103話 ここは、どこ……?
薄暗い灯りの中で、お互いに顔の見えないように覆面を被った人物が四人、円卓を囲み座っていた。
「彼女は今も中央王国にいるのか?」
「だから言ったであろう。あの若さでこの評議会には早すぎる。必ず何か裏があると」
「然り、ディシア・オルテンシアをヨルダルクの最高意思決定機関から除名し、即刻処刑するべきだ」
ここで、今回の経緯から考えればやむを得ない選択ではないかと異を唱える者も現れる。
「しかし、彼女は多くの情報を既に握っています。処刑が仮に失敗した場合、全ての国家機密が露呈する可能性もあるのでは……?」
「問題ない。既に『あの手』を打つ準備ができている」
「なんと! 伝説が遂に再臨するのか!」
まとめ役の男性が大きく頷き、異を唱えていた人物も「ほぅ……」と零して押し黙る。
「それならば、ディシア・オルテンシアが仮に国家機密を話したとしても、間違いなく中央王国には破滅が訪れるであろう」
全員が納得した『あの手』を実行するべく、全員が円卓から席を後にする。
◇◇◇◇
私が目を覚ましたのは、爽やかな草原の、他には何も無い平坦な土地だった。
「ここは……どこ?」
確か学校で友達と別れ、家に帰ろうと真っ直ぐに道を歩いていたはずだったのに。
辺りが一瞬眩しいと感じたときには、既にこの平原が広がっていた。
「そうだ! 携帯!」
急いで鞄から携帯を出し、ここがどこなのか確認するが、表示された画面は圏外を示している。どこのSNSを開いても、画面はネットワークエラーを表示するのみ。
一時間近くこの辺りを彷徨っただろうか。
行く当てもないが、じっとしていられない不安感に駆り立てられて、他に人がいないか私は探し回った。
しかし、人はおろか周りに生き物すらいない。
しばらく歩いて疲れた。
何も無い平原に座って休んでいると、近くで紫色の光が降り注ぎ、少しの土煙が上がるのを見る。
――誰かいるのか……! この際、人じゃなくてもいい!!
私は紫に輝いていた光の方へ駆け出す。
すると、顔に覆面をつけた、怪しい雰囲気を纏う人物が立っていた。
その人物は、こちらに気づいてから近づいてきて跪き――首を垂れる。
「初めまして。召喚されし勇者よ」
「勇者……?」
「はい、突然の召喚に応じて頂きありがとうございます」
「いえ、応じていません。ここはどこですか! 知っているならうちに返して下さい!! お願いします!!」
覆面の男は少し困ったように首を傾げて、一言謝罪する。
「申し訳ございません。片道分の魔力しか用意できませんので、元の場所には帰ることができません」
「そんな……」
――帰れないって、どういうこと? どのくらい? それとも、もうこれからずっと……?
不安な気持ちで押し潰されそうになり、視界が涙で歪んだ。
それを見た覆面の男が懐から手巾を取り出し、私の目元を拭う。
「あなたが元の世界に帰るためには、膨大な魔力が必要です。それこそ『世界を書き換えられるほど』の。なので、絶対に帰れないわけではありません。どうか希望を捨てないで下さい」
「いつか帰れるのですか?」
「あなたの頑張り次第ですが、きっと」
涙が止まり、他に誰もいない状況を作った人物は後になってわかったが、私を協力させるための演出に違いなかった。
顔を上げて、この男が言う膨大な魔力を手に入れるために奮起してしまった私は、どんどんと事態を空回りさせてしまう。
しかし、今の私には頼れる人が覆面の人しかいなかった。
私は紫の光に包まれ、覆面の男と共に平原から一瞬で消えてから次に目を開けたとき、そこは文字通りの異世界だった。
読んで下さってありがとうございます!
もし続きが気になりましたら、ブックマーク、評価をお願いします!
ここで第二部も終幕です!
次回から第三部! 引き続きよろしくお願いします!
ぜひ皆さんで作品を盛り上げて下さいね!
スピンオフ短編もあります!
「悲恋の掌握者、ディシアは自分の足で歩いていく」
第二部から登場するディシア・オルテンシアの幼少期のお話になります。




