第72章 ―― 高まるプレッシャー (下)
同時に突っ込む。
二つの拳が激突する。
ドン
ヴァン・ティエンが足を上げ、腹部を蹴る。
だが、リエン・トゥイはもう一方の足で受け止める。
二人は同時に離れる。
その瞬間――
リエン・トゥイがヴァン・ティエンの背後へ転移する。
ヴァン・ティエンは目だけを動かす。
攻撃を防ごうとする。
しかし――
突然、男が消えた。
ヴァン・ティエンは目を見開く。
そして――
リエン・トゥイは、ヴァン・ティエンの正面へ転移する。
ヴァン・ティエンは慌てる。
「何だと!!!」
最後まで言い終える前に――
ブッ
蹴りが真正面から叩き込まれる。
ヴァン・ティエンは後ろへ吹き飛ぶ。
身体がわずかに震える。
手で腹を押さえる。
彼は男を見る。
もう片方の手を握り、突っ込む。
拳を放つ。
だが――
リエン・トゥイはすでに背後へ転移している。
「遅すぎる……」
上から拳が振り下ろされる。
ブッ
「アアアッ!」
ヴァン・ティエンの身体が下へ飛ばされる。
地面へ落ちるより先に――
リエン・トゥイが先回りして転移していた。
そして――
ヴァン・ティエンの背中へ蹴りを叩き込む。
バキッ
ヴァン・ティエンは、背中の骨が折れそうなほどの痛みを感じる。
身体が真っ直ぐ空へ飛んでいく。
リエン・トゥイもさらに上空へ転移する。
足を高く上げる。
力を集中させる。
ヴァン・ティエンが飛んでくる。
その瞬間――
男は、ヴァン・ティエンの腹部へ真っ直ぐ蹴りを叩き込んだ。
身体が、そのまま地面へ飛んでいく。
ドォン!!!
煙と砂埃が舞い上がる。
その煙の中――
ヴァン・ティエンが倒れている。
「ティエンお兄ちゃん……」
後ろにいたヒュエン・ゴックが、心配そうに呟く。
戦艦の上では、統帥が大声で笑う。
「そうだ、それでいい!」
再び地上。
土砂の中。
ヴァン・ティエンは苦しそうに身体を起こす。
両脚が震えている。
背中が激しく痛む。
まるで千本の針を背中へ突き刺されているようだった。
片目を閉じる。
もう片方の目だけを、なんとか開く。
右手で左腕を強く握る。
「……奴……さらに速くなってる……?」
呼吸が荒い。
だが――
反応する暇もなく。
次の攻撃が襲いかかる。
瞳が縮む。
今度は――
さらに速い。
ブッ
ヴァン・ティエンは、そのまま空へ殴り飛ばされる。
リエン・トゥイが彼の前へ転移する。
そして――
腹部へ蹴りを叩き込む。
ヴァン・ティエンの身体は、周囲の木々を次々と突き抜けていく。
ドォン!!!
そして――
彼の身体が止まった。
そこは――
かつてヴァン・ティエンとヒュエン・ゴックが初めて出会った、あの木のそばだった。
今の彼の身体は、先ほどよりもさらに酷い。
身体が重い。
口から流れる血も、さらに増えている。
「ゴホッ……ゴホッ……」
ヴァン・ティエンは必死に顔を上げる。
歯を食いしばる。
遠くには――
リエン・トゥイがいる。
彼は、ゆっくりと近づいてくる。
その頃――
遠くにある、壊れた黒い船から。
絶えず機械音声が響いていた。
「戦闘データを復元中……」
「記憶接続……13%」
こちらでは――
ヴァン・ティエンが歯を食いしばる。
呼吸がさらに重くなる。
ペンダントの青い光が、明滅している。
その後ろ。
ヒュエン・ゴックは、そこに立ったまま。
その瞳は変わらない。
「……お兄ちゃんが……押されてる。」
遠くにいるにもかかわらず――
ヴァン・ティエンには、その声が聞こえた。
だが、答えない。
リエン・トゥイが、ゆっくりと彼のところへ歩いてくる。
「お前……思っていたより弱いな。」
「ならば、早く終わらせるとしよう。」
そう言いながら――
彼は腰へ手を伸ばす。
そして――
赤い炎を纏った黒い刀を取り出す。
鞘から抜いた瞬間――
刀が光を放つ。
それは――
冷たい光だった。
リエン・トゥイはヴァン・ティエンの目の前まで来る。
ヴァン・ティエンは顔を上げ、彼を見る。
その瞳は、未だ揺らがない。
真っ直ぐに、彼の目を射抜いている。
リエン・トゥイは、ただ軽蔑するような目で彼を見る。
そして――
刀を高く掲げる。
「さらばだ。」
刀が振り下ろされる。
遠くにいたヒュエン・ゴックが手を上げる。
足を半歩前へ出す。
その顔は、驚愕に染まっている。
「お兄ちゃん!」
上空の統帥は、勝ち誇ったように微笑む。
