131話 戦後処理と久しぶりの休暇
アッシュが撤退したことで、残りの人形兵隊部隊に集中することに。既にアッシュとの戦闘中に、人形兵がかなりの距離を進んだことから、レルゲンたちは空を飛んで追いかけていた。
「いました! 部隊の先頭です」
フェンの上に跨っていた召子が下を見つめながらレルゲンに伝える。
全員が魔剣を持っている人形部隊を目視すると、レルゲンが魔力糸を伸ばし先頭の兵隊に接続する。
その接続された兵隊から更に後ろの兵隊に糸がどんどんと伸びてゆき、一度に千体以上の接続を可能にしていた。
「そんなに魔力糸を接続してどうするの?」
マリーが何でわざわざ?といった表情をするが、レルゲンが少し笑い
「こうするのさ!」
レルゲンの強固な命令が人形の足を止め、核がある心臓部に魔剣を突き刺した。
動力源を完全に潰された人形はバラバラと崩れ落ちてゆき、その光景を見たマリーは
「レルゲンって結構えげつないことたまにやるわよね……フィルメルクの即死トラップを抜ける時とかもそうだったし」
「ダンジョンではああするしか無かっただろ。今回は無駄に数が多いから効率的に行こうってだけさ」
「まぁ、いいか。この分なら私達は必要無さそうだからレルゲンに任せるわ」
それを聞いていたセレスティアがレルゲンに声をかけてくる。
「マリーはあのように言っていますが、あなたを信頼しているが故の雑さだと思いますよ?」
「ああ、わかってるよ。セレスも少し休んでいてくれていいぞ。後は俺が片付けておくから」
「いいえ。魔力の消費量を考えたら私も残りますよ」
「その時はウルカに借りればいいんじゃないか?」
「いけません。本来精霊との契約は危険が伴うのです。どのような契約を結んだかはわかりませんが、そこはしっかりして頂かないと。いい機会です。ウルカ様とはどんな契約をされたのですか?」
「ウルカは元々俺の中にいたからな。今まで俺の力をずっと制限していたらしいから、その分のデメリットが十八年分――完遂するまで無料期間らしいよ。そもそもだけどウルカ自体、俺から何か貰うことに頓着ないみたいだから、今のところはリスクがないな」
ここでウルカがレルゲンの胸ポケットから出てきて補足する。
「ちなみにレル君って呼び方も本人が嫌がってたのを我慢させてるから、デメリット扱いになっているわよ。簡単に言えばこじつけだけど。純精霊との契約なんて人間がいくらこちら側にメリットを提示しても足りないくらいだから、何をもらっても変わらないの。だけど、私自身がレル君の力になりたい気持ちがあるから、寧ろ力を貸してあげる理由を探すのに苦労するのよね」
「それではウルカ様とレルゲンの立場が逆になってしまっているのでは?」
「そう! セレスちゃん賢い! これは私がレル君と契約するための誓約なの。だからレル君の十八年分が無くなっても、何か貰うつもりはないから安心して」
「そうですか――私が気になっていたことは杞憂のようでしたので、安心しました」
「と言うわけだからセレスも向こうで休んでていいってこと」
「嫌ですよ? 妻が夫と一緒にいたいと思う気持ちに約束は必要ありませんから」
「……参ったな」
レルゲンが降参のポーズを取り、残りの人形を全て殲滅するまでの時間はセレスと雑談しながら過ごしていると、あっという間に全ての人形を破壊してしまうのだった。
ヨルダルクを完全に無力化したことで、中央王国は書面上ではヨルダルクを属国扱いにする事で合意させる。
今回潰した施設の研究を全て永久に凍結させる事を念頭に、ヨルダルクの最高意思決定機関を解体。
ディシアを新たな国王として据え、完全な傀儡政権を設立する。
また、悪魔と通じていた者がやはり何名かいたようで、その研究員たちは研究室を残したまま姿を消していた。
恐らくは魔界に逃げ込んだのだろうが、一応の捜索は継続させることで、体裁を整えることとなった。
女王は完璧な成果を挙げたレルゲンに対し、何か褒美を取らせようとも思った。
しかし、現状に満足していること、悪魔襲来に備えて更に強くならなければならないことを伝えて辞退する。
「そうですね。これからの準備が私たちの命運を分けるでしょう。引き続きこの国を、ひいては世界をよろしくお願いします」
「御意に」
「では言い方を変えましょう。少しの間とはなりますが、あなた達には休暇を与えます。鍛錬に励むも良し、しっかりと英気を養うのも構いません」
女王が優しく微笑む。
「七日という短い期間にはなりますが、しっかりと息抜きをして下さい」
「ありがとうございます。しばらくの間、存分に休暇を楽しませて頂きます」
――前々から欲しいと思っていた休暇がこうもあっさり手に入るとは……
依然として魔王復活の時は近いことに変わりはない。それでも一度レルゲンたちにも休日が必要と考えていたのは女王も同じだったようだ。
「では明日から七日間、存分に楽しんで来てください」
女王の部屋を後にした全員の表情は明るく、どこに遊びに行くかで話が持ちきりだった。
きっとレルゲンも、否、間違いなくマリーとセレスと共に遊びに行くことになるだろう。
フィルメルクでの旅館は、ある種の息抜き時間でもあった。それでも、ダンジョン攻略で寝泊まりするための所という目的があったため、純粋な余暇を楽しむのとはまた少し違っていた。
レルゲンは廊下を歩きながら、大きく伸びをして身体にかかっていた力を抜くと、自然と欠伸が出てくるのだった。
「さて、どこに行こうかな」
――次の日、レルゲンは目を輝かせたマリーに、早速呼び出されていた。
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