194話 二度目の邂逅
魔王軍幹部候補のフィルネルを討ち倒し、上を目指して階段を一歩ずつ進んでいくと、何もない大広間に抜けた。
「ずいぶんと広い部屋だな」
セレスティアは部屋の装飾を見て、中央王国のどこかで見たことがある場所だと感じた。
「そうですね。この部屋は……やはりパーティで使われるような部屋でしょうか?」
「確かに、飾ってある石像やカーテン。窓の大きさなど、似ている点は多い気がします」
ディシアも中央王国での生活は長くないものの、よく王国内を散歩していた経験からセレスティアの言葉を肯定し、全体を眺める。
すると、一人の女性のような見た目のドレスを身に纏った者が、音もなく目の前に現れた。
「……!!」
セレスティアやレルゲンの魔力感知を簡単にすり抜けた隠蔽魔術の精度は、その者の強さの格を象徴していた。
「よくここまで辿り着いたわね! レルゲンと勇者諸君。まさかジャックまで倒してしまうなんてちょっと驚いたわ? それに倒したのはレルゲンではなく金髪のあなた――マリー、だったかしら? どんなカラクリを使ったのか気になるわ」
マリーは真っ向勝負でジャックを討ち倒した事実をまるで信じていないヴァネッサを睨みつける。
「レルゲン。あの女、私がやってもいい?」
「さっきの傷もまだ完全には癒えていないだろう――少し抑えてくれ。今回は俺がやる、お前もそのつもりなんだろう? 魔王軍幹部のヴァネッサ」
「あら? そっちから来てくれるなんて……! やっぱり私たち、相性がいいわ」
上機嫌な笑みを見せるヴァネッサに、レルゲンは小さく顔をしかめる。
レルゲンを横目で見たセレスティアは、一本前へ出て神杖を地面に突いて宣言する。
「私も戦います。最近は皆さんの戦いをずっと見ていましたから」
「――わかった。ダンジョンの時にやった掃討戦を思い出してくれ」
「どうせなら全員でいらっしゃいな? あなたたちがどんなに強くなっていようが、私を討ち取れるとは思えない。まさかとは思うけど、私のこと――舐めているわけじゃないわよね?」
ヴァネッサの言葉から発せられる圧で、空気が一瞬にして冷たくなる。
室内であるにも関わらず、窓が内側から小刻みに揺れた。
「まさか……! 魔王軍の幹部と戦うんだ。アンタの再生力は俺たち二人と相性がいいってだけさ」
「あらそう? 相性がいいなんて言われたのは初めてだわ。一度戦ってまだ生きているんですもの――期待させて貰うわ?」
「その期待――後悔しないことですね」
セレスティアの言葉に、ヴァネッサは煽り返す。
「私より強い相手に会えるなら後悔なんて全くないわ。むしろ会ってみたいわ? そんな王子様に。あなたがなってくれるのかしら……! レルゲン?」
「――絶対に断る」
会話を切り上げ、レルゲンがヴァネッサに向けて走り込み、二度目の勝負が始まった。
手には炎剣を持ち、始めからブルーフレイムを刀身に流し込む。
青く光る刀身は、躱そうとしたヴァネッサのドレスを軽く焼いた。
「ふぅん……? この勝負服、結構気に入ってたのに酷いわね」
「そんなに大事なら着てくるな」
後ろへ跳んだヴァネッサを追うようにレルゲンが踏み込む。しかし、その動きよりも速くセレスティアの魔術が横を抜けていった。
火の上位魔術がヴァネッサに襲いかかるが、振り上げられた手から取り出した両手剣を握り、器用に魔法を斬り伏せた。
「魔術を斬ったのか」
魔法を斬るという発想自体がレルゲンにはなかった。しかし、実際に目の当たりにすると、それまでの常識がひっくり返る。
「やったことがないの? 魔法斬りは剣士の嗜みよ――私は本来、剣士ですらないのにできるのだから」
「今までは機会がなかったからな。それに、今ので落ち込むセレスじゃないぞ」
――単一の魔術ではどの系統の魔術を使っても恐らく防がれる。ならばどうすればいい?
セレスティアが、殻を破る時が来た。
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スピンオフ短編もあります!
「悲恋の掌握者、ディシアは自分の足で歩いていく」
第二部から登場するディシア・オルテンシアの幼少期のお話になります。




