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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【19万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第二部 高難易度ダンジョン編

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101話 一つの決着

 意識を集中する。

 目指すはこの魔物の核になっているミリィが閉じ込められている赤い石。

 深く……深く集中していき、周囲にいる魔物の魔力を全て遮断。


 自身より上部にある魔力の大きい塊を想像しながら探していく。


「そこか」


 最短でミリィの元へと向かうために白く発光する白銀の剣を握り直し、天井を次々と灼き斬って破壊しながら進む。


 途中、モンストルム・ファブリカの防衛本能でいくつも手のような物が壁や、破壊された天井からも無数に伸び、この先に進むなと言わんばかりの抵抗を見せた。


 裏を返せばこの先に弱点となる場所が存在すると言っているに等しい反応は、レルゲンを後押ししていた。


 ミリィの魔力を感知するまで接近し、赤く光る傷のついた魔石が格納されている部屋に到着する。


 するとそこには、テクトと思わしき白衣を着た人物が、ミリィが入った赤い石に手をつきながらレルゲンを待っていた。


「やぁ、よく来た。こうして会うのは初めてかな。まぁもっとも、声でのやり取りは何度もしているが、改めて自己紹介をさせてもらおう。私はテクト、テクト・シュトラーゼン。科学者だ。よろしく、レルゲン・シュトーゲン」


「自己紹介してもらったところで悪いが、さっさとその石を壊してミリィを助けさせてもらう」


「せっかちだね。しかし助けるのは結構だが、お勧めはできないかな」


「どういう意味だ」


 レルゲンが問うと、テクトは堂々とレルゲンに背を向ける。

 無数の映像が流れる画面の前にある椅子へ豪快に腰掛けると、レルゲンの方へ椅子を回転させて語り始める。


「君は知っているのかい? そこの娘の素性を」


「どういう意味だ」


「本当に君が命をかけてまで護る必要があるのか、私には甚だ疑問だということさ。彼女の名はミリィ。ミリィ・ブルームスタットと言えば大体察しがつくかね?」


「なんだと……?」


 ――頭が、理解が追いつかない。こいつは今、なんと言った? ブルームスタット? あのナイトの血縁者だとでもいうのか?


 レルゲンの考えを見透かしたようにテクトが笑いながら首を振る。


「大方優しい君は、あの自分の師匠であるナイト・ブルームスタットの血縁者だと思っただろう。しかしそれは違う――大きな間違いだ。かの天才はこんな研究をしていたことを知っているかね? 人工生命体の研究さ」


「……」


「君は見ているはずだ。奴の作品を」


 ――自動人形のアイとユゥのことを言っているのか? だが……


「だが奴は人形を作っていたはずだ、かい?」


「……!!」


 思考を先読みされたレルゲンは、半歩ほど後ずさる。


「彼が作っていたのは本当の、ただの人形だったか? いや違うぞ。君は見ているはずだ。半身が欠けた瞬間のもう一人の怒りを、感情を」


「どうしてお前がそこまで知っている」


「簡単なことだ。見ていたからさ、この目で」


 テクトが左目に手を伸ばし、指を差して強調するように見せてくる。


「私には、『千里眼の加護』があるのさ。この忌まわしい加護は、『時間を問わず』私に世界を揺るがしかねない出来事が発生した時に限り、それを映像として見せてくる代物でね。君たちの戦闘は全て見ていたというわけだよ」


「そうか、ではなぜミリィがナイトの作品の一つだと確信している?」


「そんなことは簡単さ。奴はヨルダルク出身の魔術師兼、研究者だったのだよ。研究資料には生きた人間を使った実験の記録が、いくつも残っている。その中に」


「ミリィがいたのか」


「そうだ。なぜ君たちにミリィというある種の出来損ないが接触したのかは私にも分からないが、とにかく君たちは出会った。出会ってしまった。そこで絆を育み、最終的には自己保存プログラムさえ書き換え、君の二人目の妻を護った」


