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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【19万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第三部 魔界突入編

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176話 あなたに勝ちます

 ――奴の異様な余裕はなんだ? まるで見下ろされているような……


「何となくは気づいているようね? でも私の口からは教えてあげない。教えられて気づくのと、自分で気づくのは全然強くなり方が違うの。私はあなたがこんな所で足踏みして欲しくない。早く上まで上がってらっしゃいな」


「何をごちゃごちゃ言っている……!」


「だから自分で気づくまでは何度でも相手になってあげるわ。あなたを連れ帰った後でね」


 自分勝手な物言いをするヴァネッサに苛立ちを隠せなかったのは、マリーとセレスティアだった。レルゲンの両側に立ち、武器を構えた。


「ずいぶんとウチの夫を気に入っているようだけど、そんな簡単に渡すと思ってるの?」


「冗談もそこまでいくと不愉快ですね」


 二人とも神と名のつく武器に魔力を通すと、白い輝きを放ちながら命令を今か今かと待ち望んでいた。


「それは聖属性の武器ね。坊やよりあなたたちの方がまだ真髄に近いのかも」


「真髄……?」


「何を訳の分からないことを……!」


 マリーが白い輝きを放つ神剣を上段に構えてから振り抜くと、ヴァネッサは余裕たっぷりに片手で受け止めようと右腕を頭の上に構える。

 マリーは受け止めようとした腕ごと絶対切断の加護を使って斬り込んでみせると、気合いの声を剣を振る途中から上げる。


「やぁぁぁあああ!!」


 声が響くと同時に神剣の輝きがより一層増し、ヴァネッサに襲いかかる。

 白い輝きの変化に寸前で気づいたヴァネッサは受け止めることを中断し、後方に飛んで回避した。


 ――あのまま接触すれば間違いなく斬られていたわね……! 私が押し負けるなんて!


 マリーを賞賛するのも束の間、今度はセレスティアの大質量の氷の塊が上空から降ってくる。

 氷の外側を白い輝きが薄く覆いながらヴァネッサへ押し寄せるが、これも砕こうと考えたが素直に避ける。


 大きな土煙が上がり、天井はセレスティアの攻撃で完全に破壊され、ぽっかりと穴が空いて風が吹き抜けている。


 レルゲンはマリーとセレスティアの攻撃がなぜヴァネッサに通じると思ったのか考えていた。


 ――マリーの剣を、セレスの魔術をなぜ途中で避けようと行動を変えた? そんなの決まっている。俺が仕掛けた攻撃よりも有効打になると判断したからだ。なぜ俺より少ない魔力量で構成された攻撃が、俺よりも有効打になると判断したかが重要になるはず……もしかすると、前にも何度か経験のあったあの……


 考えの整理がついたレルゲンは、試しに黒龍の剣に通常通り魔力を込めて上体を低くする。


「お前を斬る……!」


 放たれた言葉と覚悟が呼応するように剣へと伝わり、剣が僅かに震え出す。


 完全にマリーとセレスティアに注意が向いていたヴァネッサは、明らかに纏う雰囲気が変わったレルゲンの遠距離からの一撃に反応して寸前の所で避ける。


 先程まで全力の魔力解放をしてようやく傷を負わせていた時に比べれば、間違いなく魔力量は遠く及ばない。


 しかしヴァネッサは攻撃を受け止めるのではなく、躱す手段を取った。


 この反応を見てレルゲンは予想から確信へ変わり、思わず笑みが溢れる。


「――避けたな」


「この娘達の攻撃を見て、もうきっかけを掴んだのね! あなたのこと、ますます欲しくなっちゃう!!」


「誰がお前になどついていくか」


 再び三対一の数的有利の状況でヴァネッサを追い詰め始めると、レルゲンたちは攻撃の手を加速させる。


 傍から見ていた召子は、いつでも戦闘に参加できる状態で待機し、異様な雰囲気を纏いながら戦う四人を見ていたが、何故か自分の足が前に進まなかった。


 それほどまでに意思のぶつかり合いを繰り広げている攻防に参加できると、レルゲンたちに加勢できると思えなかったのだ。


 ――まだ『今の私』ではこの戦闘に参加する資格がない……! でも、なんでそう思うのかが分からない……!


 加勢したい気持ちはある。それでも足は前に進まない。


 ステータスによる単純なレベル差かとも思ったが、先ほどのレルゲンが見せた『何でもないただの遠距離攻撃』を躱したヴァネッサが頭をよぎる。これも違うと頭を振って頭をリセットする。


 何故自分は参戦できずに、単純な総合戦闘力とでも言い換えられる物差しでは測れない攻防が繰り広げられているのか?

 それは間違いなく元一般人である自分と、最初から戦士だった者との差。そこまでは召子にも理解できていた。


 圧倒的に足りないのは何かを成し遂げたいと思えること。

 ここで魔界に来る直前にクロノと戦い、そして一度は心が折れかけた時にメテオラでレルゲンに勇気付けられて宣言した時を思い出す。


 あの時は温かく、かつ無限に力が湧いてくるような気持ちになった、誰かを護りたいという意思。今でこそ拮抗している両者だが、いつまでこの状態が続くのかは分からない。


 ――私が入る事で、三人の連携が崩れてしまうかもしれない。でも……! ここでやらなきゃ私はきっとこの先戦えない。レルゲンさんたちの後ろで終わるのをただ待つだけになるかもしれない……! だから、私は今ここで……! 


 ――あなたに勝ちます。ヴァネッサ・ヴァロネッサ。


 召子がヴァネッサを見つめ、聖剣を構えて駆け出した。

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