「終わりだ。」
刀がヴァン・ティエンの首まで、あと数ミリ。
彼は――
刃が皮膚に触れる感触を、はっきりと感じた。
その瞬間――
ヴァン・ティエンのペンダントが光り始める。
今までよりも――
はるかに強い光。
光と気が一気に放出される。
リエン・トゥイの身体が、遠くへ吹き飛ばされる。
彼は地面に足をつけ、そのまま滑る。
そして――
停止する。
その視線が、ヴァン・ティエンへ向く。
一方――
ペンダントから溢れ出したエネルギーが、徐々にヴァン・ティエンの全身へ広がっていく。
青い光が、腕を流れる。
ヴァン・ティエンは――
この力を感じ取っていた。
彼は、静かに呟く。
「……7%……」
その瞬間――
周囲へ、強大な力が放たれる。
リエン・トゥイはヴァン・ティエンを見る。
「ん……」
戦艦の上。
統帥の顔には、さらに強い興味が浮かぶ。
「ほう……まだ力を出していなかったのか。」
「面白い。」
ヒュエン・ゴックのいる場所。
ヴァン・ティエンの身体から広がる力を見ても――
彼女は驚かなかった。
ただ、静かに俯く。
そして――
小さく口元を上げる。
「お兄ちゃんは……いつも人を心配させるんだから。」
その頃――
草原の中央にある、壊れた黒い船。
機械音声が、再び響く。
だが――
今回は、これまでとは違っていた。
「記憶接続……13%。」
「船長の意識……徐々に帰還中。」
「戦闘反射……回復中。」
「現在の測定可能出力……7%。」
リエン・トゥイは、ただ軽蔑するようにヴァン・ティエンを見る。
「ん……ただ光っているだけで、何ができる?」
そう言うと――
彼は突進する。
黒い刀をヴァン・ティエンへ向ける。
シュッ
ヴァン・ティエンは顔を上げる。
刀が彼へ迫った、その瞬間――
懐かしい感覚が走る。
一つの視点。
一つの位置。
一つの反射。
「……左にズレてる……」
彼は呟く。
そして――
身体を傾ける。
刀が肩を掠める。
その瞬間――
ヴァン・ティエンは身体を回す。
拳を強く握る。
青い光が集まる。
そして――
一つの言葉を放つ。
「……影気!」
ブーム!!!
拳が放たれる。
リエン・トゥイの身体が地面へ吹き飛ばされる。
何が起きたのか理解する暇もない。
ヴァン・ティエンは一歩下がる。
足を上げる。
青い気が足の周囲を包む。
そして――
上から下へ、足を振り下ろす。
圧縮された空気が一点へ集中する。
リエン・トゥイの身体が、その蹴りによって地面へ押し潰される。
「アアアアッ!」
ヴァン・ティエンの手が、彼の首を掴む。
締めつける力が、徐々に強くなる。
青い光が、さらに少し強く爆発する。
リエン・トゥイは、ほとんど呼吸できない。
首の血管が浮き上がる。
遠くでは――
壊れた船が再び震える。
ドォォォン
エネルギーの波が広がる。
機械音声が響く。
「船長の回復レベル……徐々に回復中。」
「記憶接続……14%。」
「戦場制御権限……復帰中。」
「戦闘反射……回復中。」
ヴァン・ティエンが、突然動きを止める。
「……14%……」
彼の頭の中に――
一本の黒い鎖が現れる。
そして――
カンッ
黒い鎖が、断ち切られる。
砕け、無数の破片となって散っていく。
そして――
一つの映像が閃く。
船の残骸と兵士たちの死体が、大地を埋め尽くしている戦場。
そして、一つの声。
「船長、右側が突破されました!」
ヴァン・ティエンは顔をしかめる。
手を頭へ当てる。
「……あ……!」
記憶――
まだ鮮明になっていない。
そのまま――
砕けた。
ヴァン・ティエンが気を取られた、その瞬間。
リエン・トゥイがその隙を逃さない。
真正面から一撃を叩き込む。
ヴァン・ティエンの身体が吹き飛ぶ。
ドォン!!!
地面へ激しく叩きつけられる。
土と石が爆発するように飛び散る。
静寂。
「……お兄ちゃん……」
少女が見下ろす。
その瞳が、わずかに沈む。
煙と砂埃が、徐々に晴れていく。
ヴァン・ティエンは――
まだ立ち上がっていた。
ゆっくり。
その瞳の光は、決して消えていない。
身体を流れる力も、まだ止まっていない。
その前方。
リエン・トゥイは、すでに戦闘態勢を取り戻していた。
彼はヴァン・ティエンを真っ直ぐ見つめる。
「面白い。」
「まだ隠し玉を残しているというのなら……」
「ならば……私も、もう手加減はしない。」




