第72章 ―― 高まるプレッシャー (上)
二人の兵士が、左右から距離を詰める。
隙を与えない。
逃げ道も与えない。
その一歩一歩は完全に同期している。
まるで――
完璧な戦争兵器のように、すべてに目的があった。
風が吹き抜ける。
だが、もう自然な風には感じられない。
ただ――
空気そのものが凝縮したかのような、重い圧力だけが残っている。
ヴァン・ティエンは中央に立つ。
両手を低く下げる。
呼吸は徐々に安定していく。
身体の周囲には、まだ青い光が存在している。
だが……
まだ安定していない。
「……13%……」
彼は呟く。
「……まだ足りない……」
ドォン!!!
警告すらない――
一人が正面から突っ込んでくる。
以前より速い。
以前より強い。
拳が振り下ろされる。
ドガン
だが――
受け止めた。
ヴァン・ティエンは腕を上げ、真正面から防ぐ。
青い光が腕の周囲で爆発する。
しかし、すぐに――
ブッ
右側から蹴りが飛んでくる。
その兵士は蹴り飛ばされ、遠くへ吹き飛び、地面を長く滑っていく。
残った一人がそれを見ると、すぐに腕を上げる。
その手首から――
エネルギーの刃が飛び出した。
兵士はその刃を握り、上空からヴァン・ティエンへ突っ込む。
上からの斬撃。
「……!」
ヴァン・ティエンの身体が揺れる。
横へ避ける。
そして――
ブッ
腹部へ蹴りを叩き込む。
彼の視線は、戦艦の上に立つ統帥へ向けられる。
そして蹴りを放つ。
兵士の身体が、そのまま統帥のいる場所へ飛んでいく。
だが――
兵士が触れるより先に。
その身体が空中で強制的に停止した。
見えないエネルギーが身体を締めつける。
そして――
その身体が層ごと崩れていく。
まるで液体へ分解されるかのように――
完全に消滅していく。
統帥はその場に立ち、拍手をしながら愉快そうに笑う。
「よくやった。やはり、お前は私を失望させないな。」
ヴァン・ティエンの視線は、依然として統帥の顔へ突き刺さっている。
拳を強く握る。
統帥は彼を見る。
手を止める。
笑みも消える。
「どうやら……私も動かなければならないようだ。」
ヴァン・ティエンは構える。
「お前が出てくるのか?」
それを聞くと、統帥は両手を目の前へ出す。
「いやいや。」
「まだ私自身は動かない。」
「もう少し観察する必要があるからな。」
その瞳に危険な光が宿る。
そして――
不気味な笑みを浮かべる。
「だから……」
「次にお前と戦うのは……」
「こいつだ。」
そう言った瞬間――
別の人影が、闇の中から姿を現した。
大柄な男。
全身を黒い鎧が覆っている。
だが――
これまでの生物とは違う。
その周囲の空気が、まるで握り潰されているかのように歪んでいる。
統帥はヴァン・ティエンを見下ろす。
その顔には興奮した笑み。
そして、今現れた黒衣の男を指差す。
「こいつが……次にお前と遊ぶ相手だ。」
「お前がどれほどの力を見せるのか……」
「見せてもらおう。」
その後、黒衣の男を見る。
「リエン・トゥイ……下へ行って、少しこいつと遊んでこい。」
男は頷く。
「了解。」
そして――
飛び降りる。
そのままヴァン・ティエンのいる場所へ一直線に落下してくる。
ヒュッ
彼が通過した空間が、歪む。
接近した瞬間――
男は足を上げる。
そしてヴァン・ティエンへ蹴りを放つ。
ブッ
ヴァン・ティエンは防ぐことができた。
だが――
あまりにも強い。
その衝撃によって、ヴァン・ティエンは吹き飛ばされ、そのまま地面へ叩き落とされる。
ドォン
後ろにいたヒュエン・ゴックは、不安そうな顔をする。
煙と砂埃が晴れていく。
その中から――
ヴァン・ティエンがゆっくりと身体を起こす。
「ゴホッ……」
口から血が吐き出される。
身体も、先ほどの蹴りによってわずかに震えている。
今の蹴りは――
これまでの兵士たちとは違った。
腕の骨が痺れる。
ヴァン・ティエンは顔を上げ、男を見る。
リエン・トゥイは、すでに足を引いていた。
「これが、私からの最初の挨拶だ。」
「よろしく頼む。」
だが、その瞬間――
ヴァン・ティエンの姿が消える。
男は驚く。
「奴はどこへ……?」
そして――
シュッ
ヴァン・ティエンが男の背後に現れる。
男は反応できない。
ブッ
腹部へ蹴りが突き刺さる。
男はそのまま地面へ蹴り飛ばされ、煙と砂埃が舞い上がる。
ヴァン・ティエンは足を引く。
「なら……これも俺からの挨拶だ。」
リエン・トゥイは煙の中から飛び出す。
その目がヴァン・ティエンへ向けられる。
「面白い。」
上空では、統帥がそれを見下ろしている。
その顔には、さらに興味深そうな表情。
「これは……面白いものが見られそうだ。」
ヒュエン・ゴックはヴァン・ティエンを見る。
その表情には不安が浮かんでいる。
手を、さらに強く握りしめる。
「……お兄ちゃん……」
彼女の瞳が、わずかに変化する。
何かを計算しているようだった。
ヴァン・ティエンとリエン・トゥイ。
二人のいる場所。
リエン・トゥイが構える。
「ならば、こちらから行く。」
次の瞬間――
消える。
シュッ
ヴァン・ティエンの目の前に現れる。
彼が驚いた瞬間――
ブッ
腹部へ拳が突き刺さる。
「ゴホッ……」
続いて――
顔面へ蹴り。
そして男は高く足を上げる。
上から振り下ろす。
空気そのものが砕けたかのような衝撃。
ヴァン・ティエンの身体が、そのまま地面へ叩き落とされる。
ドォン!!!
ヴァン・ティエンは地面に倒れ、動かない。
リエン・トゥイは彼の前へ転移する。
「これだけか?」
だが――
男が気づかないうちに。
ヴァン・ティエンの姿が消える。
リエン・トゥイが一瞬、動きを止める。
何が起きたのか理解できない。
その瞬間――
上から蹴りが落ちてくる。
ブッ
頭へ直撃。
男の身体が地面へ叩き込まれる。
まだ何もする暇もない。
ヴァン・ティエンは男の髪を掴み、引き上げる。
男の顔が痛みに歪む。
そして――
ヴァン・ティエンは男を放り上げる。
そのまま腹部へ拳を叩き込む。
衝突した瞬間――
周囲の空気が、その拳に押し潰されるように凹む。
「ゴホッ……」
リエン・トゥイの身体が遠くへ吹き飛ぶ。
地面を長く滑っていく。
ヴァン・ティエンはその場に立つ。
彼のペンダントが――
青い光を放っていた。
リエン・トゥイは立ち上がる。
口元から、数滴の血が流れている。
彼は視線を落とし、軽く血を拭う。
そして――
ヴァン・ティエンを見る。
その口元には、楽しそうな笑み。
戦いは……
新たな段階へ入ろうとしていた。
ヴァン・ティエンとリエン・トゥイ。
二人は向かい合う。
そして――




