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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【16万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第一部 絆の糸編

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13話 敵の切り札を潰せ

 マリーを下ろす。


 敵の攻撃は大火力の熱線。

 あれだけ溜めが短い以上、何か制約があるはずだ。連射は恐らくできないと考えろ。


 高速で思考を回す。


 尻尾が気になる。

 熱線中はもっと光ってなかったか?

 尻尾の付け根は皮膚が見えている。

 恐らく剣は外殻と違って入る。


 ……落とすか。


 念動魔術で炎を剣に消えないように固定させる。浮遊剣に炎を纏わせて高速回転させると、風を切る音が響き渡った。


 ――ギュイイイン!!


 炎の円が形成され、回転を限界まで引き上げてから空へと射出する。

 空に上っていく剣を目で追っていたら、その隙に斬りかかろうとも思ったが、敵はそこまで間抜けではなかった。


「あらぁ? また最初と同じ手かしら? 芸ないわねぇ?? 炎をエンチャントしたようだけど無駄よ。アシュラちゃんは固い外殻に覆われているんだから、剣なんて通らないわよ」


「……かもしれないな」


 淡々と返答するレルゲンに、仮面の男が少しの苛立ちを見せる。


「せっかく忠告してあげたのに、少し過大評価しすぎたかしら?」


「――よく喋るな。中央の爪弾き者がデカいおもちゃを貰ってはしゃいでいるようだが、お前には過ぎた代物だぞ」


「……何ですって?」


 簡単にレルゲンの煽り口上にかかった。

 レルゲンは何度か煽るつもりだったが、最初の一言で敵が完全に頭に血が上っているとわかった。


「知らないのも無理ないわ! アシュラちゃんはねぇ! ワタクシが生まれた時からずっと育てたのよ!」


 なるほど、だから五段階目の凶暴な魔物を従えているのか。

 レルゲンは納得すると同時に、もう一度敵の言われたくないことを言ってのける。


「攻撃が単調なわけだ。子は親に似るって言うしな!」


「あなたから殺してしまおうかしら」


 ――よし、注意がマリーから俺に変わった。

 五段階目となると中位魔術は派手な割に効果は薄いだろう。

 それでもレルゲンは、唯一使える火炎魔術を放った。


「ファイアストーム」


「こんな攻撃、アシュラちゃんには効かないって本当に分からないのね! アシュラちゃん! やっちゃいなさい!」


「ガァァァアアアア!」


 先程の熱線と同じく、光が口元に集中していく。尻尾の鉱石部分に注目すると、やはり発色を始めていた。


 やはり尻尾は増幅器だな、とレルゲンは再確認した。


「今度は同じように行かないわよ。アシュラちゃんは熱線を横に広げることもできるのよ! この意味、わかるわよね? どうする? 命乞いでもしてみる? まぁ、命乞いしたところで絶対に殺すけどね! アハハハハ!」


 高笑いの刹那、上空から飛来した炎を纏った回転刃が、アシュラ・ハガマの尻尾の付け根へ正確に命中する。


 甲殻以外の部位も並大抵の魔物よりも強靭だろう。だが、意識を逸らした後の一撃は、いとも容易くアシュラ・ハガマの尻尾を切断した。


「……っ!! アシュラちゃん!」


 仮面の男の悲痛な叫びと共に、アシュラ・ハガマが初めて痛みを伴った、くぐもった声を上げる。


「グゥゥオオオオォォォ……」


 この瞬間をレルゲンは逃さなかった。

 仮面の男のアシュラ・ハガマへの執着は、今までのやり取りを見ればよくわかった。


 お前は絶対、その魔物を心配すると思ったよ。


 仮面の男の意識がレルゲンからアシュラ・ハガマへ向いた瞬間、魔力糸を伸ばして仮面の男に接着する。


 レルゲンと仮面の男は魔術的に同体となった。

 レルゲンの魔力が瞬時に仮面の男を包み込み、全力の念動魔術で後ろへ吹き飛ばした。


 闘技場の壁へ叩きつけられた仮面の男は、小さなクレーターと共に血飛沫を上げた。


「……がはっ」


 仮面の男が消えゆく意識の最中、最後に見たのはマリーではなく、アシュラ・ハガマに向けられていた。


 アシュラ……ちゃ……ん。


 一つの魔力反応が徐々に消えてゆく。


 宿主を失ったアシュラ・ハガマは、腹いせとばかりに暴れ狂おうと魔力を集中しようとする。


 しかし、どれだけの時間を使っても、最大威力の熱線を放つことは、二度とない……。


「切れた尻尾の付け根から攻めるぞ」


「ええ、わかったわ」


 レルゲンとマリーが最後の確認を済ませると、白髪の剣士は後ろを向いてゆっくりと歩き始めた。


「後はボウズに任せる、俺は観客の手当てしてくらぁ」


 手当が必要なのは白髪の剣士だろう。

 レルゲンは少しだけ笑って背中を見送った。


 五段階目の魔物だ。

 魔力自体はまだ健在に近い。攻撃能力を奪われた状態では、脅威ではない。


 ――と思っていた。

 限界を超えて一撃に全魔力を乗せた時のことを、レルゲンは失念していた。

 増幅器である尻尾を失った今、放てる威力などたかが知れている。


 宿主との連携を奪った今、もう脅威は去った。

 ――そう、安心していた。

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