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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【19万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第三部 魔界突入編

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178/213

178話 魔王会議

 ◇◇◇◇


 雷鳴が轟く積乱雲に囲まれた、雲を突き抜けるほど大きい城の中で、悪魔たちによる話し合いが行われていた。


「先日、幹部のヴァネッサ様が奴隷市を開催した際に現れた乱入者ですが、魔力の質から以前にも観測されていたイビル・ラプトル騒ぎと酷似しております。まずは、技術担当のアンデル様より、報告を怠った経緯のご説明から始めて頂きますが、よろしいでしょうか?」


「まずはご報告が遅れた件につきまして、魔王様に謝罪を。それと魔力の件ですが、元来勇者とは聖剣を精霊から与えられた異界からの転生者でございます。前回の勇者と同じならば、魔力を全く持たないのが勇者です。では勇者ではないなら、わざわざ魔王様にご報告を差し上げる必要もないと判断し、今に至ります」


「……」


 魔王と呼ばれた者は、謝罪の言葉にはあまり興味が無さそうに、外へ視線を向けていた。

 アンデルは返事のない魔王に疑問を感じてはいたが、そのまま報告を続ける。


「しかし、ヴァネッサが対峙した時に更に上の力を隠していたことを観測し、軍の幹部よりも高い魔力量を有していることが判明しました。そのため、勇者以外の新たな脅威となり得ると判断し、今回はご報告させて頂きました」


「……そう、わかった。ヴァネッサはその魔力の持ち主と戦ってみてどうだった?」


「はい。彼の魔力量は絶大で、こちらが完全防御をしてもその魔力量で若干上回ってくるほどでした。私はきたる勇者との戦いの際に戦力となると考え、魔王軍に勧誘――もとい攫うつもりでしたが、彼は自ら『上の世界』に気づき、戦いの中で成長し、私を超えようとしていました。しかし、確かに脅威ではあるのですが、まだ発展途上そのものでした――伸び代はあると感じていますが、それよりも……」


 口籠るヴァネッサを集められた全員が怪訝な表情で見つめていると、不確定ながらも報告を続け始める。


「私はその主よりも、もっと世界の核心に近づいていると感じた者がおりました。最後に戦った女のエルフです。魔力は私たち幹部の魔力とは比べ物にならないほど小さく、攻撃も遅い。ですが、受けを間違えれば再起不能になるような不安感を私に与え続け、こちらも私に合わせて強くなっていくような不思議な敵でした。私はこれ以上そのエルフが強くなってしまうのを危惧し、撤退という情けない判断に至りました。処罰はいかようにも」


「へぇ、君のような強者が押されるなんて随分と珍しい敵だったようだね……? 武器は何を使っていた?」


「両手で扱う程に刀身の幅が太い剣でしたが、それが何か?」


「もしかしたら勇者の聖剣によるものかもしれないと考えたけど――魔力を持つエルフなら、その線は薄そうだね」


 ここで魔王の話が終わった後に不機嫌そうにため息をつく男が一人。魔王を真っ直ぐ見つめた。


「どうしたジャック? 何か意見があるのかい?」


「俺はそこの胡散臭い科学者よりもヴァネッサ、てめぇに言いたいことがある。どうしてその発展途上の奴を最初から奥の手を使って殺してこなかった?」


「私は元より彼をこちら側に引き入れるための戦いをしたの。本当にこちら側にこないと判断したらさっさと首を落としているわ」


「ふざけてんじゃねぇぞ――その甘さが、俺たちに届くまで強くなる理由になったらどうするんだって言ってんだよ。なぁ、今の俺たちはそこまで勇者に対して戦力が不足しているのか? 違うだろ? この広い魔界の中で、魔力量だけでも俺たちを上回っている奴が急に現れる方が不自然だと何故考えない?」


「それはそうだけど……あなたは彼が勇者の一派だと言いたいわけ?」


「そいつが勇者の仲間だろうが関係ねぇ! どちらにせよ俺たちに盾突いたんだ。殺すには十分な理由だろうがよ」


 二人が舌戦を繰り広げて熱くなっていくと、魔王は嫌気が差したのか一度だけため息を溢す。


「はぁ……」


「「……!!」」


 声にもならない吐き出された息が、大気を震わせ、用意された食器や窓に次々と亀裂が入る。

 言い争いに近い二人は魔王の息遣いに押されるように黙り、口をつぐんだ。

 すると、魔王は優しく微笑み、一度だけ手を叩く。


「よし、今日の会議はこれでおしまいにしよう。みんなまだ思うところがあるだろうけど、まずはその魔力の主がまた勧誘を断るなら殺す。話に出てきたエルフの女は見つけ次第殺す。これが結論――いいね?」


 誰も反論することはなく、再び魔王は不敵な笑みを浮かべた。

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