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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【19万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第三部 異世界召喚編

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111話 聖剣の自動操縦

 ならば、もう疑うことはしない。

 この剣なら聖剣を斬れる。いや、もう『既に斬っている』そう念を込めて握り直された神剣は、一層白い輝きを放ち、斬る対象を探しているかのように魔力が揺らめいていた。


 マリーが聖剣に向けて神剣を振り上げると、この変化を感じ取った黒い聖剣が、召子の声で警戒感を示した。


「概念切断を検知、危険度大」


 それを受けて、先ほどまでぐったりと浮いていた召子が、素早く移動してマリーの一撃を躱す。


 避けられると思っていなかったマリーは空振りに終わったが、聖剣から発せられる黒い魔力が神剣によって空間ごと斬られ、一瞬だけ召子と聖剣との接続にノイズが入った。


 これを繰り返しやれば、いつかはショウコを解放できるはずだ。マリーが決意を固めると、レルゲンがディシアを連れてやってくる。


「マリー! 何が起きてる!」


「わからないわ! わからないけど、悪さをしているのはあの剣よ!」


 その状態を初めて見たはずのレルゲンは、自分の内側が少し悲しい気持ちになっていることを自覚した。


「ディシア、あれが聖剣の本当の姿か?」


「いいえ、間違いなくヨルダルクの細工が施されています。本来聖剣とはそちらのマリーが持っている聖属性の武器と同じ種類です。こうも反対の……『悪属性』に近い状態になることは、絶対にあり得ません」


「わかった。ならもうあの剣は壊すしかなさそうだ。一旦外へ連れ出すぞ!」


 黒龍の剣に少しだけ魔力を込め部屋を破壊し、外の景色が露わになるが、続けて標的を見つけた聖剣が告げる。


「暗殺対象を発見、これより任務遂行に当たります」


 念動魔術で聖剣に支配されている状態の召子と、マリー、ディシアを連れて中庭へ移動する。


 一瞬、ディシアを中庭へ連れてくるべきか迷ったが、聖剣がディシア暗殺を最優先とするなら、再び室内に逃げ込まれる可能性もあった。今は側に置いておく方が一番安全だと直感的に判断する。


 中庭に降ろされたマリーとディシアは、周りに人がいないことを確認すると一歩下がる。


「意図しない移動方法を確認。第二目標のレルゲンを危険度中に再カテゴライズ」


 レルゲンは、ここで第二段階の魔力解放を叩き込めばどうにかなるかと考えたが、心のどこかで『違うよ』と声がする。


 レルゲンが周りを見渡すが、誰も自分に話しかけた様子はない。

 誰が自分に話しかけているのかわからずに、思考を切り替えようとすると、再び内側から声がする。


『ちゃんと対処方法を教えてあげるから、言う通りにしてごらん』


 不信感を抱きながらも、レルゲンは思わず謎の声に問い返した。黒龍の剣とは反対の左手で自身の胸の服を掴み


 ――誰だ? どこから話しかけている?


 すると、謎の声がレルゲンに語りかける。


『それより今はあの子を助けたいんでしょう? なら今は細かい話は後々、ね?』


 ――わかった。それで、どうすればいい?


 納得したのか、少し嬉しい気持ちが直接流れ込んでくる。


『いいね。それじゃあまずはマリーに黒いオーラを全て断ち切るように指示を出して。全部断ち切れるまで、君はその補佐とディシアを護ることに専念だよ。それから先は私がやるから』


 ――信じて良いんだな?


『君もくどいね。助けるために取れる行動は一つだけだよ』


 レルゲンは返事をせず、マリーへ指示を飛ばす。そして二人は黒い魔力を纏った召子へ向かって勢いよく駆け出した。

 距離を詰められた召子が、黒い聖剣でマリーを大きく弾き飛ばす。


「やりづらい……!」


 聖剣の狙いはディシアだ。

 だが、マリーもまたそれを理解している。

 どうにかして暗殺対象のディシアに突っ込もうとするが、マリーが先回りして防ぐ。


 剣戟の最中、聖剣の相手にされないレルゲンが、召子に向かって空間固定の念動魔術で動きを封じる。


 しかし、念動魔術がかかってからというものの、どこかすり抜けるようにその場を移動してしまう。


 固定できるのはほんの数秒だ。

 だが、それだけわかれば十分とばかりに、レルゲンが召子に突っ込み、聖剣の動きを完全に封じるべく黒龍の剣に魔力を込めてゆく。

 黒い刀身が漆黒の輝きを放ち、召子へ向かって一撃を放つ。


 聖剣がある一定の角度を自動で決めているかの如く正確な角度で受け切り、レルゲンが連続で斬り込むことで体勢を崩せないか試した。


 しかし斬り込まれている召子は、重心を一切変えずに手だけで聖剣を扱ってレルゲンの連続攻撃をいなし続け、隙を見せない立ち回りをしていた。


 ――その細腕でよく重心がブレずに剣を振れるな……これが〈勇者〉のスキルか……いや、聖剣の性能か?


 考えながらも連続攻撃は止めず、苦手としている場所がないか探る。

 しかし、中庭の芝生がレルゲンたちの攻防で大きな斬り跡が残るのみで進展はない。


 ――なら、足場の変化にはどう対応する?

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