第71章 ―― ビー玉勝負と、姿を現す危険 (上)
地上へ戻る。
どうやら、ここでは小さな戦いが繰り広げられているようだ。
ヒュエン・ゴックと一人の少年が向かい合って座っている。
少年は、彼女を真っ直ぐ見つめる。
「僕が絶対に姉ちゃんに勝ってみせる!」
ヒュエン・ゴックは少年を真っ直ぐ見つめ、得意げに笑う。
「負けるのは、あなたのほうよ」
「じゃあ、やってみよう」
ヴァン・ティエンは外から見ているだけで、この二人にはもうお手上げだった。
子供たちは大声で応援している。
「頑張れ、ゴック姉ちゃん!」
「頑張れ、クー・ティー!」
ヒュエン・ゴックとティーは、どちらも非常に集中している。
クー・ティーは彼女のほうを見る。
「僕から行くよ」
少年は穴に向かってビー玉を狙い、撃つ。
だが、ビー玉は穴へ転がり込んだかと思うと、そのまま外へ滑り出てしまった。
「ファッ……」
ヒュエン・ゴックは、思わず笑ってしまう。
「ハハハ」
「それだけ?」
「今度は私ね」
彼女は穴を狙い、ビー玉を撃つ。
だが――
彼女のビー玉も穴へ転がり込んだかと思うと、そのまま外へ滑り出てしまった。
「ナニィ……」
「ホホホ、ハハハ!」
クー・ティーは口を閉じられないほど笑う。
「おいおい、姉ちゃんだって入らなかったじゃん!」
「どいてよ。僕が本当のビー玉撃ちってものを教えてあげる」
クー・ティーは座り込み、ビー玉を軽く撃つ。
ビー玉はゆっくりと進み――
そのまま穴へ入った。
ヒュエン・ゴックは固まった。
少年は彼女を見る。
その口元には、悪戯っぽく得意げな笑み。
「へへ」
笑いながら、手のひらの上でビー玉を弾く。
「僕、言ったでしょ」
「姉ちゃんはここまでだよ」
そう言うと、少年は座り込み、ヒュエン・ゴックのビー玉を狙う。
口元には笑み。
「ヘヘ」
ビー玉が撃ち出される。
徐々に転がりながら、ヒュエン・ゴックのビー玉へ近づいていく。
ヒュエン・ゴックは目を閉じた。
見ていられない。
今回こそ終わったと思った。
だが――
ビー玉は、風のように彼女のビー玉をすり抜けた。
クー・ティーの得意げな表情が消える。
ヒュエン・ゴックはゆっくりと目を開ける。
自分のビー玉がまだ残っているのを確認すると、ホッと息を吐いた。
そして――
腰に手を当て、少年を見る。
「え? さっき誰か、本当のビー玉撃ちってものを教えるって言ってなかった?」
クー・ティーは悔しそうな顔をする。
「姉ちゃん、覚えてろよ。次こそ僕が倒すからな!」
ヒュエン・ゴックは、それを聞いて軽く笑う。
「あなたに、そんなチャンスをあげると思う?」
そう言い終わると同時に――
ヒュエン・ゴックはビー玉を撃った。
そしてビー玉は――
穴へ入った。
クー・ティーは驚愕する。
「なんだって!」
ヒュエン・ゴックは少年を見る。
その顔は、完全に得意げだった。
「フッ」
「今度は、お姉ちゃんの凄さを見せてあげる」
ヒュエン・ゴックはクー・ティーのビー玉を狙う。
少年はゴクリと唾を飲み込む。
「ゴクッ」
表情は緊張している。
ヒュエン・ゴックもビー玉を撃つ。
ビー玉はゆっくりと、少年のビー玉へ近づいていく。
時間が、まるで遅くなったかのようだった。
クー・ティーの顔には汗が浮かぶ。
非常に緊張している。
だが――
彼女のビー玉は、クー・ティーのビー玉をすり抜けていった。
ヒュエン・ゴックの得意げな表情が、一瞬で消える。
一方、クー・ティーは自分がまだ無事だと分かると、飛び上がって大笑いした。
「ハハハ!」
そして彼女を見る。
「姉ちゃん、どんなもんかと思ったら、その程度だったんだな!」
「今度は僕の番だ!」
「へへ」
ヒュエン・ゴックの顔から笑みは消え、完全に緊張していた。
クー・ティーはヒュエン・ゴックのビー玉を狙う。
「チェックメイトだ!」
ビー玉が撃ち出される。
ヒュエン・ゴックのビー玉へ向かって飛んでいく。
ヒュエン・ゴックは、その動きを追いながら、ほとんど息をしていなかった。
ビー玉が迫る。
どんどん近づいていく。
クー・ティーは得意げに笑う。
ヒュエン・ゴックは息を止める。
……そして。
スッ
ビー玉は、ほんの僅かな距離で彼女のビー玉をすり抜けた。
空間が、一瞬止まった。
クー・ティーの顔は、まるで棒のように固まっている。
一方、ヒュエン・ゴックの口元には、自分が間一髪で助かったことへの笑みが浮かぶ。
彼女は飛び上がる。
「イェーイ!」
クー・ティーは悔しさのあまり、地面を叩く。
「そんな……ありえない!」
