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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【19万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第三部 魔界突入編

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170話 夫の誇り

 ――さて、どうやって相手をする?


 レルゲンが思考を走らせていると、マリーと召子が雌の凍刃龍を相手にすると前に出た。


「手負いの方はレルゲンに任せるわ。雌の方なら私と召子、フェンがいれば足止めはできるはず。終わった後はじっくり雌を討伐すればいいわ」


「わかった。手負いの雄は任せてくれ。セレスも雌の方の足止めを頼みたい」


「承知しました」


 凍刃龍の雌がゆっくりと歩き、二頭同時に氷のつぶてのブレスの構えを取る。

 放たれたブレスは一本の太い線となり、溶け合うように襲いかかる。


 マリーと召子、そしてレルゲンの単独で左右に回避して分断されるが、元々そのつもりだったレルゲンたちにとって関係ない。


 手負いの雄と睨み合いが始まり、間合いを測るように横に歩きながらレルゲンが二本の浮遊剣を射出する。


 手前に突き刺さった黒龍の剣と白銀の剣を見て、雄は笑うことはせずにどんな狙いがあるのか尋ねた。


「何のつもりだ?」


 しかしレルゲンはこの問いに答えず、炎剣を構えて手負いの凍刃龍に向かって駆け出す。


 すかさず雌がレルゲンを止めようと氷柱つらら状の魔術を発射するが、矢避けの念動魔術で軌道が逸らされて遠距離ではレルゲンは止まらない。


「なんて厄介な術……!」


 雌の凍刃龍が遠距離攻撃に見切りをつけてレルゲンに向かって突進を始めるが、マリーが神剣と足に魔力を集中させて勢いを完全に殺す。


「行かせないわよ……! 召子!」


「はい……!」


 横から走りながらフェンと共に、聖剣と前足で攻撃を仕掛けて釘付けにする。すると、レルゲンへの追撃を諦めたのか身体をその場で回転させて近くにいる二人を薙ぎ払おうとする。


 一旦距離を取り直し、両者とも次の攻撃に備えるが、二人が離れたタイミングを待っていたセレスティアがブルーフレイム・アローズで追撃を入れて爆炎が雌の凍刃龍を包む。


 駆け出して肉薄していくレルゲンは炎剣へ青い炎を纏わせた。


「ブルーフレイム・エンチャント」


 雄の凍刃龍は近づいてくるレルゲンを迎え撃つために、まだ無事な翼を使ってカウンターを狙う。しかし、今度は突進の勢いはなく、その場での迎撃。

 初めから最大限の魔力を込められた一撃に、レルゲンは薄く笑みを浮かべた。


 囮に使ったブルーフレイム・エンチャントを纏った炎剣を念動魔術で振り上げる途中の翼に槍を投げるように投擲する。


 丸腰となったレルゲンに雄の凍刃龍は目を見開いたが、それよりも剣が魔力を纏った翼に向けて飛んでくるのを、どう対処するか一瞬判断が遅れる。


 しかし、既に振り下ろす途中に入っている翼の刃を止めることはできない。


 ――今度も弾き飛ばしてくれる……!


 そのまま振り下ろした翼と炎剣が衝突する。

 だが、弾き飛ばす狙いとは裏腹に、超高温になっていた炎剣は翼の氷を溶かすように進んでいき、完全に翼を切断して天井に突き刺さる。


「――ガァァァアアアア!!!」


 熱により焼け焦げた反対側の翼も手負いの状態となり、必殺の一撃が完全に封殺される形となった。


 ここで凍刃龍が気づく。

 牽制に入っていた二本の剣が、いつの間にか地面からなくなっている。


 レルゲンが回収したのかと見るが、未だに丸腰なのは変わらず。


「二本の剣はどうした……?」


「その翼、貰い受ける」


 二本の剣には念動魔術で最大限の魔力が遠隔から込められ、黒龍の剣と白銀の剣が一体となり白く輝きを放っている。


 洞窟内の薄暗い中で、太陽にも近い光源となった剣は、凍刃龍が上を見上げるよりも速くマリーと召子が深手を負わせた傷口へ音もなく落とされた。


 綺麗な切断面を残して片翼を完全に落とされた凍刃龍は出血が酷く、冷気で凍らせるも抑え切ることは難しい。


 落とした二本の剣を念動魔術で分離させ、天井に突き刺さっている炎剣も回収する。


 ――ウィンドカット。


 三本の剣に風の下位魔法を纏わせて、更に追加で命令をかける。


 ――回れ。


 三本の剣は円形に見える程の高速回転をし始め、三連撃の回転刃が片翼の凍刃龍の首元へ迫ってゆく。


 しかし、凍刃龍は動かず、迎撃の体制も取らず。ただ一言――賞賛の言葉を呟く。


「見事なり」


 と残し、首から上が断たれて魔石へと還った。


「あなた……」


 すかさず半身を失った腹いせにレルゲン共々生き埋めにしてやろうと、雌の凍刃龍の口が核撃を発射しようと光が収束していったが、寸前の所で止められた。


 夫が最期に敬意を払った相手を生き埋めにして、何もかも終わらせてしまうのは夫に対する侮辱だと感じた雌の凍刃龍は、魔石となった夫に一瞬だけ視線を向けて瞳を一度だけ閉じる。足止めをしているマリーたちに声を投げかけた。


「私はあなた方に敬意を払い、この場所から退去します。夫の亡骸も好きになさい」


 全員が武装を解除すると、雌の凍刃龍が入り口に向けて歩みを進める。

 レルゲンたちは声をかけることなく、ただ黙って歩いていく姿を見送った。

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