120話 初めてのレベルアップボーナス
難色を示す女王にどうやって納得させるかが課題となっていた。
しかし、中々案が出てこない。
セレスティアが「やはり……」と前置きしてから話し始める。
「私たちのレベルを女王陛下に伝えて、深域の魔物たちに打ち勝つ力量があると、正面から示すしかないと思います」
「確かにロンリー・コングとのレベル差を伝えれば可能性はありそうだな」
レルゲンも賛成はするが、今回は何か違う理由があるような気がしており、そこが引っかかっていた。
するとマリーが別の案を出してくる。
「やっぱりお母様は私たち王女よりも、むしろ召子を気にしているんじゃないかしら? なら、召子のレベルが最低でも100に上がるまではダンジョン攻略は難しいかも。水神様に召子の手ほどきをお願いするっていうのはどう?」
「水神様と模擬戦闘か」
「そうそう。ほら、水神様って六段階目の中でも上の方の強さだし」
「召子に今一番足りないのは、魔物との戦闘経験……ダンジョンで新しい強力な魔物と戦うなら、水神様のお墨付きをもらえれば女王陛下も納得するかもな」
「水神様ってどれくらい強いのですか?」
召子が不安そうにレルゲンに聞くと、マリーやセレスティアも気になるようで、レルゲンに目線で説明を求める。
「そうだな。俺は相性が良かったから何とも言えないが、マリーの言った通り戦った感じはかなり強い部類だと思う。まず雷攻撃が効かなかったしな。水なのに感電しない特徴がある」
「不思議な龍ですね。そもそも龍と戦ったことが無いので、全て不思議な出来事には変わりないのですけど」
「あまりこちらから事前に情報を伝えすぎて、先入観を与えても戦闘に意味が薄れるかもしれない。召子のレベルでも聖剣の力を上手く引き出すことができれば、勝負にはなるはずだ」
「ありましたね。格好の訓練場が」
「全然頭になかったな。さすがマリーだ」
そう言うと、マリーが少し得意げに笑うのだった。四人でまとめた案を女王に伝えると、にっこりと笑い承諾してくれる。マリーの予想は当たりだった。
「それは名案です。水神様にも何かお礼を考えなくてはなりませんね。マリー、何か水神様に贈り物の希望がないか訪ねてきてください」
「わかりました。お母様」
「召子様もお気をつけて。回復役としてセレスティアを付けます。存分に励んでください」
「ありがとうございます、女王陛下。セレスティア様――よろしくお願いします」
「はい、怪我をしたときは私が癒しますので、恐れずに立ち向かってください」
水龍に事情を説明すると、召子を見て
「鍛える分には構わんが、そう弱くは見えんぞ?
その武器の性能もそうだが、お主からは魔力以外の何かを感じる」
「私、もっと強くなって、それで元の世界に帰りたいんです」
「そうか、目標があることは良い。久しぶりの運動だ。うっかり死なないように注意するのだな――さぁ剣を構えよ。行くぞ」
召子が〈飛翔〉によって空中に静かに浮かび、水龍の頭の高さと同じところまで上昇し、修行が始まった。
レルゲンが召子の位置が見えるところにある木陰に腰を下ろし、マリー、セレスティアもそれに続く。真剣な表情で召子を見つめるレルゲンに、マリーが優しく問いかける。
「心配?」
「少しな。いくら水神様が手加減しているとはいえ、相手は六段階目。五段階目とは強さの格が違うからな」
今回はセレスティアだけ神杖を持参し、他のレルゲンとマリーに至っては非武装でこの深域に来ている。
「大丈夫ですよ。どんな大怪我だって私が治してみせますから」
「心強いよ。そういえば、お前は一緒に戦わないんだな。フェン君」
マリーの膝に乗っているフェンに手を伸ばして撫でようとすると、再び牙を剥いて威嚇する仕草を取るので手を引っ込める。
――これはずっと嫌われるパターンかな、とレルゲンは密かにフェンとの和解を諦めるのだった。
それから丸一日かけて水龍との修行を終了するとレベルが上昇して70になり、横で戦いを見ていただけのフェンも65までレベルが上昇していた。
レルゲンたちとは根本的にレベル差があるため定かではないが、召子の戦闘経験値は今回はレルゲンたちには入らず、フェンとのみ分け合っている印象を受けた。
それからというもの、召子の特訓は数日間続き、ついにレベル100を呆気なく達成する。動きに関しても少しずつキレが増してきており、途中から水龍は本気に近い動きをしているようにレルゲンには見えていた。
フェン君のレベルは95まで上昇し、あと一歩で節目というところだ。
ここで召子のプロパティ画面に見たことのない文言が記載されていた。
『レベルアップボーナスを選択してください』
ボーナスには攻撃力、俊敏性、体力、持久力、防御力など、挙げ始めればきりがないほど多くの項目があった。選択肢が多すぎて逆に選択できないという珍事が発生する。
「レルゲンさん。これ、どうしましょう?」
「俺もこういうのは経験ないから何とも言えないけど、やっぱり最後は召子が一番納得した形がいいんじゃないか?」
「うーん、それは確かにそうなんですけど、私もこういったテレビゲームのような経験はないので、どれを選べばいいのやら……」
レルゲンたちはテレビという単語に聞き覚えが無かったため察することしかできなかったが、それでも何とか力になれないか考えを巡らせる。
「魔王のレベルにもよるとは思うけど、まだ初めてのボーナスだし何かスキルを強化してみるのはどうだろうか?」
「スキルですか――そうすると〈能力上昇率UP〉が無難でしょうか」
「そうだな、俺も今後絶対に腐らないスキルを選ぶとなるとそれになる。しかし、本当にいいのか? 消費ポイントは今あるほぼ全てを使うことになるぞ」
「いいんです。私だけだと全く決まる気配がありませんから。えい!」
ボタンを押してボーナスポイントがほぼ全て消費され、〈能力上昇率UP 中〉に変化していることが確認できた。
『取得経験値が増加。召喚獣を含むレベルが上がりやすくなりました』
「アドバイスありがとうございました」
「最終的に納得できたのなら俺もよかったよ」
レベルアップによるボーナスがあることに気づいた召子は、次はレベル150か200にまた現れるかもしれないと、レベルを上げる楽しさを知った。
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