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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【19万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第三部 魔界突入編

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182/213

182話 最高幹部の一人、ジャック

 音もなく地下へ侵入し、セレスティアとレルゲンの魔力感知をすり抜け、アッシュの背後に立つ者が一人。

 その影は一言も発さずにアッシュの背中から胸を貫き、心臓を鷲掴みにした。


「き、さまっ……! ジャック……!!」


「あ? テメェはいつから俺と対等に口を聞けるまで偉くなったんだ?」


 苛立ちを隠さないジャックは更に深く腕を突っ込み、アッシュが口から血を流しながらも貫通しているジャックの腕を掴む。


「気安く触ってんじゃねぇよ」


 心臓を握り潰され、ジャックを掴んでいたアッシュの腕が力無く落ちる。

 貫いていた腕を力づくで引き抜き、付いていた血を払う。そしてそのまま間髪入れずに手から高出力の核撃を容赦なく撃ち込んだ。


 既にアッシュの身体は核撃を受ける間も無く崩壊を始めていたが、それでも止めを刺す一撃が放たれ、レルゲンの一言によって現実を歪める。


「――戻れ!」


 放たれた核撃はアッシュの身体を飲み込む寸前に軌道を大きく変え、ジャックへ一直線に突き進む。ジャックは一瞬目を細め、左腕で顔を覆うように自身の核撃を防ぐと、大きな爆発と共に煙が覆った。


「なんだ? 今のは……? テメェか、俺の一撃を曲げたのはよ」


 ジャックの言葉を無視して、レルゲンはアッシュが完全な塵となり消えていく様を見届けていた。


「そいつは俺たち魔王軍の裏切り者だ。死にかけのそいつをなぜお前が庇う必要がある?」


「――敵だからだ」


 それを聞いたジャックは、レルゲンを「訳の分からないことを言う頭のおかしな奴」と認識し、これ以上の問答は無用と会話を切り上げる。今はただ、ジャックは目の前の敵に集中するべく、地上へと降りた。


「ヴァフ!」


 フェンが激しく吠える。ジャックは懐かしむように優しい眼差しを送ったかと思えば、圧の乗った低い声を静かに放った。


「――黙れ、犬」


 周囲の大気が震えるような声は、魔力でも込められているかのように全員の肌を震わせた。


 地面に降りた瞬間――ジャックの姿が音もなく消える、完全に音を置き去りにした移動は、衝撃波と共に召子の背後を取った。


「じゃあな、勇者」


「……っ!」


 完全に背後を取られた召子が振り返り、聖剣で防ごうとしたが間に合わない。


 ――やられる……!


 召子が死を覚悟した瞬間、ジャックと召子との間に割って入る者が一人。

 繰り出された手刀を黒龍の剣で防ぎ、地面が軽く抉れる。


「お前がヴァネッサの言ってた野郎か」


「そう簡単に俺の仲間を殺せると思うなよ」


「ハッ! いいじゃねぇか! 俺の速度に追いつけるやつなんざ魔王様の他にはお前くらいだ。ヴァネッサの馬鹿が言っていた推薦人もテメェだろ? だが、一応は聞いておくぜ。コイツらを皆殺しにして、魔王軍に入るつもりはないか? ないよな?」


「あぁ、微塵も欠片もないな。俺たちはお前らの大好きな魔王を討ちに来たんだ」


「――ハハハハハ! いいぜ、そうこなくちゃならねぇ。目標変更だ。女の勇者は後で殺すとして、まずお前から引き裂いてやる」


「やってみろよ」


 瞬間、二人の姿が消える。

 ジャックは元々持っている俊敏性で音速を超えると、レルゲンも念動魔術を全身にかけて音の壁を超える。

 魔力反応が空中に移動していることに気づいたセレスティアは、暗い天井を見つめた。


 ――魔力反応でしか二人を追うことが出来ない……! あのジャックという者、隠蔽魔術を常時かけているとでもいうレベルで魔力を感知できない……!


 目視のみの戦いを強いられたレルゲンは、音速を遥かに超えるジャックの動きを目で追ってから身体を動かすという、一瞬遅い対処を強いられていた。

 そして、ジャックは腕と足が獣のそれに近く、両手両足が剣と間違えそうになるほどの強度を誇っていた。


 ――間合いは腕と足の長さ、やり辛いが慣れてみせる。


「お前、まだ俺のことを目で追ってから動いているな?」


「だからどうした」


「やっぱりな――お前、速さはそこそこあるようだが、普段からそんな速度で動き続けたことがないことが透けて見えるぞ。さっさとこの速度に慣れろ。後一合やり合ってできなければ殺す」


 ――もっと意識を並行にしろ。奴にはない俺だけの武器を活かせ。


 再び二人が消え、ジャックの動きについていく。そして宣言通り一合打ち合ってから、更に速度を上げたジャックはレルゲンの背後に回り込んだ。アッシュに止めを刺した時と同じ手刀の突き技で襲いかかった。


 レルゲンはまだ振り返らない。

 しかし、浮遊剣にしていた炎剣がジャックとの間に割って入り、手刀を完璧に防御した。

 防がれたことに驚くよりも、不思議な方法で止められた事実に嬉しさが勝り、ジャックの口角が上がる。


「面白い奴だ! いいぞ、まだ楽しめそうじゃねぇか……!!」

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