121話 伝承の朱雀
召子がレベル100になったことで女王は深域でのダンジョン挑戦を認めてくれた。
人生初の高難易度、それも深域でのダンジョンの挑戦となれば、それはもう世界中探しても召子しかいないだろう。
「では騎士レルゲン。重ねてにはなりますが、どうか皆をよろしくお願いします。あなたの使命は、全員でここにまた帰ってくること。その中には、もちろんあなた自身も含まれていることをどうかお忘れなきよう」
ここでフェン君が鳴き声を上げると、女王は
「もちろん、あなたもですよ?」
とフェン君のあごの下を優しく撫でると、気持ちよさそうに目を閉じていた。
レルゲンが再度出発するメンバーを見て、表情が引き締まっていることを確認し、女王と他の皆に挨拶をする。
「それでは女王陛下。行ってきます」
青い光に包まれてレルゲンたちは、深域に転移して消え去るのだった。
深域に到着し、魔力で打っておいた転移魔法陣の印で飛ぶと、そこは未だに転移魔法陣の赤い光が見て取れるほど眩い光を放っていた。
レルゲンがセレスティアにバフを頼み、全員分に掛け終わる。
バラバラに転移しないように全員が手を繋ぎ、掛け声と共に転移魔法陣に足を踏み入れる。
すると、転移した先が既にボス部屋に直結しているタイプのダンジョンのようだ。
白い円形の明るい部屋、中心には古代の紋章と推測できる魔法陣が光を失った状態で描かれている。周囲は白い光の照明がいくつも並んでおり、広さも動く分には問題ない大きさを誇っていた。
玉座に身を丸めて眠っているのは朱色の大きな、とても巨大な鳥型の魔物だった。
ヒュージ・スワンですら大きいと感じたのに対し、この朱色の魔物は更にその五倍の大きさは下らないであろう巨体。
魔力もさることながら、存在感だけでレルゲンたちを圧倒していた。
レルゲンが一歩前に足を踏み入れると、そこはもう魔物の領域。
魔物が目を見開き、ゆっくりと身体を起こす。
全容を見たセレスティアが呟く。
「伝承の、朱雀……!?」
その名に聞き覚えがあったため、全員がセレスティアへと振り返る。
あくまで特別な六段階目という括りではあるが、実際に戦闘した記録が過去に全くない。本来の実力は、モンストルム・ファブリカを上回る可能性すらある。
例に漏れず、帰りの魔法陣は光を失っており、撤退も許されない。
レルゲンがまずは高い知性を持っているであろう朱雀へ、言葉による対話を試みる。
「お初にお目にかかる。朱雀殿とお見受けする。私はレルゲン。レルゲン・シュトーゲンと申す者。御身の胸をお借りし、いざ尋常に勝負願いたい!」
朱雀はこれに答えることなく紅蓮の炎を口元に集中し、薙ぎ払うように放ってくる。
火炎の線がレルゲン達を全て包み込むが、セレスティアが瞬間的に状態異常を無効化する魔術「ノーマリィ・コンディション」を発動して火炎から火傷状態にならないように皮膚を保護する。
それに加えてレルゲンが矢避けの念動魔術で、火炎の軌道を無理矢理曲げ、技の完全回避に成功する。
朱雀の挨拶にレルゲンも応えようと魔力を解放し、黒龍の剣が赤い刀身となって襲い掛かった。
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