130話 一つの決着
ここで召子の視界の端に四つのスキル獲得画面が表示される。
〈魔力眼〉〈勇者の気概〉〈守護者〉〈世界の抑止力〉
獲得と同時に相手の悪魔が繰り出す魔力の塊が視覚情報としてはっきりと見える。感覚で躱していた魔力を固めた遠距離攻撃を目で追いながら躱す。これには悪魔も即座に勘付く。
――俺の攻撃がさっきよりよく視えているな。
すると遠距離の攻撃回数が若干減り、その分召子の身体に直接拳が当たった時に、追加で衝撃を与える方法に切り替える。
「がはっ……!」
口から血が流れ出てゆき、内臓のどこかが傷ついたが、それでも召子は攻撃の手を緩めない。
この意思の強さは、〈勇者の気概〉と〈守護者〉による補助がかけられていた。
〈勇者の気概〉は自らの意思を貫き、相手の甘言に対して強い耐性を。
〈守護者〉は誰かを護る意思の発現によって、能力をレベル以上に発揮することが可能となる。
急激に強くなっていく召子を見て、マリーがレルゲンに確認する。
「レルゲン、召子の身体が今纏っているものって」
「ああ、間違いなく魔力だ」
「でも召子に魔力は備わっていないのよね?」
「そのはずだ。だからあれは地脈から供給された純粋な魔力だろう。あそこまで自然に地脈からの純粋な魔力を自身の糧にできるまでは相当な鍛錬が必要だ。間違いなく〈スキル〉によるものだろう」
この変化は〈世界の抑止力〉によるもの――戦闘中、地脈さえあれば魔力を吸収し、自らの力へと変換できていた。
レベル差をどんどんと埋めていく召子に、一瞬焦りを感じたのか、悪魔は再度距離を取り、新しい技を繰り出してくる。
「――眷属召喚」
地上に見たことのない紫色の魔法陣が現れ、黒く鋭い牙を持つ化け物が現れる。
すかさず召子も待機させていたフェンを呼ぶ。
「フェン君! お願い!」
「ヴァフ!!」
これで戦況は変わることなく、召喚主と召喚獣同士の戦いが繰り広げられる。
召喚獣同士の戦いでは、フェンが化け物たちを圧倒していた。何匹いようがお構いなしに戦闘不能にして塵と化す。
それを見た悪魔は、召子に両手を使った全力の掌打を浴びせて、大きく吹き飛ばす。
「予想以上だ。女の勇者よ、名を何という?」
「最上召子」
「そうか、私の名はアッシュ。力の階級は『下から二番目』この意味がわからない君たちじゃないだろう」
マリーが逃すまいとアッシュに向けて駆け出そうとするが、レルゲンがマリーの肩を掴んで静止する。
「どうして!? 逃げられるわ!」
「落ち着け、今仮に奴らの拠点を掴めても無事に帰れるかわからない。まだそこまで無理をしてまで追いかける時じゃない」
アッシュが少し驚きつつも、レルゲンを賞賛する。
「冷静な判断だ――異分子。追いかけても構わんが、魔界へ強制転移させてやることだって簡単にできる。知らない土地で相手も数もわからない。それでも来ると言うなら招待しよう」
マリーが止まると、アッシュの口角が上がる。紫色の魔法陣を地面に展開し、そして姿を消す。
アッシュの姿が消えたのを確認すると、召子の口から更に血が流れ出ており、聖剣を地面に突き刺しながら肩で息をする。
フェンが心配そうに召子の顔の近くで鼻を動かしながら、口から流れる血を舐めている。
脅威が去ってからセレスティアが駆け寄り、回復魔術をかけると、召子が短くお礼を言う。
「セレスティアさん、ありがとうございます」
「いいえ、格上の悪魔相手に立派に戦っていましたよ。撤退させただけで勝ちと言っていいでしょう」
「……えへへ」
勇者の表情から一般人へと戻った召子を見るとセレスティアも安心したのか、召子の身体を抱き寄せて優しく頭を撫でていた。
「フェン君もお疲れ様」
「……クゥン」
召子が優しくフェンの頭を撫でると、フェンもまた表情が柔らかくなり、召子の匂いを嗅いで甘えていた。
レルゲンは消えたアッシュという悪魔が最後に溢していた言葉を思い出していた。
――下から二番目の階級か
あの魔力量で下から二番目とは、一番上の階級になったらどれだけの強さを持っているのか想像もつかなかった。
今の戦力で本当に足りるのか不安がよぎる。眉間に皺が寄っているのを見たディシアがレルゲンに声をかけた。
「未来のことを考え過ぎると、足が止まってしまいますよ」
「……そうだな」
レルゲンは夕陽が輝く空を見上げて、小さくため息をついた。
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