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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【19万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第三部 異世界召喚編

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139話 マリー vs ナイル

 一方マリーは、同じく両手剣を持った悪魔と対峙していた。


「悪魔も武器を使うのね」


「そうよ? 私を素手だけで戦う野蛮な奴らと同じにしてほしくないわ」


 お互いの武器が激しく衝突し、火花を散らしながら何度も剣を打ち合い、力比べが始まる。


 悪魔の女は人間のマリーが対等以上の力で渡り合うことに驚き、高々と名乗りを上げた。


「あなた結構やるじゃない! 私はナイル。あなたのお名前、聞かせてくれるかしら?」


「随分と礼儀正しいのね。いいわ、私はマリー、マリー・トレスティア」


 鍔迫り合いをしながら名乗り合い、少し笑い合う。


「力比べは互角――なら早さはどうかしら?」


 瞬間、鍔迫り合いを止めたナイルがマリーの背後に回り込み、突き技を背後から繰り出す。


 マリーは両手剣を片手に持ち替え、振り向きざまに剣を合わせて突きの軌道を逸らす。


「あは! いい反応ねマリー!」


「それはどうも」


 今度は速度戦に移る。

 お互いの速度を存分に活かし、剣が交錯する。これもまた互角の戦いを繰り広げていたが、徐々にマリーの神剣が白く輝き始めて速度が上がっていく。


 それからはマリーがナイルを押してゆき、細かい切り傷を与えてゆく。


 ――この娘、打ち合う度にどんどん速くなってきているわね。ゾクゾクしちゃう!


 押しているはずのマリーの表情が曇る。


 ――押しているのは私なのに……あの顔、やりづらいわね……!


 連続剣の加護で押していくマリーだが、決定的な一手を決めきれずにいた。

 それを嫌ったマリーが早めに勝負を決めるべく、神剣へ風の上位魔術を付与する。


「テンペスト……!」


「……!」


 風が巻き上がり、見えない刃が神剣を覆い包む。さらに高速で移動しながら、連続で斬り込む度にナイルの傷口は次第に深く刻まれていき、黒い鮮血が迸ってゆく。


 ――これでもまだ表情はそのままなのね!


 仲間のことを野蛮な奴らと言って上品な言葉遣いをしていたが、今のナイルの戦い方に優雅さはまるでなく、むしろ肉を切らせて骨を断つような泥臭い戦い方だった。


「ナイル、あなた変よ」


「どこが?」


「私に斬られているのに、どうしてそんなに余裕なのかしらね!」


 マリーが上空に飛び上がってから、念動魔術で落下速度を倍増させて上段から神剣を叩きつける。


 マリーの渾身の一撃を正面から剣を水平にしてナイルが受け止めると、ナイルの踏みしめている大地が大きく沈む。


「斬るっていうのは、大して傷にもならない、すぐに治ってしまうこの傷のことを言っているのかしら?」


「はぁ! 全くもってやりづらいわね! いいわ、この手は使いたくなかったけど仕方ない!」


 マリーが一度距離を取り、目を閉じて集中する。魔力とは異なる力がマリーを包み、一気に雰囲気が変わる。


 ――来る……!


 ナイルが剣を構え直し、マリーの一撃を真正面から受け切る。しかし、ナイルの持っている剣が根元から切断され、左腕を斬り飛ばした。


 腕からは先ほどとは比べ物にならない量の黒い鮮血が流れ落ちるが、ナイルが斬られた左腕を見て一瞬意識を集中すると、流れ落ちる血が即座に止まった。


「そのまま身体を両断するつもりだったのに、随分と頑丈な体をしているのね、ナイル?」


「ええ、鍛えているもの!」


 長期戦になれば、斬られた腕をきっと再生してくるとマリーは考え、決着をつけようと一歩踏み込む。


「本当にあなたはいい相手……これならこの姿で戦っても良さそうだわ!」


 ――片腕を無くしてまだ奥の手があるというの!?


 ナイルの魔力が急激に高まってゆき、片腕で握った剣を地面に突き刺し雄叫びを上げる。


「オオォォォォォアアアアア!!!!!」


 獣の咆哮に近い雄叫びを上げたナイルは、巨大な異形へと変化していた。


「待たせたわね、マリー。できればこの姿にはなりたくなかったけど、あなた相手なら喜んでなるわ! この醜い姿に!」


「いいえ、醜くなんてないわ。素敵よ、あなた」


 それを聞いたナイルが目を見開くが、すぐに口角を上げてマリーへ突っ込んでいく。

 マリーはまだ動かない。ナイルが大質量の突撃をしてくる。衝突する寸前のところで、マリーは消えた。


 片腕で振られた神剣は、ナイルの首筋へと吸い込まれるように伸びてゆき、首を落とした――

 首だけになったナイルはまだ消滅せず、マリーへ向けて感謝の言葉をかける。


「とっても素敵なデート……あなたに感謝するわ、マリー」


「私も誇り高く戦うあなたのこと――嫌いじゃない。楽しかったわ、ナイル」


「……ふふ」


 満足そうに塵へと消えていくナイルを、マリーはただじっと見つめていた。



 少し離れた位置で、召子は小柄な女の悪魔と睨み合っていた。


「あなたが私の相手なのね」


「はい。中央王国の勇者、最上召子です。こっちはフェン君」


「ヴァフ!」


「あらあら、勇者が相手なんてついているわ。ここであなたを殺せば師匠に認めてもらえる! 私はアッシュ師匠の一番弟子、クロノ! 参ります!!」

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