表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【19万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第三部 魔界突入編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

186/213

186話 必殺の念

 ジャックはマリーの声には答えない。

 考えているのは目の前の障害を潰してレルゲンに最後の一撃をどうやって入れるか。


 マリーはただ静かに神剣を構える。


 ジャックが再び四本の足を活かした神速の駆け足で、マリーの狙いを逸らそうと撹乱する動きを見せた。


 ――目で追おうとしても間に合わない、魔力で追っても完璧に隠されているからこれも無理。

 なら、この方法しか……ない!


 マリーはゆっくりと瞼を閉じる。


 諦めたと感じたジャックはマリーの顔面を引き裂かんと一気に距離を詰めた。

 ジャックの爪が迫る。

 しかしマリーはまだ目を閉じたまま動かない。


「終わりだ、女」


 振り上げられた前足がマリーの顔面に向かう。

 肌に触れるその瞬間――神剣が爪の軌道上に乗り、火花を散らして防いだ。


 目を閉じたままのマリーがどうやって攻撃を防いだのか、全員がわからなかったがジャックはすぐに距離を取り直して再びマリーに襲いかかる。


 今度は爪ではなく速度に物を言わせた、レルゲンを戦闘不能にした一撃を浴びせようと瞬く間に音速を超えた。

 目で追うのはまず無理。それでも不安感から目で追いたくなる気持ちをグッと堪えて、マリーは瞼を閉じ続ける。


 今度こそ最後の一撃と決めて放たれた突進攻撃は、足と神剣に魔力を瞬間的に込められたマリーが、今度も完璧に防ぎ切った。


 勢いの強さによって踏ん張った足が触れていた地面が線を引くように抉られ、強い衝撃がマリーの全身を痺れさせる。

 一度ならず、二度までも自慢の攻撃を防がれたジャックは静かに口にした。


「どういうことだ――なぜ防げる」


「いいわ、教えてあげる」


 ゆっくりと目を開いたマリーの目は自信に満ちていた。その表情を見たジャックは、いずれも偶然ではなく完璧に読まれて防がれていたと自覚した。


 マリーが得意げに語り始める。


「あなた、今のやり取りよりも前からずっと、毎回必殺の一撃のつもりで撃っているでしょ?」


「それが何だ、攻撃するなら殺す。何がおかしい」


「そう、あなたにとってはそれが当たり前。だからそれを利用させてもらったわ」


「何を言っている……そんなこと……っ! なるほどな」


「気づいたようね。私はあなたの気持ちを感じ取って攻撃を防いだ。簡単ではないけれど、それほどまでに、あなたの念は濃いのよ」


「馬鹿な、それが可能なのは俺たち魔王軍でも極一部。ましてやあの『ムカつくメイド』くらいなもんのはず。お前程度ができるはずがない」


「でも実際にあなたの攻撃はそれで防げた。それが真実よ」


「種明かしが早かったな。それを聞いた後で俺が毎回必殺の念で打つと思うか?」


「いいえ、あなたが何年生きているかは知らないけど、それが可能になるまでに膨大な時間がきっと流れている。癖っていうのは簡単には変えられないものよ――それに」


 マリーは大きく伸びをしながら片目を閉じてジャックを見つめる。


「仮にそれができたとしても、必殺の一撃を撃つつもりがないあなたの攻撃を喰らった所で、あそこで寝ている旦那のようにはならないわ。きっとね」


「この女……」


 完全に場の空気をマリーが支配しているのを感じ取ったレルゲンは、大人しく治療の続きを受けると決めた。


 今のマリーなら、獣化したジャックが相手でも問題ない。腰を落ち着けたレルゲンを見て、セレスティアは一刻も早く傷を完全回復させようと、込める魔力を上げてゆく。


 既に回復薬の瓶は空。

 セレスティアとアビィの回復魔術が重ね掛けられていたとしても、回復に時間が要する程にジャックの攻撃は深かった。


 ジャックはレルゲンに止めを刺すよりも、マリーをどう倒すかに全思考を傾けた。


 ジャックは思念の強さも原因だろうが、それでも動きが直線的過ぎたと振り返る。

 一歩、また一歩と空中へと歩みを進める。二次元的な動きから、上下の動きを加えた三次元的な動きに変更するため。


 まるでフェンが身につけている装飾品の、天歩の加護にも似た方法で空中に歩く様は、見えない階段を登っているかのようだった。


 再び神剣を構え直したマリーは両目を閉じて意識を集中する。

 今度も必殺の念を込めて、マリーが反応できる限界のその先に行こうと、ジャックが全力の速度で上下左右、前後に至るまで高速で動いて撹乱を始めた。


 幾重にも分身して見えるほど素早い歩法で、ジャックはガラ空きに見えるマリーの背中に回り込み、今度は右足を狙い機動力を削ごうとする一撃を構えた。


 しかし、これもジャックが狙いを変更できない位置まで引きつけてから身体を回転させて神剣で防ぎ切る。


 完全に動きが読まれているのならば、ついて来れないほどに連続で攻撃を仕掛ければいいだけ――とジャックの思考はシンプルだった。


「ガアァァア!」


 攻撃と撹乱を同時に繰り出すその動きに対応するため、神剣を指二本分だけ短く持ち直して取り回しの速度を上げる。


 しかし、レルゲンは気づいていた。

 対応するマリーの速度がどんどんと上がっていってることに。


 マリーは連続剣の加護で自身の速度や破壊力を加護の発動中は際限なく上げることができる。

 だが、発動するためには相手に攻撃を仕掛ける必要がある。


 なぜ、受けているだけのマリーが連続剣の加護を発動できているかレルゲンにはわからなかったが、発動していることだけは揺るぎない事実だった。


 無意識的にマリーは連続剣の加護を発動し、一撃、また一撃とジャックの攻撃を受けていき、攻撃の糸口を探していた。


 ――これはジャックに対する攻撃の一環。

 次第に受けるだけではなく、カウンターに入ろうとする意識が見え隠れする。


 ジャックもマリーが加速していく攻防一体の構えに攻めあぐねていた。

 ここで引けば致命的なものを失う。そんな予感からか、ジャックは攻撃の手を緩めない。


 マリーの連続剣の加護が効果を強め、遂にジャックの必殺の一撃を神剣ではなく、左右移動により躱し、裂帛の気合いと共に全力のカウンターを放った。


「やぁぁあああああ!!!」

読んで下さってありがとうございます!

もし続きが気になりましたら、ブックマーク、評価をお願いします!

ぜひ皆さんで作品を盛り上げて下さいね!

よろしくお願いしますー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