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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【19万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第三部 異世界召喚編

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141話 スチーム・シップス

「そろそろ見学は終わりにしたらどうだ?」


 上官と思われる悪魔が、やってきたレルゲンとセレスティアに向けて苛立ちをぶつける。


「そうだな、部下は軒並みやられて、残すはお前たちだけだ」


「あまりいい気になるなよ。最下級の悪魔を倒したくらいで」


「そうか、やはり一番下であの強さか」


 レルゲンが飄々《ひょうひょう》と受け流すと、悪魔の指揮官は眉を少し上げて意外そうな顔をする。


「一番下と気づいていた割には余裕がないじゃないか?」


 レルゲンは悪魔の返答には答えず、静かに炎剣を構える。悪魔は杖ではなく、多種多様な宝石が散りばめられた指輪を嵌めた手を前に掲げ、召喚魔法陣を出現させる。


 その数、実に三個。五段目が二体、そして四段目の魔物が、一つの魔法陣から山のように現れる。ハクロウが騎士団を連れてすぐにレルゲンの下へ駆けつけ、間に割って入った。


「魔物はこっちで対応する。ボウズは悪魔を頼んだ」


 頷いて返すと、ハクロウは騎士団のメンバーを連れて魔物の討伐に注力する。

 悪魔二人とレルゲン、セレスティアが再び対峙すると、悪魔が口を開く。


「お前たち、メテオラにいた奴らだな?」


「それを知っているということは、お前が浮遊魔石を盗んだ犯人か」


「そうだとも。今からその浮遊魔石を使った戦での使い方を見せてやる」


 悪魔が空に手を向けて伸ばし、そして唱える。


「来なさい――スチーム・シップス!」


 レルゲンとセレスティアが悪魔が手を向けた方向を見ると、雲の向こうから現れたのは、数十隻にも及ぶ飛行船団だった。


 ――なんのために旅客用の飛行船を持ってきた?


 レルゲンが疑問に思っていると、飛行船から樽のようなものが何個も落ちてくる。

 落下していく所は、騎士団と召喚された魔物が戦っている場所に近い。


 地面に落ちた樽に強い衝撃が加えられると、一瞬の時間差があったが大爆発を引き起こし、魔物もろとも騎士団のメンバーが巻き込まれる。


「セレス! これは――この爆発はまさか!」


 レルゲンとセレスティアが瞬時に悪魔二人から距離を取って投下された爆弾の対処に駆け出す。


「火薬石による爆発だと思われます! でも数が多すぎてレルゲンの念動魔術でも全て捉えるのは……!」


「ああ、無理だ! ここまで数が多いと魔力糸を繋げないと受け切れない! 大元の飛行船自体を叩くぞ!」


「……いつでも行けます!」


 レルゲンがセレスティアを念動魔術で連れ、降ってくる樽爆弾を掻い潜りながら飛行船へ向かっていく。


「させませんよ」


 指揮官の悪魔が飛んでいくレルゲンたちに向けて手を伸ばすと、完璧に調教された魔物たちが一斉に核撃の光を口元に集中させる。


 ――自分の命までお構いなしに打ってくるのか……!


 無数の核撃が地面から雨の様にレルゲンへ上ってくる。一つ一つの核撃が融合し、一本の大出力の核撃となって迫る。


 咄嗟に黒龍の剣へ持ち替え、集中した核撃の外周へ魔力を流し込んでいく。上空で飛んでいる飛行船の一隻に向けて軌道を曲げ、核撃が飛行船に直撃すると、大爆発と共に飛行船が燃えながら墜落していく。


「……ほう」


 核撃を利用されて飛行船を一隻潰された悪魔は、核撃によって消滅した手数を補充するべく再び召喚魔法陣を展開。騎士団は再び魔物の対処に追われる。


 その隙にレルゲンは黒龍の剣に魔力を込めて、残る飛行船に向けて連続で遠距離斬撃を放つ。


 魔力を集中することなく、ひたすらに放ち続けた。一隻、また一隻と飛行船が爆炎を上げて墜落していく。

 残り十隻まで数を減らし、最後の一撃を準備しようと黒龍の剣を振り上げる。


 しかし、音もなく背後に現れたもう一人の悪魔が、空中にいたレルゲンの背中を両手で強打して地面へ叩きつける。


「レルゲン!」


 空中にいたセレスティアが即座に熱感知で悪魔が纏っていた隠蔽魔術を看破し、フロストジャベリンを放ち牽制する。

 だが、悪魔はセレスティアの牽制を難なく躱し、少しだけ距離を取る。


 空中から叩き落とされたことにより体勢を崩したレルゲンは空中で身体を捻り、念動魔術で無理矢理軌道を修正して落下速度を落とす。

 それでも完全に勢いを殺しきれない状態でレルゲンが着地した地面には、小さな亀裂が入った。


 即座に念動魔術による再飛翔で飛行船に向けて飛ぶが、悪魔が割って入りレルゲンの行く手を阻む。


 この間にも火薬石を詰めた樽爆弾は次々と落下し、地上には爆発を伴った衝撃が響いていた。


「どけ」


「それはできません」


「――どけ!」


 強く意思が込められた言葉に呼応するように、レルゲンより上空にいた悪魔が猛スピードで地面に墜落する。

 黒龍の剣に魔力が込められ、赤い光線となった一撃は、残りの飛行船を全て巻き込んで爆発させて無力化させる。


 その様子を見ていた悪魔の上官は、落下した部下を心配することなくレルゲンを見つめた。


「素晴らしい魔術だ。それこそが真の念動魔術に相応しいぞ! レルゲン・シュトーゲン」


 全ての飛行船を叩き落としたレルゲンは、落ちてきた赤く光る浮遊魔石を掴み取る。


 ――これで上空からの攻撃はなくなったな。


 ゆっくりとセレスティアの下へと降りると、叩き落とした悪魔は服についた砂埃を叩きながら上官の横へ歩き、叩き落とされただけでは大した攻撃にはならないと、レルゲンは悪魔の頑丈さを再認識した。

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