが新しいものを頼みたい」


「いいえ、そのまま食べるわ」


「は? いやいや……これ、本当に毒だぞ。どんな毒かはわからないが」


「あら? 私の騎士様は自信がないの?」


さきほどの仕返しと言わんばかりの口調で、自分の命を盾にしてくる。

よほど頭にきていたのだろう。

だが、レルゲンはそれを良しとしなかった。


「自信はある。だが、これは俺が食べる」


「あっ! ちょっと!!」


魚を焼いた切り身を念動魔術で宙に浮かせ、口の中に飛び込ませる。

口の中に広がる脂は甘く、鼻先にいい香りが抜けていった。


王族の料理はこんなに美味いのか……と一瞬レルゲンは固まったが、すぐに飲み込む。

その様子をマリーが心配そうに覗き込んだ。


「大丈夫なの?」


「ああ、問題ない。この魚はしっかり毒抜きされている」


そんなに心配するなら食べるなんて言うなとレルゲンは思ったが、口にするとまた怒らせてしまうだろう。


「影部隊、今いるか?」


「はい、こちらに」


カーテンの影から音もなく、一人の人物が現れ、歩いて近づいてくる。

もしもの事態を想定して、あらかじめ女王からマリーの身辺警護について情報を開示してもらっていたのだ。


「まずは女王に報告を。それが済んだらこの毒を薬学研究所に持って行き、鑑定依頼を頼んできてほしい」


「かしこまりました」


再び闇に溶けるように消えたのを見てから、レルゲンが小さく息を吐き出した。

ここからは時間との勝負だ。


「マリー、フィットに話を聞く必要がある。奴の居場所はわかるか?」


「王宮の近くに屋敷があるけど、今どこにいるかまではわからないわ」


すぐに朝食を準備したメイドの方へ振り返り、同じ質問を投げかける。


「ご案内いたします。どうぞこちらへ」


「それだと遅い。情報がフィットに渡ると厄介だ。ちょっと失礼」


「えっ? ……きゃああああ!!!」


メイドの身体にも念動魔術をかけ、窓ガラスの外へ。

空中から探索すれば、最速でフィットの屋敷まで到着できる。


「急に空へ放り出されるのは怖いわよね」


と、マリーは苦笑する。空へ飛び出した二人は、すでに遥か彼方だった。


王国上空。

レルゲンとメイドの女は空を飛んでいた。


「どの方角だ?」


メイドが震えながらも辺りを見回し、現在の位置を把握する。しばらく下を見つめていると「あっ」と気づいたように声を漏らした。


「あの辺りか?」


「はい、方角的にはあちらになります」


「少し急ぐ。舌を噛まないように口を閉じてくれ」


「承知しました」


言葉にならない絶叫が、王国の朝にこだました。さらに速度を上げると、王宮ほどではないが大きな宮殿が見えてきた。


「あれか?」


「はい。あちらが、フィット様のお住まいになります」


「わかった、道案内ご苦労様。危険だから一度君を降ろす。位置が分かるように魔力糸を一本つけるが、構わないな?」


「はい。私がやったことを考えれば当然でございます」


レルゲンがメイドを地上に降ろし、魔力糸をつける。意図的に切られなければ、どこまでも伸び続け、追跡も容易だ。


「見つからないように隠れていてくれ。すぐに戻る」


フィットが住んでいる宮殿は思っていたより広い。これほどまでの広さは、魔力感知だけでは情報が足りない。


すぐに魔力感知を諦め、宮殿全体へ魔力糸を張り巡らせる。


魔力糸には実体がない。

やったことはない。だが、物体を透過することもまたできるはずだ。


無意識にメイドに魔力糸をつけて追跡できると思い込んでからは、この発想にも自然と辿り着く。


宮殿の入り口に立ち、魔力糸を蜘蛛の巣状に展開させ、外壁やガラスを透過していく。

先ほどの念話と同じように魔力と音を感知すると、一斉に声が聞こえて激しい痛みに襲われた。


レルゲンが顔をしかめながらも、探知に集中すると、集まっている場所だけに意識を向ける。


宮殿の内部では、やはり焦った声色で報告を待っている人物がいた。


「一体何をしている! 報告はまだか!」


「……申し訳ございません」


その他のメイドもいたが、間違いなくこの声がフィットだろう。

レルゲンが一息吐き、会った瞬間に斬りかからないよう、一度思考を落ち着ける。

突入しようとしたが、興味深い話をフィットが漏らしていた。


「これだけ失敗しているのだ! 今度また失敗したら“あのお方”からどんな制裁を課されるのか!

お前ら! 想像したことがあるか!?」


使用人が黙ってフィットの叱責を受ける。

ここでレルゲンが高速で移動し、宮殿の内部に侵入した。

フィットのいる部屋まで最短で向かい、扉をノックする。


待ちわびたように、明るいフィットの声が返ってきた。


「やったのか!」


「あぁ、やったよ――お前が手配した料理の毒抜きをな」

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