105話 戦後処理と新たな能力
モンストルム・ファブリカが遥か上空で爆発を起こし、カイニル・マクマニルの呪いを解き放ったレルゲンたちは、事後処理に追われていた。
「まずは山斬りによって寸断されたヨルダルク間の道の整備を騎士レルゲンに命じます」
「拝命致します」
「そして、セレスティアとマリーにはダンジョン攻略後のギルド間との情報交換。そして、連れてきたレイン様が中央ギルドで働けるよう、ギルド長のクーゲルへ説明を」
「「承知致しました」」
「そして騎士団長ハクロウには急ぎ騎士団の再編を――今、周辺国から攻め込まれる可能性が一番高いと言えます。頼みますね」
片腕を再度無くした状態でハクロウが騎士礼を取り、返事をする。
「御意に」
謁見の間にてそれぞれに指示を出している女王は、尚も色々な貴族に避難民の帰還方法についてなど協議、指示を出して忙しそうだが、表情は明るく、寧ろ清々しい喧騒とも感じているようだった。
謁見の間を後にしようとするレルゲンたちに女王が再度声をかける。
「そうだ。忘れていましたが、ミリィ・ブルームスタットにこの国の永住権と、ディシア・オルテンシア様は食客扱いにし、無期限の中央滞在を許可します」
「今回の元凶とも呼べる私たちが、ついでの扱いとは……」
レルゲンが歩きながらディシアに声をかける。
「よかったじゃないですか。と言っても処分されそうなら何とかするつもりでしたけど」
「それで本当にいいのなら、私はしばらくここに滞在します。カノンともまだまだ話したいことがありますし、どうせ戻ったとしても私は裏切り者として処断されますから。対策が見つかるまでは――」
何を小難しいことを言っているんだ? という表情をするレルゲンが、ある提案をする。
「なら、この国に永遠の忠誠を誓えば良いじゃないか? 正直あの七段階目を最終的に何とかできたのは、ディシア様とカノンのお陰ですよ」
「そんな簡単なことではないと思います」
マリーもレルゲンに乗っかり、言葉を付け加える。
「簡単なことよ? あなたの持っている技術は間違いなく中央王国のためになる。私からお母様に進言しておくわ」
ディシアがセレスティアへ視線を向けると、優しく笑い「それでいいのでは?」と言うような表情をした。
自分の国とは正反対の国柄に頭を抱えるディシアは、晴れて中央王国の一員となるのだった。
「皆様、これからもよろしくお願いします」
ディシアが立ち止まり、杖を前に出して礼を取る。
「「よろしく!」」
と全員が声を揃えてディシアを迎えた。
話が纏まり、マリーがレルゲンに神剣を見せる。
「ねぇレルゲン。これを見て欲しいの」
「なんだよ? ……あっ」
「そう! 二つ目の穴に嵌ったの!」
「どこで見つけたんだ?」
「七段階目が爆発した後に、空から降ってきたみたい。光ってる玉が落ちてきて、試しに近づけたら」
「こうなったわけか」
「そう。でも一度ドライドさんに見てもらわないと性能の確認が出来ないから、一段落したら工房に付き合って欲しいの」
「それならいつでもいい。俺もその剣がどう変わるのか気になっていたし」
「それじゃあ、また後でね」
「ああ」
一度それぞれ事後処理に追われ、レルゲンとマリーが再び顔を合わせたのは二日後のことだった。
「剣の確認しに行きましょう!」
朝、レルゲンの部屋を勢いよく開けたマリーが「あぁ!」と声を出す。
「セレス姉様が抜け駆けしてる!」
「いいえ? 公務が終わったのですから、抜け駆けではありませんよ?」
「今日はレルゲンと一緒に神剣の確認に行くんだから。レルゲンは早く支度して」
「わかった、じゃあセレス。風邪を引かないようにな」
「はい」
名残惜しそうにレルゲンを見送るセレスティアを見て、マリーが「今日は私の番よね?」とレルゲンに詰め寄る。
セレスティアは毛布を手にしながら、優しく笑った。
ドライドの工房にて
レルゲンとマリーが神剣を持っていくと、ドライドは早速鑑定用の拡大鏡を片目に着けてじっくりと観察する。
「また珍しい加護がついているな。これが今のマリー嬢ちゃんの武器かい?」
「そうよ」
「この剣には『絶対切断の加護』がついているぜ。文字通り所有者が斬るものは何であろうと斬れる。例えばこの前、王国に来た化け物でもな」
「よくわからないけど、絶対切断の加護って、要するに使う私次第ってこと?」
「恐らくな。斬る対象をこちらで決めることで、想像を現実にするって言い方が近いのかもしれない」
「想像を現実に? なんかまだよく分からないわ」
レルゲンが興味深そうにマリーに話しかける。
「実際に使ってみた方が早いんじゃないか? 試しに硬いやつを斬ってみたりさ」
「それもそうね。レルゲン、今日一日は空いてるのよね? なら…」
「深域か?」
「そう! 試すにはもってこいだわ」
ドライドがやれやれと言った反応を見せ「深域の格も落ちたものだなぁ」と一言だけ零した。
深域で二人は手始めに五段階目の魔物と対峙していた。今日のレルゲンは黒龍の剣を持ってきていない。
マリーの神剣で全て止めを刺せるはずだからだ。
「レルゲン、足止めよろしく!」
「わかった」
念動魔術で浮遊剣を操り、魔物の走る方向を制限して止める。
「やぁぁああああ!!!」
気合いの込められた一撃は、あまり魔力が乗せられていないにも関わらず、綺麗な切断面を残して魔物を魔石へと還した。
「手応えがなさすぎて、本当に斬っているのかわからないわね」と、神剣に向かって文句を言うのだった。
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