 ここでレルゲンが小さく笑う。


「なぜ君が笑う?」


「いや、なぜも何も、どうしてそんな事実を知ったからと言って、俺が、俺たちがミリィをなぜ助けないと思ったんだ?」


「……!」


「始めは胡散臭い奴が、足手纏いが来たと思ったさ。だがな」


 黒龍の剣と白銀の剣を合わせて、再び一振りの剣となり、レルゲンの全魔力が込められていく。


「俺たちはちゃんと仲間になった。助ける理由なんざ、それだけで十分だ」


「よせ! 止めるんだ!」


 テクトの制止を振り切り、レルゲンは赤い石へ白銀の剣を叩き込む。ミリィは石から解放され、レルゲンが魔力糸で編んだ服を着せた。


「レルゲン……さん?」


「ああ」


「ありがとう。ごめんね……」


 ――ビィイ! ビィイイ!!

 突如、計器の上についている灯りが点滅し、不安を煽るような音が鳴り響いた。


 テクトの表情は焦りで埋め尽くされており、完全にレルゲンたちは意識の範囲外だった。


「私の傑作を、技術の結晶を失うわけにはいかない!!」


 大量のボタンが配置されている板を必死に叩くテクトにレルゲンは声をかける。


「もうここに用はない。俺たちは引き上げさせてもらうが、お前はここに残るのか」


「残るも何も自壊シーケンスが発動し、もうじきこの魔物は……ダンジョンは……! 塵となって消える。君たちの国ごと――ね」


「……!」


 ここでミリィが諦めたようにレルゲンの頬に軽くキスをして


「私が元に戻れば、みんな助かるの?」


「それはそうさ、君が核だからね」


「なら私は戻るよ。みんなの居場所を奪うくらいなら、私は元に戻る」


 レルゲンはミリィを抱きしめたまま決して離さない。痛いくらい強く抱きしめられた手を優しくミリィが撫でる。


「ありがとう、レルゲンさん。冒険、とっても楽しかったよ」


「駄目だ。君は俺が絶対に助ける」


 ――考えろ、何か手が絶対にあるはずだ。

 何かが頭の片隅に引っかかる。

 それはカノンとディシアが共同で開発した『魔法陣』だ。

 カノンの言葉が頭を駆け巡る。


「この魔法陣はね、複雑だが転移距離に制限がない、と思う! ディシアの知識が無ければ知らなかった世界を見た! ムフー!」


 カノンに見せられた魔法陣は『一度見た』

 ――瞬間、レルゲンの思考速度が跳ねた。


 無意識的に魔力糸をモンストルム・ファブリカの上空に向かわせ、超高速で陣を形成してゆく。


 そしてそれよりも遥か、遥か上空の大気圏にまで伸ばされた魔力糸もまた同様の魔法陣を形成し、準備は整った。

 ミリィを見て、優しく語りかける。


「君は、俺たちが絶対に助けるよ」


 ミリィがどうやって? といった表情を浮かべたが、レルゲンはテクトに向かって告げる。


「こいつは後どれくらいで自爆する?」


「もう猶予はない」


「お前はここに残るのか?」


「ああ……残るとも。何とかなる可能性が僅かでもあるのならね」


「そうか、一応言っておくが、王国は助かる。お前がそのオモチャを捨てるなら命は助かるぞ」


「はっ! それが仮に真実だとしても、私はここに残る道を選ぶよ」


「なら俺から言うことはもう何もない。さらばだ、崇高な科学者よ」


 レルゲンはミリィを抱いて自壊寸前のモンストルム・ファブリカを後にする。もう時間がない。急いで陣を起動する必要がある。


 上空で待機させていた転移魔法陣を下ろしてゆくとモンストルム・ファブリカは綺麗に吸い込まれるようにしてその場から消える。


「ここで、私は死ぬわけにはいかない……! もう自壊は止められない……! ははっ、まさかこんな幕切れになるとはね。覚えておこう、レルゲン・シュトーゲン」


 魔力感知からも消え失せてから少しの時を経て、上空に巨大な太陽にも似た二つ目の光源が出現する。

 巨大な衝撃波と荒れ狂う暴風が、地上へ叩きつけられるように吹き荒れた。


「ミリィ、おかえり」


「ただいま……レルゲンさん!」

読んで下さってありがとうございます!

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よろしくお願いしますー!

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