ヒュエン・ゴックは少年を見て、得意げに笑う。
「どうやら、この勝負……私の勝ちね」
彼女はビー玉を撃つ。
そして今度は――
カチッ
彼女のビー玉が、クー・ティーのビー玉に命中した。
彼女は嬉しさのあまり飛び上がる。
「勝ったー!」
その日の夕方。
負けたクー・ティーだったが、それでもヒュエン・ゴックを褒めた。
「今回は僕の負けだ。完全に負けを認めるよ」
「でも次は……絶対に姉ちゃんを倒すからな!」
ヒュエン・ゴックはそれを聞いて笑う。
「分かった。じゃあ次は、二人でもう一度勝負しようね」
「うん!」
二人は指切りをした。
次にもう一度勝負することを約束する。
二人とも、満面の笑みを浮かべていた。
子供たちが去った後。
そこに残ったのは、ヴァン・ティエンとヒュエン・ゴックだけだった。
ヒュエン・ゴックは手の中のビー玉を握りしめ、それを胸に抱く。
「……今日は……本当に楽しかった。」
ヴァン・ティエンは軽く笑う。
「うん。」
静寂。
風が吹き抜ける。
「……もし、これから……」
彼女が小さく呟く。
「……私が、ここにいなくなったら……」
「……お兄ちゃん、悲しい?」
ヴァン・ティエンが、動きを止める。
「……どうして、そんなことを聞くんだ?」
ヒュエン・ゴックは首を横に振る。
「……何でもない。」
彼女はビー玉を強く抱きしめたまま、空を見上げる。
心の中で、静かに考える。
「……もし、いつか……私が消えたら……」
「……その時も、私は今日みたいに……」
「……誰かに覚えていてもらえるのかな……?」
「それとも……すべては……」
「最初から存在しなかったみたいに、忘れられてしまうのかな……?」
風が吹き抜ける。
二人は、夕暮れの光の中で、沈みゆく太陽を眺めていた。
空の景色が、徐々に引き上げられ、遠ざかっていく。
大気圏を越え――
暗い宇宙が目の前に広がる。
そこでは――
黒い戦艦が、すでに地球の大気圏へ到達していた。
艦内。
兵士が報告する。
「閣下、戦艦がすでに惑星の大気圏へ到達しました。」
統帥は下を見下ろす。
その口元には鋭く冷たい笑み。
赤い瞳が光る。
「それなら……」
「着陸の準備をしろ。」
「了解!」
戦艦は地球の大気圏へ侵入し、徐々に雲を突き抜けていく。
その日の夕方。
ヴァン・ティエンとヒュエン・ゴックは、あの古い木のところまでやって来た。
ヒュエン・ゴックは彼より先に走り、そして立ち止まる。
「今日は……本当に楽しかった。」
「初めて……こんなに楽しく遊べた。」
ヴァン・ティエンは彼女の後ろに立ち、軽く微笑む。
「君がそんなに楽しそうだと……俺も嬉しいよ。」
少女はゆっくり振り返る。
そして、満面の笑みを浮かべる。
真っ白な歯が見える。
「でも、もうすぐ暗くなるね。そろそろ私たち二人も、ここでお別れしなきゃ。」
「お兄ちゃんも早く帰って。お父さんとお母さんが心配するよ。」
ヴァン・ティエンはその場に立ったまま、ヒュエン・ゴックをじっと見つめている。
彼女はそれに気づくと、恥ずかしそうに少し顔を下げる。
「どうしてそんなに私を見るの……?」
「私の顔に何かついてる?」
ヴァン・ティエンは、彼女が恥ずかしがっているのを見て、困ったように笑う。
「いや……何でもない。ただ、なんていうか……」
「君を見ていると……どうしてか分からないけど、心がすごく落ち着くんだ。」
ヒュエン・ゴックは彼のところまで歩いていき、身体を少し傾ける。
「ん……」
「お兄ちゃん、どういう意味?」
ヴァン・ティエンは慌てて手を振り、説明する。
「いや……そういう意味じゃなくて……」
「君を見ていると……すごく懐かしい感じがするんだ。俺自身も、この感覚が嫌いじゃない。」
「まるで……今までに何度も起きたことがあるみたいなんだ。」
ヒュエン・ゴックは聞くと、静かに俯いた。
ヴァン・ティエンが気づかないうちに――
彼女の口元が、ほんの少しだけ上がる。
「そうだよ……」
「本当に、何度もあったことなんだよ……」
「何か言った?」
「何でもない。」
彼女は身体を起こし、そして振り返る。
夕方の太陽の光が彼女の瞳に差し込む。
両手を背中に回す。
そよ風が吹き抜け――
ヒュエン・ゴックの髪が風に揺れる。
ヴァン・ティエンは彼女の背中を見つめる。
その瞬間――
彼は、何かを思い出した。
「あ……そうだ。昨日、お母さんが俺を呼んだ時……」
「振り返ったら、どうして君はあんなに早く消えたんだ?」
「見渡しても、君がどこにもいなかった。」
「まるで……君が完全に消えてしまったみたいだった。」




