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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【19万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第三部 魔界突入編

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190話 まだ俺名乗ってないんだけどなぁ!!

「最初から厄介な奴が出てきたな。こちらが常に魔術を発動し続けることを強いてきたか」


「先に叩くにしても相手の位置がわからないことには、こちらから攻めようがありませんね」


 ディシアの言う通り、初めての城攻めというのもあるが、敵側に圧倒的な地の利がある以上、迂闊に念動魔術の発動を止められない。


 今のレルゲンの技量であれば、矢避けの念動魔術を張り続けることにストレスはほぼないといっていい。消費した魔力も魔界という環境ではすぐに補われる。


 矢避けの念動魔術に関しては、常時発動しておくことでメリット以外はないと思われたが、これは大きな間違いだ。

 この「ほぼ無いに等しい」というのは、言ってしまえばノーリスクに近いだけで、小さな綻びは常に存在する。


 気づかない内に神経が擦り減ることや、魔力が減少する事実は変わらない。

 特に魔術発動において発動し続けるという行為は、後々の魔術行使に影響を与える一番の原因となり得る。


 一日中得意なことはできても、何日も繰り返せばそれは苦痛に感じるのと同義だ。

 神経をすり減らし続け、少しずつ表に現れ難いダメージを蓄積させるのが、この声の主の狙いだ。


 ――レルゲンもそれには気づいている。

 しかし、だからといって矢避けの念動魔術の発動を解除することはできない。

 狙撃手の排除が急務だが、相手と自分たちの我慢比べが始まろうとしていた。


「なるべく早く狙撃手を倒したいが、魔力探知の中に入ってまで攻撃してくることはないだろうな」


「分の悪い勝負ね。私が交代で矢避けの念動魔術を使えればよかったのに」


「矢避けはちょっとコツがいる――全員分となると今から習得しようとしてもどこかに穴ができる。申し出だけでもありがたいよ、マリー」


「でも敵の狙いは私だけじゃないですか? 最初とさっきも正確に私に弾が飛んできてますし」


 召子が言いたいのは、自分にだけ念動魔術をかければ、負担をその分減らせるのではないかという点にある。上手くいけば長期戦になったとしても問題はないはずだと――そう考えていた。


 だが、レルゲンはこの申し出に首を振り、やはり全員分に矢避けの念動魔術をかけると決意する。


「いや、二発のみで敵の癖を決めつけるのは危険だ。召子への攻撃は俺たちの思考を誘導するためのものかもしれない。狙撃手を排除するまでは今の状態をキープする必要がある気がする」


 どうにかして皆がレルゲンの負担を減らそうと考えを巡らせてはいたが、なるべく一箇所に止まらないように心掛け、着弾回数を減らす方向で話がまとまる。


「ここはまだ入ってからすぐの下層だと思う。クラリスやジャックのような幹部はもっと上にいるはずだ――急ごう」


 赤いカーペットが敷かれた階段を登っていくと、待ち構えている魔力があるとセレスティアが警戒を促す。


「……数は?」


「一つです。隠蔽魔術の痕跡も感じられませんし、罠ではないと思います」


 いつの間にか隠蔽魔術を温度感知による看破以外でも把握できるセレスティアに舌を巻きながらも、複合魔術の心得を掴んだ今ならできるようになっても不思議はない。


「わかった、敵であることは変わらない。一気に叩いてしまおう」


「「了解」」


 各々が武装を解放して階段を更に登っていく。

 すると、一人の悪魔がニッと笑いながらレルゲンたちを待ち構えていた。


「よく来たな勇者一行よ! 最初の弾丸で正直死んだと思ったが、誰一人欠けることなくここまで来たことに敬意を払い、名乗らせてもらう!!」


 大きく息を吸い直し、悪魔は続けた。


「我が名は……!」


 相手が喋り終わる前にレルゲンが氷華に魔力を込めて、一本の線を描くようにカーペットを這い、凍らせながら突き進んでいく。

 足元から凍らされた一人の悪魔は「まだ俺名乗ってないんだけどなぁ!?」と抗議の声を上げながら全身が凍ってしまう。


 しかし、レルゲンが追撃するよりも早く悪魔は魔力を急激に高めて氷の塊から脱出する。


「おい君! こっちはここまで来た君たち全員と正々堂々と勝負をしようと張り切って待っていたというのに、この仕打ちはあんまりじゃないか?」


「お前ら悪魔の都合など知ったことか――そもそも敵の言葉を信じるわけないだろう」


「んー? ……それもそうだな。だが今の攻撃、かなり手加減していたな? もっと殺す気で来ていいぞ。この魔王軍幹部候補であるフィルネル様と戦うならな!」


 幹部候補と聞いてレルゲンが一本前に出るが、それよりも先に前に出たのはマリーと召子だった。

 特にマリーは単独でジャックのリヴァート・ベスティア――つまり獣化を退けているだけに自信に満ち溢れていた。


 フィルネルはマリーの剣から漏れ出る白い光を見てわずかに目を細めたが、すぐに構え直す。


「そこの綺麗なお嬢さんたちが相手かい?」


「褒めても手加減してあげないから」


「フェン君! アビィちゃん! 準備はいいよね?」


 一匹と一羽が鳴き声を上げながら駆け出し、肉薄しようとする召子の真後ろへつく。

読んで下さってありがとうございます!

もし続きが気になりましたら、ブックマーク、評価をお願いします!

ぜひ皆さんで作品を盛り上げて下さいね!

よろしくお願いしますー!


スピンオフ短編もあります!

「悲恋の掌握者、ディシアは自分の足で歩いていく」

第二部から登場するディシア・オルテンシアの幼少期のお話になります。

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