135話 念動魔術の演目
「お待たせ致しました。続いては、当劇団の新人二人組による、ジャグリングになります!」
仮面を被ったタキシード姿のレルゲンと、黒いドレスを身に纏ったマリーが仮面を被って登場する。
二人の周りには十本ずつのピンが念動魔術によって宙に浮いており、全く原理の分からない観客が沸き立った。
まずは空中に浮かせているピンを二本、レルゲンとマリーで手にして、交換するようにジャグリングを披露する。
それから一本、また一本と増やしてゆき、二人の距離も少しずつ離れてゆく。
合計二十本に達したところで、マリーがピンから手を全て離す。
マリーがピンを操っているように見せながら、実際にはレルゲンが念動魔術で動かしていく。
すると、また大きな歓声が沸き起こった。
さすがに念動魔術の存在を知っているセレスティアたちは気づいたが、観客は大いに盛り上がっている。
セレスティアに至っては笑みを我慢できず、召子やディシアは興味深そうに見つめている。
次にレルゲンとマリーは、トランプを懐から取り出して、空中で綺麗に静止させる。
そして、徐々にレルゲンとマリーも空中へ浮いてゆき、トランプでババ抜きを始める。
揃ったカードを順番に観客席へ配ってゆき、カードに細工がされていないことをアピールすると、観客たちは立ち上がって拍手を行っていた。
空中から降りたレルゲンとマリーは二人とも揃って頭を下げて、演目を終了した。
レルゲンたちが引いてからもしばらくの間は拍手が続き、最終演目よりも大きな盛り上がりを生んでしまったのは支配人の誤算だった。
しかし、大いに楽しんでくれていた客の表情を見ると、そんな小さなことはどこかへ吹き飛び、レルゲンとマリーを抱き締めて、感謝の意を伝えるのだった。
着替えを済ませて裏口からレルゲンとマリーが出てくると、そこには全員が待っていた。
二人は恥ずかしそうに顔を見合わせる。
その日の夜は劇団の演目でレルゲンが見せた念動魔術はどうやるのかで持ちきりで、魔術が使えない召子が多少落ち込んでいたのをカノンが慰めていた。
「おお、可哀想な召子よ。私が慰めてあげよう」
演技っぽくカノンが召子の頭を撫でると、それに乗っかった召子が嘘泣きでわざとらしく泣く。カノンは気をよくしたのか、更にしばらくの間は劇団の真似が続いたのだった。
「今日はお疲れでしょうから、星を眺めるのはまた明日にしましょう」
セレスティアがレルゲンに飲み物を注ぎ、短くお礼を返す。
「そうだな、今日は早く寝て、明日のご来光を見に行こう。ここは標高が高いから、多分陽の出もその分早いはずだ」
レルゲンはマリーの肩に手を置いて、優しく微笑んだ。
「それにしてもあの演目、半分以上は即興でやったのによく付いてこられたな」
「やっぱりお客さんには楽しんでほしかったから、笑顔とか仕草を作る方が大変だったわ」
「なるほどな、もっと難しい制御をお望みだったか」
「もう少しはいけそうだったわね。そういえばあの後レルゲンが劇団の支配人に凄く気に入られて
『実際に入ってくれないか!』ってかなり強めに誘われてたわよね」
「ああ、あの目は本気だったな」
全員が笑いながら、夕食で出された料理を満喫し、語らいを楽しんだ。
結局寝たのは深夜になってしまっていた。
「じゃあ、おやすみ」
人数が多いのでいくつ部屋を分けてはいたが、朝、夜明け前にレルゲンが目を覚ますと、ほぼ全員が同じ部屋に雑魚寝をしていた。
レルゲンは少し笑いながら、ご来光へ向かう支度を始めた。
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